2018-06-03

烏魯木斉旅行一日目

2018年5月18日、ふたたび中国へやってきた。
先日ゴールデンウィークに青島旅行へ行ってきたばかりなのにどういうことか。
帰国してまだ二週間も経っていないというのに。
実はいろいろと事情があり今回のフライトをとっていたが、いろいろと事情があり、このようになった。
ありがたいことで毎回旅行記をご覧になってくださっている方々には、なんのことかとご心配をおかけしてしまうかもしれない。
しかし、今はこのまま旅行記を進めさせていただこうかなと思う。

今回は5月18日から31日まで、二週間の渡航である。
中国はビザ不要の範囲が15日のため、二週間のフライトをとった。
すでに退職を決め有休消化に入っておりこのような日程が組めるが、仕事をしていた大学卒業以降こんな日程で旅行に行くことはできなかったから、実に初めての経験だ。

今回は日数が長いことと、帰国してからのスケジュールの都合で、旅をしながら旅先で毎日、旅行記を書き留めていこうと考えている。
今までは帰国してから一気に書き上げていたから、こんなのも初めて。
さて、どんなことになるだろう。
そんなわけだから、日記程度の簡単な旅行記になるかと、予測している。
そしてまとまりのない内容になるかもしれないが、それもまぁいいかなとも思う。

さて肝心な行先である。
現在私は北京に到着したばかりで、明日早朝の便で新疆ウイグル自治区・烏魯木斉(ウルムチ)へ向かう。
一応、目的地はウルムチということになる。
二週間も時間がありながら、それ以外の場所には向かう予定はない。
厳密にいえば、実はいろいろと出かけたかったしその予定があったが、ラマダン開始とちょうど重なり、現実的に不可能になってしまった。
中国西域を占める新疆ウイグル自治区は、イスラム教の地だ。
それについては、明日の旅行記で触れようかなと思う。

先日の青島旅行でそうだったように、現在私は疲れている。
世の中には大変な苦労をしている人がたくさんいるにも関わらず、私ごときが疲れているなんて言えたものではないが、私なりに少し休みたい気分になっている。
会社もちょうど辞めたばかりだし。
そういうわけで、ウルムチの友人が癒しの二週間を用意してくれた。
友達に会い、そのあと自然地帯に出かけ、そこで過ごす。
何もしない。
景色を見て、食事をして、ゆっくりする。
今回はおそらく移動もしないだろう。
実をいえば、このような旅程になったのもつい昨日のことなのだ。
しかも今、上記以外のことは何もわかっていない。
どんな二週間になるかは、わからない。
こんなのも初めての経験だ。
そういうわけで、以前の旅行記と違った内容になるかと思われるが、もしご興味があればお付き合いいただければ嬉しい。


北京首都空港に到着したのは20時前だった。
友人が予約しておいてくれたホテルに電話をして迎えにきてもらい、部屋に到着したのはまだ21時とういう時間。

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静かな場所にあり、寂しさや不安よりも、なぜか気持ちがやすらいだ。

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ホテルといっても、ホテル名などいっさい掲げていないホテル風だった。
友人の予約と仲介がなかったら少し不安になってしまう。
しかし私を外国人として扱ってくれ、とても親切だった。
鍵を受け取り、明日5時にふたたび空港まで送ってもらうことになった。早い~!
真っ暗な廊下をいつも携帯しているLEDライトで照らし部屋へ。
悲しいことにトイレの上部からさがったシャワー、どんなにしても冷水しか出ない。
死ぬかと思ったが、もう訊きにいくのもしんどいなと、気合で冷水のまま身体を洗った。
今日は一日汗だくだった。

付近の商店で買ったビール。

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右は哈爾濱ビール。
左は、この前旅行に行った青島ビール?と思いきや。
トレードマークのあの桟橋、これを見てみると桟橋に見えて実はぜんぜん違う。
そしてよくよく見てみると、青島山水啤酒公司、となっている。
会社自体がパクリみたいなもの?
けれど青島ビールもどきは、そんなに珍しくはないのがすごいところだ。

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今回はタブレットを持ってきて旅行記を書いていく。
今はただ、楽しみばかり。
先ほどウルムチの友人、ロンさんから電話がきた。
「電話かえさないから心配してたぞ、明日お昼に空港で会おう」
いつもいつも、温かい歓迎に感謝してもしきれない。


〈記 5月18日 北京にて〉


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2018-06-03

烏魯木斉旅行二日目

2018年5月19日、今日はいよいよウルムチへ。
5時出発で、北京首都国際空港へ。
7時発の海南空港で、約4時間かけて新疆ウイグル自治区ウルムチへ飛ぶ。
中国国内線だが、東京から北京までよりも遠い距離だ。

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時間ちょうどかと思いきや、国内線は大混雑で時間ギリギリになってしまった。

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昨日は眠ったのが遅く、目がひりひりする。
飛行機の中では爆睡するも、疲れがとれない。

空港に下りて気づいたのは、今まで数度乗ったことがある北京ーウルムチ線だが、今回ウイグル色が一切ないことだった。
いつも、中国国内線のフライトでもこの路線は特別に感じていた。
西域の民族色。
乗客はウイグル族他西域の少数民族が多く、機内の案内には中国語とウイグル語が用いられる。
ところが今回、乗客の中にウイグル族はただのひとりもいない様子で、機内の案内も中国語のみだった。
やっぱり、いつもと違うのかな、と思う。

5月17日より、イスラム教徒のラマダンが始まった。
日が昇る間は飲食を一切せず、日が沈んでから食事をとる。
こうしたことを一カ月にわたり行うのだ。

今回、実はカザフ国境付近まで行って、有名なラベンダーが一面に咲くのを見に行こう、という話があがった。
しかし現地公安に確認したところ、現在外国人は入境不可とのこと。
そういって、あたる場所次から次へ、不可。
一昨年訪れたカザフ国境イリ地方だったが、友人の会社に視察に入ったアメリカ人団体が数日前に現地ではじき出されたばかりらしい。
聞くところによると、現在新疆ウイグル自治区のあらゆる場所が、外国人の侵入を禁止しているようだった。
どういうことなんだ…。

「ラマダンが始まったんでしょう?やっぱりいつもと違うの?」
そう訊いてみると、
「それがつまり、こういうことなんだ」
どうやら、ことごとく外国人の侵入を禁止しているのはラマダンにより警戒を強めているからみたいだった。
「警戒が厳重になっているから」
新疆ウイグル自治区は、中国でもっとも治安の強化に努めている地域だ。
それがさらに警戒を努めているって、どういうことだろう。
少し不安になりながらのスタートだった。

ウルムチ空港に降り立って、ウイグル族にまったく出会わなかったのは、ラマダンの影響があったのかなかったのかはわからない。
けれども、少なくとも今までとは全然違う感覚で空港を出て、タクシーで友人ロンさんと待ち合わせしたホテルまで向かった。

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空気はからりとしていて、日陰に入れば肌寒く、日向に出れば日差しが肌に刺さった。
すっかり大都会のウルムチの風景に、毎回馴染んだような、でも初めて出会うような感覚を持つ。

ロンさんと合流して、街中の小さなホテルにチェックインして、近くのバス停から彼の部屋に向かった。

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部屋で他の友人の合流を待ちながら、ロンさんお手製の杏子の発酵液を見せてもらう。

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20㎏の杏子を使ってそして20日かけて発酵させた液体なのだという。
「作り方どこで知ったの?」 と訊くと、
「自分で考えたんだ」
部屋には自分で考え出したもの、自分で作ったものであふれていて、そういうところすごいなと思う。
自分でサプリメントを作るための器具なんてのもある。
「買うと高いぞ、自分で作れば安いからな」

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発酵液を濾過して、少し味見させてもらう。
酸っぱくて体によさそうな味覚。原液で飲んだ後、薄めてまた味をみる。
「帰国するときに持たせてやるぞ」

そうこうしていると、ロンさんの友達が二人きた。
一人は大学の後輩、もう一人は仕事関係の友達なのだという。
偶然なことに、二人とも山東省出身だった。
一人は、私がついこの間旅行した青島の近く。
もう一人は煙台。
私は折しも旅行したばかりだったから、そんな話で盛り上がる。

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数時間にわたって部屋でくつろぎ、ロンさんの奥さんで私の友達であるチャンイーがウルムチ站に到着したと連絡があった。
これもまた偶然で、私がウルムチに行くことになったこの旅程、ちょうどみんながここにいるときだった。
あと二週間ずれていたら、みんなと会えなかったのだから、実は不思議なタイミングだったのだ。

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チャンイーをウルムチ站で出迎えて、あるお店にいった。
ここは、私が初めてウルムチを訪れたとき、彼らが最初にもてなしてくれたお店だった。
「覚えてるか?」
あの時はウサギの火鍋のお店だったが、今は新疆料理のお店に方向転換したらしい。
ウサギ鍋をごちそうになったのは四年前だったが、今でも記憶に鮮明だった。
あの時の出会いから私たちの友達関係はスタートし、縁は縁に繋がり新たな旅に繋がっていった。
お店のご主人が出てきて、「覚えてるか?」と訊いてきた。
「もちろん、覚えているよ!」

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内装はがらりと変わり、ウイグルの煌びやかなものになっていた。
「でも部屋は前と一緒だね、この席に座ったね」
懐かしい思い出がよみがえる。
「最初に出会った時、わからない言葉が多くて筆談が多かったが、成長したな」
ロンさんが言った。
「前よりは中国語上達してるけど、まだまだ努力が必要だな」

ロンさんにチャンイーにお店のご主人に、あとから合流した別のリュウさん、それから蒙古族のおじさん、このメンバーがそろった。
蒙古のおじさんに姓を訪ねてみたら、
「蒙古には姓というものがないんだ…」
と、結局名前を聞きそびれてしまった。最初から名前を訊けばよかったのだけど。あとから確認したらカンツァイさんというのだそう。
とにかくこのメンバーでごちそうがはじまった。
白酒を飲むのは、お店のご主人に蒙古族のおじさんにに私の三人。
「お酒いけるね」
そんな言葉に調子に乗りながら、乾杯を重ねた。
お酒で友達になれるのは、強みだなとつくづく思うが、べつに強いわけではないのないのだから気を付けないといけない。

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いただいた白酒は貴州のもの。度数を見てみると56度。
そしてそれを飲み終わり開けたのは、新疆の白酒。
17年ものを開けてくれた。
「白酒も年月をかければかけるほどおいしくなるんだね」
一昨年の5月、イリ地方の白酒工場を見学したのを思い出した。
「あそこには子供が生まれたのを記念して保管されているお酒があったよ」
「あれは女の子だった場合にやるんだよ、結婚するときなんかに開けるの」
「じゃあ、結婚できなかった場合はどうするの?」
いつまでも開かないまま。
「うーん、ずっとそのまま」

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出てくる料理はみなどれも美味しかった。
新疆の有名料理、大盘鶏も。

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こちらは回族の料理なのだそう。
中には牛肉の餡がはいっていて、とてもおいしかった。
新疆の羊肉牛肉はとてもおいしくて、ここに来たらぜひ口にしたいもの。
けれど忘れてはいけないのは、この地は野菜もとてもおいしい。ついつい食がすすんでしまう。

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こんなふうにして、7時過ぎに始まった宴会も、終わった時には深夜の1時を回っていた。
リュウさんにホテルまで送ってもらいながら、
「どうしてそんなに中国が好きなんだ?」
そう訊かれて、
「うーん、私もわからない」
そう答えながら、どうしてなんだろうと酔っ払った頭で考えた。

目の前に伸びる通りには、ずっと先まで公安の赤と青のランプが一面にひろがる。
赤と青が入り混じって、一面紫色に見えるほどだった。
マンションの一つひとつにも、入り口に公安の建物があり、出入りを厳重にしている。
「一つひとつに公安があるの?」
そう訊く私に、「新疆の“特色”だからね」そう笑ったみんな。

ホテルに戻って部屋のある階に向かおうとすると、フロントで止められた。
「パスポート確認させて、ビザは?」
新疆にくるとよくこのように確認されるが、中国は15日以内であればビザ不要である。
その旨を伝えるもなかなかOKがでない。
すでにコピーをとっているパスポートのコピーをまたとって、しばらくしてようやくOKが出た。
こんなところで、はるばるここまでやってきた実感が湧くのは、なんとも複雑なものだけど。


〈記 5月19日 ウルムチ市区にて〉


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2018-06-03

烏魯木斉旅行三日目

2018年5月20日、朝9時に携帯が鳴った。
寝不足が続いたうえに昨日は眠ったのが朝4時を過ぎていて、着信には気づいたけれど出ることができなかった。
するとまた着信が。
おかしいな…昨日ロンさんとは11時出発だという話だったのに。
新疆ウイグル自治区は西域にあるために、北京を基準とした標準時間よりも二時間、地域によってはそれよりももっと時間感覚が遅い。
だから11時出発でも遅いというわけではないのだ。
着信にでれないでいると、今度は部屋の固定電話が鳴った。
これにはさすがに出ると、フロントが
「フロントで待っていてくれますよ」と。
どうしよう、まだ起きてもいない。
ということで急いで電話をくれたリュウさんに電話をし、
「時間、勘違いしていた!したくするまで待っていて!」と伝えた。

今日はリュウさんの運転で、蒙古族の牧場地帯まで行く。
そこで私は数日、蒙古族のお宅に滞在させてもらうのだ。
日数は決まっていなかった。
「帰りたくなったら帰ってくればいい」
そうロンさんは話していてくれた。
本当はカザフ国境手前のイリ地方に行こうとしていたけれど、ラマダンの影響で警戒が強まっていて新疆ウイグル自治区のあらゆる地域が、外国人の立ち入りを禁止していた。
そして最後にあたってみたのがウルムチ郊外にある南山という地域だった。
近場にはなってしまったが、ここがダメだったらもう他はなかったようで、
「マーヨーズが来る直前最後にここが決まって安心したよ」
ロンさんはほっとしたように言った。
ありがたいことだった。

今日はロンさん、チャンイー、運転してくれるリュウさんは、一日付き合ってくれて私を彼らに紹介してくれる。
私を受け入れてくれる蒙古のお宅を紹介してくれたのが、昨日食事をしたロンさんの友達、蒙古族のカンツァイさんのようだ。

急いで支度をしてフロントに下りて、リュウさんと合流した。
外の天気はあまりよくない。
昨夜の雨が残りまだ地面は濡れていて、また気温も低かった。
こうしてリュウさんの運転でロンさんの部屋に行き、四人合流して出発することになった。

まず朝食に立ち寄った小さな食堂に売られていたのは、餡餅。
いくつかの種類があって選んだのは、青椒鶏蛋餡餅と胡辣湯。

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青椒鶏蛋餡餅は中にごろごろと青唐辛子と野菜が入っていて辛いけれどおいしい。
胡辣湯もまた具が盛りだくさんで、体によさそう。
おなかいっぱいになって出発した。

ウルムチの都会の風景を抜けてしばらく走ったところで、リュウさんがロンさんに話しかけた。
「***に行ってみるか?」
そこは近いようなので、ついでに立ち寄ることになった。

どうやらそれは、「亜州大陸地理中心」。
つまり、アジア大陸のちょうど真ん中にあたるところのよう。
ウルムチは、世界でもっとも海から遠い場所である。

途中で道がわからなくなり、荷車を運転する男の子を呼び止めて訊いた。
すると、現在は未開放のよう。
それでも入り口から見ることができるとのことで行ってみることにした。

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確かに入り口は閉鎖されていたが、門番がちょうど寝ていた。
「寝てるぞ!急いで、入ってしまおう!」
いたずらするようにロンさんがいい、未開放をしらないふりをして入ってしまった。

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こちらがアジア大陸の中心部。
しかしあと少し、というところで入り口から叫び声が聞こえた。
「入るな!」
「もう少しだったのに!」
慌てて戻る。

やがて雪をかぶった険しい山々が姿を現した。

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まさか雪が残っているなんて。
しかし気温はすでに冬の気温で、見てみると7度。

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向こうに見える二本の雪の筋は、スキー場なのだという。
「冬になればたくさんの観光客がくるんだよ」

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小さな村に着いた。
そこで、昨日食事をしたカンツァイさんと合流し、二台の車で向かった。
ここからしばらく車を進めたところに、天然の牧草地帯が広がる目的地があった。
「モンゴルゲルではなくて、民家に泊まるから安心しなさい」
ロンさんはそう言っていたが、ここには同じ外観をした建物が、自然地帯のなかにちょっと浮いたような感じになって建ち並んでいる。
このうちの一つが、私がお邪魔するお宅だった。

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ここはウルムチの南側に位置する牧草地帯で、「南山」と呼ばれるエリアだ。
地球の歩き方にも南山牧場というのが載っていて、その辺りではあるけれど、ここはツアーがあるような観光客向けの場所ではなく、純粋な遊牧地なのだそう。
板房溝八家戸村という場所になる。
「牧民の生活を体感してみなさい」
ロンさんが提案してくれたプランだ。
ロンさんの友人であるカンツァイさんが、このお宅を紹介してくれた。
「牧民」は、中国語の発音で“ムーミン”となる。
発音はあのアニメのムーミンとほぼ同じで、ムーミン、ムーミンと繰り返されて、その語感だけで楽しい気持ちになった。

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テーブルにはナッツが並べられ、それからパンと湯気をあげる奶茶(西域少数民族のミルクティー)があり、いただいた。
奶茶にはバターを入れて飲む。
新疆の奶茶はおいしくて大好物だ。新疆の各地で飲んだことがある。
一昨年に訪れたイリ地方のそれは本当においしくて感動したのを覚えている。
牛乳や羊乳を使うので、その質が味に反映される。
バターを加えるのは今回が初めてだったうえに、味が今までのとけっこう違う。
「場所によって味が違うの?」と訊くと、
「そうだよ」
茶葉を加える量が違うのだという。
カザフ族は茶葉をけっこう加えるが、蒙古族はあまり茶葉を加えるのを好まないのだという。
たしかに、茶葉の風味が全くしなくてさらに香辛料もあまり加えられていないみたい。
純粋にミルクの味である。

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ナッツとともに、白い塊が。
「奶疙瘩」
実は昨日すでに、ロンさんの部屋で口にしていた。
が、それともちょっと味が違う。
さらに一昨年イーニンでも口にしていたが、それとも少し違った。
「カザフ族のは酸味があるけど、蒙古族のには酸味がないの」
なるほど、確かにそう。
ちなみに、奶疙瘩とは乾燥ヨーグルトだ。
雰囲気としてはぱさぱさした味が薄いチーズみたいでもある。
奶茶ともに、牛、羊、どの乳を使うかでも味が異なる。

パンも奶茶も奶疙瘩も、そしてバターもみな、このお宅で育てた家畜のものから手作りしたものだ。

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地下室があり、見てきてごらんというので覗きにいくと、奥さんが鶏を一匹ぶつ切りにしているところだった。
これから私たちをもてなす食事を用意してくれるみたい。
「これもうちで育てた鶏なんだよ」

ロンさんがおしゃべりに花を咲かせているので、チャンイーとリュウさんと三人でちょっとその辺までドライブしてみることにした。

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ドライブから戻ってきてお昼ご飯はごちそうだった。
部屋にはチンギスハンの顔をデザインした布がかけられ、蒙古の民族衣装を着た家族写真に蒙古族のもの。

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大盘鶏は、先ほど作業していた鶏だ。頭から足までそのまままるごと入っている。
抓飯はウイグル族だけのものかと思っていたら、新疆の各民族でも作るよう。
新疆式ピラフだ。さっぱりしていて、ドライフルーツやニンジンなどをつかっているのが特徴。

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とりわけおいしかったのは手抓肉。
手づかみでかぶりつく、羊肉だ。骨についたお肉はやわらかくてほろりとはがれる。
味付けはしていない、純粋の肉の味だ。

「“ドウゾ”、は“请”の意味なんでしょう?」
「コンニチワ」
彼らは私に日本語の話題を振ってくれた。
日本語は話せるわけではないが、その“ドウゾ”などの発音はとてもきれい。
「蒙古はね、漢族よりも日本語を習得するのが早いんだ」
どうやら発音形態などから、学習しやすいのだという。
かれらは普段は蒙古語を話し、そして中国語も話せた。
奥さんのスーチンさんは漢字を書くことができたが、ご主人のニーマンさんは話せるが書けないのだという。
発音も蒙古のなまりがあり、中国語能力の低い私と彼らがコミュニケーションするのに、ロンさんらの中国語の翻訳がはいり、少し不安になった。


ごちそうを終え、ロンさんらはウルムチ市内に帰っていった。
部屋は二階の一室を使用させてもらうことに。

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周囲にはまったく同じ外観の建物が建ち並ぶが、一部には人が入るがそのほとんどが無人のよう。

みんなが帰っていって、寝不足続きで限界が来た私は、お借りした部屋で二時間ほど眠りに落ちてしまった。
起きて下に降りると、スーチンさんがご飯を出してくれた。

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ちぎった麺が入った麺料理だ。
私はこの系統が好きだけど、男の子のパトュパイ君は好きではないといって手をつけない。
「夜おなかすいちゃうよ」
そういうと、「大丈夫、リンゴとかそういうのを後で食べるだろうから」
スーチンさんはもう慣れているみたい。
このお宅には二人のお子さんがいて、女の子のツァイツクちゃんは15歳、男の子のパトゥパイ君は10歳なのだという。
学校はここから5㎞離れたところにあり、毎日送り迎えをしているのだそう。

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食事を終えて、スーチンさんと二人の子供とともに外に散歩に出かけてみた。
車に乗らないと小さな商店さえもない、静かな住宅地だ。
辺りには人の気配もないみたいだったが、
「こっちもこっちも人が暮らしていないけど、向こうの家には人がいるよ」
スーチンさんはそう言った。
こんな静かで人少ない場所に、それでも公安だけはあり、赤と青のランプが異様に思えた。
「公安は怖いよ」
私の数度の新疆旅行を通して今ある感覚だ。
テロや民族問題や治安よりも、それを警備する国家の方が、私にとっては怖く感じる。
検問も厳しく、悪か悪でないかではなく、彼らが問題があると判断するかどうかが問題になる場所だ。
私は犯罪者ではないが、内地ならともかく新疆では問題があると判断されれば何をされてもおかしくない。
去年のカシュガル旅行では、アトシュ郊外で検問にひっかかり大変な思いをした。
だから今日も検問でびびる私をロンさんは笑ったが、その話題が出て
「だから怖いんだよ」と言った私に対し、
「安全のためにあるものなんだから大丈夫」と言う。
その後の検問でも、
「この国は友好な国だから怖がらないで」
リュウさんもそう言うが、これらの治安組織は中国を守るためのものであって外国人である私は違うよ、と心の中で思った。
新疆が危険かとかそういう話題はつきないが、治安の方面での危険を挙げていうならば、私にとってはテロや民族問題、宗教問題よりも、それを治安する公安や特殊部隊の方がこわく感じてしまう。

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日が刻々と暮れていく。
日本では、こんなに広い空を見ることはない。
遠く遠く向こうには、ウルムチの街明かりがわずかに確認できた。
距離にして50㎞ほどである。

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部屋にもどりしばらくすると、ご主人のニーマンさんが帰宅した。
昼間はあんなにおとなしかったのに、なんだか別人のようにテンションが高い。
スーチンさんは苦い表情をした。
「お酒飲んできて酔っ払ってるよ」
どうやらバイクで帰ってきたらしいが、運転大丈夫だった?と心配になるほどお酒の匂いがプンプンしている。
その後、酔っ払い中国語を話せない状態になったニーマンさんの相手がたいへんだったこと。
スーチンさんはうんざりしたようす。
私も一杯だけ白酒をいただき、退散することにしたが、そのあともたいへんなのだった。

そして困ったことに、圏外だった。
持ち込んだ移動Wi-Fiは正常に動いていたが、電波がゼロ。どうしようもなくあきらめた。
スーニンさんにも訊いてみると、今日は天候の問題があるのではないかとのこと。
普段はそんなことないという。
みんなと連絡がとれなくなるのは困ったが、電話の方はできるみたいだったので、ネットが壊滅していることだけチャンイーに伝えた。


〈記 5月20日 ウルムチ八家戸村にて〉


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2018-06-03

烏魯木斉旅行四日目

2018年5月21日、朝の7時過ぎにドアがノックされた。
こちらは標準時間から二時間ほど遅いエリアだから、まだ朝の5時くらいの感覚だ。
眠くて死にそうになりながらドアを開けると、スーチンさん。
「子供二人を学校に送ってくけど、まだ寝ていたい?」
お邪魔していて申し訳ないけれど、
「まだ寝る」と答えた。
学校は9時が始業のようで、標準時間の矛盾を感じる。
夜9時10時まで明るいのに、9時始業だなんて。
そうして溜まった寝不足のせいか、眠くて眠くて、支度をしてようやく階下に降りたのが10時半だった。
外はみごとにいい天気で、窓の外には青空の広がる大草原が広がっている。

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いただいた朝ご飯はシンプルに、牛肉にトマトスライス砂糖がけに、奶茶。

「今日はどうしたい?」という問いに、
「馬に乗ってまわりたい」と答えていた。
のんびり朝ご飯を食べて家を出る。

スーチンさんたちのお宅には、家畜の馬、羊、鶏のほかに、大きな犬とたくさんのハトがいる。

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こちらは犬のゴンジュ。
「羊を追うのに使うの?」と訊いてみると、そういうわけではなくただの飼い犬らしい。
ずいぶんと立派な犬だ。
このあたりの家ではみなどこも犬を飼っているようで、さらにそれがみな強い系。

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ハトは、広東省江門で食べたことがあったので、
「このハトも食べるの?」と訊いてみると、
「食べないよ、飛ばして遊ばせるんだ」とスーチンさんは笑った。
ハト小屋の中にはたくさんのハトと、ピーピー鳴き声をあげるヒナもたくさんいる。
食べるための家畜は、鶏だけ。
「カザフは馬を食べるね」という話をしたら、
「蒙古族は馬を尊重しているから食べない」
馬は乗るために、また売るために。
鶏は食べたり卵をとるために。

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家の裏手はすぐに大草原。
昨日とは打って変わったような天気のよさに、雪をかぶった険しい山々が昨日とは違った輝きをみせていた。
下りていくと、そこには三頭の馬がつながれている。
一頭けっこう大きな馬と、二頭少し小さな馬。
小さな馬がいいな、どれに乗せてもらえるのかな、と思っていると、大きな馬にご主人のニーマンさんが乗った。
羊の群れを引き連れた仲間の羊飼いが通りがかり、何やら話しているが、蒙古語でまったくわからない。

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「旦那は今から馬で向こうまで行ってくるから、戻ってきたら馬に乗ろう」
それまでは、向こうの山に登って見るでいい?
スーチンさんはそう提案し、私は賛成した。
どのみち時間はたくさんあるのだ。

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めまいがするような空の青さだった。

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私はスーチンさんの運転するバイクのうしろに跨って、ぐるりと向こうの山に向かった。
風を切るバイクのドライブは思いのほか楽しくて、日常の煩雑な事柄が一つひとつ風に吹き飛ばされて、心が軽くなっていくようだ。

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昨日から少し気温は上がって10度を越すくらい。
肌寒いけれど風が気持ちよくて、開放的な気持ちになった。

あるところでバイクを停めて、私たちはゆっくりと山を登り始めた。
「日本の山も同じ?」スーチンさんがそう訊いてきたので、
「日本はどこにでも山があるけど、全然違うよ」
こんな草原の山はない。
見渡す限りの草原に、やわらかい草花をかぶったようななだらかな山が続いている。
「草だから、たとえ落ちてもケガしないね」
そういうと、スーチンさんは笑った。
草原の山にはところどころに土饅頭があり、広大な風景のなかには数え切れないほどの人たちが眠っていた。
その間々を登り、時々休みながら、上へ。

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見渡す限り、言葉通り雲一つない。
こんなに広い空、探しても雲のかけらすら見つけることはない。
まるで、不純物のない青い水晶玉のなかに吸い込まれてしまったようだ。
私はいま、その水晶玉の中から外の世界を覗き込もうとしている。

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稜線に出ると、その反対側は私たちがやってきた草原とはまるで違う世界のよう。
深い常緑樹に覆われた山々の向こうには、雪をかぶった神々しい山岳がどうどうとしている。

下にはいくつものモンゴルゲルがある。
「あそこには人がいないの?」
「いないよ」
現在、モンゴルゲルで生活することは禁止されてしまっているよう。
「去年は大丈夫だったんだけど、今年からダメになったんだ」スーチンさんは言う。
そういう話は別のところでも耳にしたことがあった。
モンゴルゲルでの生活は、何も生活形態の変化だけが原因で失われているわけではないのだ。
大量に建設され、まだ入居者がいない住宅は現状をよく表したものかもしれない。
現在あるモンゴルゲルというのは、観光客向けに用意されたものか、羊の放牧など生活以外の用途で使われているものだ。

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ここから稜線に沿って歩いてみることに。
高所恐怖症の私にはなかなか怖い。

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羊の群れにはいくども出合った。

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あるゲルの近くには、餌台が置かれ羊が群がっている。

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覗き込んでみると羊は一目散に逃げ出し、そこに残った餌台にはなんと塩。
「羊、塩食べるの?」
「塩、好きだからね」

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「いつもこの辺りには牛がたくさんいるんだけど、今日はいないみたい」
スーチンさんがつぶやいた。
牛の群れはいなかったかわりに、見たこともない小鳥はたくさん。
その上を何羽もの猛禽類が低空飛行をしながらきょろきょろしている。
日本では考えられない位置まで下りてくる。
地面には時折大きな穴があり、それは明らかに何かの巣だった。
猛禽類が狙うような小動物もたくさんいるんだろう。

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再びバイクに乗って家まで戻ってきて、お昼ご飯をとったのは15時。

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卵とトマトとピーマンの炒め物は大好きで、ついつい食べ過ぎてしまった。
この卵も家畜の鶏のものだそう。

今日はもう馬に乗らないかな、と思い、、
「旦那さんは羊を放しに行ったの?」と訊いてみると
「違うの、今朝馬が一頭いなくなってしまって探しに行ってるんだよ」
電話が何度も来てるけど、まだ見つからないんだ、と言う。
この広い広い大草原で、いなくなった馬は見つかるんだろうか。
「自分たちの馬って、見たらわかるものなの?」
「わかる、一目でわかるよ」

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時刻は16時を過ぎていたが、少しだけ乗馬に行ってみることになった。
小さい馬がいいなと思っていたけれど、乗るのは一番大きな馬になった。
じつは私にはトラウマがあり、馬には恐怖心があった。
昨年の8月、内モンゴルのフルンボイル大草原で馬に乗ってみたが、その馬は言うことをあまり聞かなくて、走り出したりして少しケガもしてしまったのだ。
「進むときにはこうする」
左足を馬の横腹にぽんぽんと当てる。
「停まるときには手綱を引っ張る」
「吁(yu)って言うんだよね」馬を停める掛け声だ。
「左右に行きたいときはこうする」
そう言って、手綱を左右に引っ張った。

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しかしこの馬とてもおとなしくて言うことを聞く。
すぐに恐怖心はなくなった。
「この馬、賢いね、人の言うこと聞く」
「もう他の二頭はね、走るのが好きで言うこと聞かないで走り出してしまうから」
この馬は体が大きいけれど、ゆっくり歩くんだという。
昨日ロンさんが、
「馬が走り出したらこうするんだぞ」
そういって椅子から中腰になってみせて、それを見てみんなが大笑いしたのを思い出した。
私にとっては笑い事ではない。
この馬でほんとうによかった。

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無事に戻ってくると、スーチンさんのところに電話が来た。
「馬が見つかったみたい」
見つかった場所は、あの青い建物のところ。
そういって目を細めて見てみると、米粒のようなそれが見えた。
あんなところで見つかったなんて。
あそこまで行った馬もすごければ、見つかったこともすごい。
「今から馬を連れ戻しにいってくるから、家を見ていてね」
そう言ってスーチンさんは、今まで私が乗っていた馬に乗って出発した。

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何時間もたってようやくスーチンが帰宅した。
馬はすでに戻り、帰りがてらに二人の子供を迎えに行き連れ返ってきたよう。
夜ごはんはまた私の大好きな麺。
このちぎったような麺も、全部手作りなのだそう。
おいしくてお替りをした。

快晴だった今晩は満天の星空を見るのが楽しみだった。
ところが夜が遅くなかなか暗くならない。
夜半過ぎて窓の外を覗いてみると、細かい星空が見えた。
しかしあいにく月あかりがあり、散らばる星のかけらが確認できる程度。


〈記 5月21日 ウルムチ八家戸村にて〉


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2018-06-03

烏魯木斉旅行五日目

2018年5月22日、朝7時前に目が覚めて窓の外を見ると、もうすぐ日が昇りそうだった。

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ここで起きて日の出を見に行こうかと迷ったけれど、けっこう物音がひびいてしまうのでやめた。
そうしてまた眠ることにして目が覚めると、また11時。
眠ったのが遅いので睡眠時間はそうでもないのだけれど、寝ても眠気がとれない。
しかも乾燥がつらい。
顔は粉が吹いてかさかさでむくみ、目はひりひりでやっぱりむくみ、そして唇はリップクリームも塗っても色が変色してきた。
今まで新疆旅行でいつも乾燥に苦しんできたけれど、海抜の問題もあるのか、いつもよりきついみたい。

朝ご飯をいただいて、「今日は何したい?」ということになって、
「放羊をやってみたい」と答えてみた。
馬に乗って羊を草原に追い、草を食べさせるのだ。
みんなからもやらせてもらいな、と勧めてもらってその気になっていた。
ところが、「うちは羊は飼ってないんだよ」
昨日の話では、馬、羊、鶏を飼っているという話だと思ったのが、少し勘違いしていたようで、実際は羊ではなく牛を飼っているということだった。
牛はもっと離れた、昨日登った山の向こうで飼っているとのこと。
「羊は飼っていないから放羊はできないけど、馬に乗って羊を見にいこうか」
という話になった。
てっきり放羊に行っていると思っていたニーマンさんはではどこに行っているのかというと、今日は馬を売りに遠くに出かけているらしい。
昨日乗ったあの賢い馬を売りに行ってしまったのかと思って尋ねてみると、言うことを聞かない馬の方を売りに持って行って数日は戻らないだろう、とのことだった。

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ご飯を食べ終えて、再び家の裏の草原へ。
草原へそのまま飼い馬をつないである。
昨日脱走してしまった馬も、今日は無事おとなしく繋がれている。

乗らせてもらうのは、今日も人の言うことを聞くあの賢い馬。
それぞれの馬には名前はついていないようで、その代わり太ももにマークが刻印されている。

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馬にいろいろと準備をセットする。
頭にはベルトをかける。
「これが取れたらどうしようもなくなるから、大事」
スーチンさんは言った。

今日も天気はとてもよくて快晴。
けど昨日ほどの澄み切った青空はなく、うすく霞んでいるよう。

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一面にたんぽぽが咲いていて、鳥が飛びだしては舞った。
心から癒される。

昨日も今日もほぼ無風で、するとどうなるかというと、無音の世界だった。
風そよぐ音もせず。
耳がおかしくなりそうな錯覚がした。
普段の生活がいかに音に囲まれたものであるかを、知った。
静かな場所にも何かしら意識しない音があったのだということを知った。
見渡す限りの草原で、音を発するものといえば、時々鳴き声をあげる小鳥。
馬が地を踏みしめる音。
けれどそんなものも、この広さの中に飲み込まれてないも同然になった。

羊を探しに出てみたけれど、近くには見当たらなかった。
「おなかいっぱいになって家に戻っちゃったみたいだね」
スーチンさんは言った。
朝、草を食べに出て、おなかいっぱいになれば戻ってしまう。

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それでも草原を一回りして、十分に楽しませてもらって、また家の裏に戻ってきた。
そして馬に水をあげてお昼ご飯に。
お昼ご飯は麺。
おかずを自由にかけていただく。

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そうしてしばらく来客があったりして、出発したのは17時半。
「このあとはどうしたい?」とスーチンさんはそう訊き、
「おすすめの場所があったらそこがいい」
そう答えて、今度はバイクではなく車で出かけることになった。

その前に寄るところがあるみたい。
車はやがて古くて小さな村に入り、砂埃のなか、停まった。
あたりは土とレンガでできた古い家屋が点々とする。

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「ここは前に住んでいた昔の家なんだ」
「それじゃあここはスーチンさんの生まれたところ?」
「私はバインゴリン・モンゴルで生まれたから違うよ、旦那が生まれた場所だよ」
到着した日、チャンイーが、ウルムチよりもコルラの方が蒙古族が多いと話していたのを思い出した。
コルラはバインゴリン・モンゴル自治州にある都市だ。
「ここにはね、嫁いでやってきたんだ、16年になるよ」

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土とレンガでできた家はかなりの年月を感じさせた。
昔の家には、今は鶏が暮らす。
放たれたままの鶏は、スーチンさんが餌を出すと集まって夢中になって食べ始めた。
初日にごちそうしてくれたあの料理は、飼っていた鶏を一羽まるごと使ったものだった。
大切な家畜をごちそうしてくれたのである。
家畜はかれらの財産だ。
スーパーに行ってお金を支払えば好きな塩梅で食料が手に入る生活の中で、一つひとつの命をいただくという感覚が私にはないことを恥ずかしく思う。

その裏手には、一頭の馬がいた。
それにも水と草を与える。
「この馬も言うことを聞かない馬で、数日前に逃げたからここに放り込んだんだ」

村を後にして、車を走らせてやがて山のふもとで停まった。

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「あれ、水がない」
スーチンさんは困ったふう。
本来であれば、向こうにあるダムから流れてくる水があるようだが、完全に乾いている。
どうやらここがスーチンさんのおすすめだったよう。

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せっかくなので辺りをうろうろしていて目についたものがあり行ってみると、それは何かの施設のよう。
施錠されていたが、係の人が入ってみてもいいと言ってくれたので、見てみることにした。
「訊かれたら私の妹だと言うんだよ」
スーチンさんはそうささやいたが、民族も違えば私は思い切りカメラを持っていて、姉妹だというのはちょっと苦しい。

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こんなふうにして妙な恐竜の像が建ち並び、不可解きわまる。

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実はここ、軍事演習のような訓練をするところのよう。
迷彩服や偽物の銃が並び、確かに訓練に使うようなロープやセットがある。
ゲルも並び、宿泊しながら訓練できるみたい。
でも恐竜がどうしても気になる。
「訓練って遊びの?それとも真面目なの?」と訊いてみると、
「真面目なところだよ、でも遊びでもできる」という。
今日は人がいないが、明日は利用者がいるらしい。

ここを後にしようとすると、すぐそこにはチケットを検査する場所があった。
チケットってなんのチケットだろう、この先には何があるんだろうと思っていると、
「ここには天山大峡谷があるんだよ」
天山大峡谷はウルムチからもツアーが出ている観光地だ。
まさかこんなところにあったなんて。
せっかくここにきて、立ち寄りもせず帰ってしまうところだった。
なんで誰も教えてくれない…。
ではさっそく明日はここに来てみることにしよう。
チケット売り場はここからだいぶ離れたところにあるようだったので、スーチンさんに明日そこまで送ってもらうことにした。

「向こうにはモンゴルゲルがたくさんあるから行ってみようか」
そう言って連れてきてくれたのは、昨日山の上から見下ろした場所だった。
辺りには繋がれた馬がたくさん、乗客を待つ。

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そこには軍事区域 立ち入り禁止の表示がありどきりとする。
軍事関連に近づくことはタブーだし、写真なんてもってのほか。
さらにここは辺境の地だ。
でも立ち入り禁止どころか馬が自由に行き来しているので、入ってみた。

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廃墟と目覚めるような緑が不思議な組み合わせで目を引いた。
こんな廃墟が数棟続いていて、この場所には明らかに不自然さと違和感がある。
危険、進入禁止のスプレー書きがすべての建物に書かれている。崩壊寸前のような建物だ。
これが実際はなんだったのかはわからない。

ここからまた車に乗り、しばらくして分岐点を左に曲がった。
「向こうは立入禁止だから」
そういう横を軍事関係と思われる車が数台そちらに進んでいった。
先ほどの立入禁止はここのことだったよう。
でも、言われなければわからない。
知らないで入ってしまう、そういうことが本当にあるから怖い。

分岐点を左に行くと、廃墟化したゲルがたくさん残されていた。
そのまわりを牛がのびのびと草を食んでいる

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以前は観光客向けの宿泊施設だったようだが、今ではすべてが放棄され、あるものは施錠されあるものは崩壊しかかっている。
「去年まではよかったけど、今年からダメになったんだ」
廃墟化したゲルの中をのぞくと、夜逃げしたみたいに酒瓶などがそのままに放棄されている。
美しい自然の場所に来て、なんだか悲しい光景だった。

帰りはまたあの土とレンガの村を通り、そこで学校帰りのツァイツクちゃんとパトゥパイ君を拾って家に戻った。
明らかに蒙古族ではない子供たちと一緒で、
「あら、今日はずいぶん可愛いね、どうしたの?」
スーチンさんが笑顔で声をかけると、
「お遊戯があったの」
ティアラをつけた女の子はそう答えた。
「あの子はカザフ族だよ」
スーチンさんが教えてくれた。その女の子の肌は白くて瞳が薄かった。
色んな民族が一緒に暮らしている街だ。
このあと見せてもらったスマホの映像は、学校のお遊戯のもので、それぞれの民族衣装を着たものだった。
パトゥパイ君も登場して蒙古族の衣装を着ていた。
蒙古の威厳を示すような堂々たるパフォーマンスだった。
小さな村に少数民族の場所、てっきり子供も少ないだろうと勝手に想像していたら、学校にはなんと1000人を超す子供がいるよう。
大きなバスが出ていて、広い範囲から集まって一緒に勉強しているみたい。

家に帰って、私は荷物を置きに二階にのぼった。
そうして下りてくると、何やら様子がおかしい。
するとツァイツクちゃんとパトゥパイ君が、蒙古の民族衣装を着てはずかしそうにしている。
どうやら、私に見せるためにわざわざ着てくれたみたい。

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普段は着ないけど、結婚式など特別な時には着るそう。
そういえば部屋に飾られていた家族写真も蒙古の衣装を着たものだった。
刺繍が細かくて豪華な衣装だ。
二人にとてもよく似合っていたが、数年前の衣装なのできついのを無理やり着てくれたものみたい。

このあとツァイツクちゃんと犬のゴンジュの散歩にでかけた。
怖かったのは、この一帯放された犬がとても多いこと。
それが10頭ほどのかたまりになってこちらに吠えて近づいてくる。襲われたら命はない。
ツァイツクちゃんは堂々としたもので全くひるまず石を投げた。
「あれ野犬でしょ?」
びくびくしながら彼女にしがみつき訊くと、
「みんな人が飼ってる犬だよ」
都市部では人に飼われた犬はこんなには襲ってこないけど…。
私たちが散歩するルートについてきては飛びかかるそぶりをし、またその10頭だけでなくあちらこちらから犬が飛びだしてこちらを狙う。
「大丈夫だよ、心配ない。ゴンジュには敵わないから、石投げれば逃げてく」
巨大な犬ゴンジュは私の恐怖をまったく知らないふうで、尻尾を元気に振りながら散歩に夢中。
吠えかかる他の犬たちのこともまるで目に入っていないふうで眼中になし。
「ゴンジュはあとからこの場所にやってきたから犬たちはみんな嫌がるんだ」
しかしゴンジュの勝利である。

散歩が終わるとひとりで家の裏の草原に出てみた。

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ゆっくりと沈んでいく太陽があった。
遮るものはなにもない。
見渡してもだれもいない。
私一人があの太陽を独り占めしているような気になった。

家の中に戻ると、今夜のご飯は大好きな火鍋だった。

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蒙古なので羊肉がでてくるかなと期待したけれど、意外にもお肉は一切なしの野菜と豆腐にソーセージのみの火鍋。
豆腐干に麺筋は、以前は見た目であまり好きではなかったけど、これがとてもおいしい。
ついつい夢中になり食べ過ぎてしまった。

スーチンさんは自分の兄弟や親せきの写真を見せてくれ、そんな話もたくさんした。
スーチンさん自身も、旦那さんのニーマンさんも、それぞれ兄弟姉妹6人なのだそう。
ツァイツクちゃんとはたくさん写真を撮った。
日本にも興味を持ってくれて、富士山の写真を見せるときれいだと喜んだ。
「いつまでいるの?」
と訊くツァイツクちゃんに、「24日にウルムチに帰ろうと思ってるんだけどね」というと寂しそうな顔をした。
今日なんとなく考え出していたことだった。
お宅にお邪魔して三日目、めんどうがることもなく温かく受け入れてくれて、それどころか楽しんでくれている。
私はいつも与えてもらってばかりだ。


〈記 5月22日 ウルムチ八家戸村にて〉


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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