2016-05-22

伊寧旅行二日目~ウルムチ・中編~

お昼ご飯にやってきたのは、店先に羊肉がぶらさがっているお店。
ロンさんは私が羊肉が大好きなのを知っている。
私が一言「羊肉が食べたい」と言ったならば、もうとことん羊肉になるだろうと覚悟を決めた。

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てっきり烤羊肉かと思いきや、出てきたのはスープに浸かったもの。
羊肉と一緒に浸かっているのは、ナンだ。
硬いナンはスープに浸かってふやふやにふやけていた。見た目も味も食感もなんだか日本のさつま揚げを思い起こした。
羊は骨がついたままでワイルド。
日本と違って中国で食べる食肉は、このように生き物を食しているといった感覚そのまんまだ。
日本では食肉はきれいにパッキングされていて、その動物の姿を極力感じずに安心して食べることができる。
その代わり、食肉がその前に動物だったことを知らない、現代にはそんな驚くような子供も中にはいるという。
そんな日本からしたら、中国の食文化はR指定がついてしまうかも知れない。
どちらが正解なんて言えないけれど、こうした文化の違いを知るだけでも、視野が広がった思いがする。

お店を出ると、さわやかな春のウルムチだった。
雲は多かったが風景は明るい。
向こうにマンションが見えてきた。

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左に逸れマンションに入っていこうとすると。
「マーヨーズ、見てごらん。ここまで登ってきて、道は向こうに下がっていく」
確かに道路は微かに登り坂で、ちょうどマンションの入り口がピークになっていた。
「だからね、ここはウルムチで一番高い場所なんだ」
ロンさんは冗談めかしていった。
そういえば去年の夏、引っ越したのはウルムチで一番高い場所にある部屋なんだと言っていた。

その一番高い部屋に昇っていく。
エレベーターの中にはチラシがたくさん貼り付けられ、文字が殴り書きしてある。
「全部ウイグル族がやったのだよ」

部屋に戻り、フェイフェイ夫妻と合流。
歯をみがき、しばしくつろぎのひととき。

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テーブルの上には杏干や紅棗干など。
自由につまんでは食べる。

ロンさんに頼まれた雑貨を渡し、そのあと彼から依頼されていた「カメラ一式」を披露。
実は国境付近で私をもてなしてくれるというロンさんの友達、ジーさんは日本のカメラをご所望のようで、ロンさんから頼まれていた。
代金はロンさんが私にくれる。
その代わりお礼も兼ねてカメラ一式は私が直接彼に手渡すというわけだ。
わけなのだが、これが一番の荷物だった。
事前にカメラを探して選んでもらうのも大変だった。私はカメラに詳しくないし、専門用語を中国語でやり取りするのもなかなかできない。
予算だけ提示されその予算内で、ミラーレス一眼(ダブルレンズ)、三脚、フラッシュ、レンズフィルター、カメラバック、SDカード等々を探し紹介し決めてもらう。
最終的に私が選んだのは、富士フィルムのX-A2という型番の一眼、それにカメラに詳しい親戚のおじさんに相談して三脚はスリックにした。
日本製を求めているならばいい選択をしたなと思う。“富士”というメーカー名もいい。
ところが。
みんなテンションがあがった様子でカメラを次々開けていく。
贈り物なんだけど、いいのか…?
フェイフェイが興奮した様子で私に言った。
「マーヨーズ、今度私にも買ってくれる?」
頑張って選んで良かったな、と思った。

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15階からの景色、向こうがウルムチの繁華街の方向だ。
爽やかだった天気はあっという間に雲行きが怪しくなった。
窓際には厳めしい双眼鏡が。
これを覗いてウルムチの街並みを眺めるロンさんを想像するとつい笑ってしまった。

お待たせ~という感じで、ロンさんが向こうから運んできたもの。

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彼が作った杏酒だ。
先ほども見に行ったあの杏を使ったものだ。
もうずっと前から、ロンさんのお酒作りに関しては聞いている。
発酵過程がどうとか容器がどうとか、そんな話をいつもしていたから、実際に目の前して本当にうれしかった。
そういう彼はお酒が飲めないのだ。
「味は良くない、酸味があるから」
何度もそう言うけれど、お世辞抜きで好きな味だった。

それからね…次々と出てくる。
黒に近い色合いの液体、桑葚酒。これもまたお手製。
桑の実を発酵させて作ったもの。
桑の実は、昨年9月にコルラで友人が凍らせて保存したものを食べさせてくれた。
そう言えば、ウルムチ行きの飛行機内で提供される飲み物にもこの桑葚ジュースがあった。

それから、透明な液体が出てきた。
ガラス瓶に糖蜜かなにかのラベルが貼ってあったので甘いシロップかと思いきや、なんと白酒だった。

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写真を撮ろうとすると、ボトルを全部裏返しながらロンさんは言った。
「中身と違うからこうしないと」
左から、桑葚酒、杏酒、白酒、白酒。
「ロンさん、お酒飲めないじゃない。なんで白酒があるの?」
「毎日ひとくちずつ、飲む」
にやりと笑いながらそう言う。
飲めないけれど、味わいは好きなのだ。
お酒が大好きな私を知っているからこそのこうしたもてなし、本当にうれしかった。

「マーヨーズ、こっちおいで」
キッチンの方へ導かれていくと、怪しげな壺がふたつ。

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制作中の杏酒。
中を覗いてみると、どろどろと濁っていて怪しげ。
今、発酵途中なんだという。
「帰りまでになんとかして濾過までやるから、もし間に合えば持って帰らせてあげるよ」

そうしていると、リー・リーが到着した。
彼女はここウルムチで和田玉のお店をやっている。
去年は和田玉の指輪を彼女から購入したのだった。その指輪は今右手の薬指だ。
高い買い物だけれど、そう頻繁に新疆に来れるものではない。
日本であのアクセサリーが欲しい、あの宝石が欲しい、そういうのとは意味合いが違うのだ。私にとって。

3月のある日、私は彼女に訊いた。
「和田玉のピアス、作れる?」
「作れるよ」
粒が連なった感じに作りたいんだけど、材料があったら見せて。
そう言って数日後見せてくれたのは、1.2ミリ大の羊脂玉とそれより少し小さい南紅(紅いメノウ)。
やっぱり、もう少し落ち着いた感じがいいなぁと思い、
「碧玉(緑色の和田玉)は用意できる?」 と訊いてみた。

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私が参考に描いて見せたのがこれ。

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そうして数日後、リー・リーが用意してくれた材料がこれ。
旅行出発5日前、「リー・リー、出来上がった?見せて」 そういうと、
「出来上がったものが納得できなかったので、今修正をかけている」 とのこと。
出発前になり、ようやく完成品を写真で確認。
大満足してあとは現物を手に取るだけとなった。
金額はかなりのものだけれど、頑張って用意してきた。
自分がデザインしたものを、友人が手掛けて、ウルムチの地で受け取り、みんなにも見せることができる。
品質も彼女なら信頼できる。
一生の宝物になる。

「早く見せて~」
そうして手渡してくれたのがこれ。

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一番上の白い小粒が白いメノウ。
その下が、緑色の和田玉、碧玉。
その次の白い小粒が、普通の和田玉。
一番下の大粒が、羊脂玉、和田玉で最高級とされるランクのものだ。
きめ細かくねっとりとした質感は、このような粒でもひと目でわかる。素晴らしい品質だ。

みんなも見せて見せて~と集まり、素敵だと褒めてくれた。
「私が描いた絵に基づいて作ってくれたんだよ」
みんなの存在が、喜びを倍にしてくれ、また自分にとってのこのピアスの価値を高めてくれた。思い出のエッセンスだ。

お金はしっかり別途用意し、以前に中国で買った赤いお年玉袋に詰め込んできた。
「はい、確認して!」 と手渡すと、
「ああ、紅包じゃないか~、リー・リーいいなぁ!」 とロンさんが囃したてた。
内地ではもっともっと金額が跳ね上がってしまう。これでも安い買い物になるのだ。けれど一方、私にとっては金額に換算できないものでもあるのだ。

「マーヨーズ、来な!」
ロンさんから集合がかかった。
大きな液晶テレビの前に私を座らせ、私の後ろからデスクでパソコンを操作しながら話し始めた。
「今から、旅の計画を説明する。しっかり聞くように」
テレビにはグーグルアースによる衛生画面。
ウルムチ周辺の広域が映されている。
地図には旅程が保存されており、私の進むルートに合わせて線が引かれてあちらこちらに伸びている。

まず、このあとみんなでご飯を食べたあと、三人でウルムチ南站から夜行列車で博乐へ行く。
そのあと車に乗ってこの街に行きここでご飯を食べる。
そのあとここに行ってあそこに行って、そのあとここでご飯を食べる。ここでは**を食べるように。
ここはお勧めだ、景色が一番いいからここで写真を撮るように。
それからここへ行って…

まるで講師のように画面を操作しながらロンさんは説明を続ける。
「覚えられない!!」
最初はうんうんと聞いていた私も、次第にわけがわからなくなり、そう叫んでロンさんの説明を遮った。
「覚えなくていいよ、聞くだけでいいんだ」 やれやれといった感じでロンさんは言った。
一緒に聞いていたフェイフェイ夫妻はそのやりとりを見て爆笑している。
実際、具体的にどう自分が進路を取り誰といつ連絡を取りどのように落ち合い各所を点々としていくのか、把握できていなかった。
聞くだけでいいんだ。…本当にそう?

ロンさんの長い講義を終え落ち着いていると、リー・リーの友達からリー・リーの携帯にテレビ電話が入った。
去年、リー・リーの車で移動している時、途中で乗っけて途中で降ろした女性だった。
「マーヨーズ、你好!覚えてる~?」
賑やかだ。
みんな歓迎してくれて、本当にうれしい。

そんな賑やかさの中、突然、窓際でフェイフェイが叫んだ。
呼ばれて行くと。

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雨上がりのウルムチの街にみごとな虹が架かっていた。
みんなで双眼鏡を交替しながら、興奮する。
ウルムチで一番高いところから眺める虹は、それでも見下ろすことはできない。
あの虹はどこへ伸びているんだろう。どこと繋がっているんだろう。



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楽しいお話しありがとうございます。
たくさんテーマがあったようで、コメントも長くなってしまうかもです。
お肉の話、同感です。日本の精肉選びって、日付と産地に頼りすぎだと思います。なので、バラに近いロースとか、色目の悪いモモ肉とかが見抜けず、表示に頼るしかないみたいですね。やはり海外に出ると気づかされることが多いです。
果汁酒のどぶろく、いいですね。僕もそういった旅がしたいです。地元民が作るいろんな酒を飲みたいですし、できればその製法も見てみたいです。桑の実酒なんて、本当にシルクロードらしいじゃないですか。赤ワインのような味になるんでしょうか?
最後のピアス、かなり大きめですね。つけるチャンスあるといいですね。敦煌の壁画の胡人女性みたいな、なんともいえない素晴らしさです。上が小さく、下に行くにつれて大きくなるデザインも素敵でした

Re:

こちらこそありがとうございます。
そう、海外に出ると気づかされることが多いですね。
その土地の生活を体感することで、逆に見えていなかった日本のあれこれに気づくという不思議もあります。

桑の実ジュースはあちらでは紙パックになったものがありましたので、スーパーなんかでも手に入ると思います。
葡萄よりも酸味と甘みが強く濃厚な印象がありました。
道を歩いていても桑の木に出合うことが時々あり、身近な植物なんだな、と感じました。

ピアスはけっこう大ぶりなんですが、旅行中もつけていました。
和田玉の指輪もそうなんですが、私にとってお守りみたいな意味合いもあり、これからも中国旅行の際は身につけようかと。
思い出も思入れも両方あるので、そんなふうに言っていただけるとやはりすごく嬉しいです(^_^)
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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