2016-05-22

伊寧旅行二日目~ウルムチ・後編~

時刻は20時、みんなで夕ご飯を食べに行くことに。

中国はその広大な領土にも関わらず北京時間で統一されている。
北京初め多くの主要都市は沿岸部にあるため、中国の各所を旅行したとしてもたいがいどこもそれで問題ない。
しかしここまで内陸にくるとそうはいかない。
新疆ウイグル自治区と北京とでは、実質的に2時間の時差がある。
20時を回ったとしてもまだ普通に昼間のようだ。
その為、ここには新疆時間という現地時間が存在する。
しかし私が見たところ、ウイグル族初め少数民族以外の中国人は普通に北京時間を使っているため、私は新疆時間に触れたことがない。
新疆時間はどこを基点にしたものだろう。やはりウルムチだろうか。
新疆は新疆でまた広大なのだ。
東の端と西の端とでは、ここもまた実質的に1時間の時差があるはずだ。
そんなことを考えながら、それこそ時間に縛られているようだと思った。
日が昇り目が覚め、日が沈み眠りにつく。
本来、ひとの営みとはそういうものだったはずだ。

マンションを降り、先ほどお昼を食べに行った辺りまで歩いて行き、ふと横道に逸れた。
そこには小道が続いていて、ウイグルの雑多な賑わいがあった。

ただの路地のような感じなのに、道に入り込んですぐ入り口には検問があった。
小さな入場ゲートのようなものがあり、そのゲートを通過しないと中には入れない。
中には公安がいて身分証をチェックしていた。
「私、パスポートいる?」
そう言ってパスポートを取り出そうとしたら、
「しっ!黙って!しゃべらないで!」
そう言ってみんな私を背後に隠すようにゲートを通した。
ロンさんは身分証を見せながら、「ご飯食べに来た」と説明している。
その隙に通過。
新疆の公安はそんな甘くはないから、わかっていたとは思うけど。
ただ、外国人だということはばれなかったようだ。
「ねえ、なんでこんな厳しいの?」
「危険だからだよ」 フェイフェイが答えた。
ウルムチに初めて来た時、公安や武装警察の多さに驚いたものだ。
矛盾するが、予想通り、という感想もあった。
慣れるほどこの地で過ごしていないのに、すっかり安心して「なんだかんだ言っても大丈夫」となめた感覚になっている自分に気づく。

ゲートを通過して見ると、そこは人々の活気でいっぱいだった。
「マーヨーズ、荷物ちゃんとして!」
そう言って私のポシェットのファスナーを確認。
私はやっぱり甘いなと自分でも思うし、どうやら他人もそう思うらしい。
お店はもう決まっていて、みんなを席に残しリー・リーが外に連れだしてくれた。

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子供もいっぱいで、ウイグルの人々のありのままの姿がそこにはあった。

「これ何かわかる?」
見ると看板には“清真浴池”、覗き込めばさらにはっきりしたのは、お風呂屋さん。
銭湯なんてものはあるはずないから、おそらく簡易的なシャワーなんかがあるんだと思う。
こんな風に、人々の生活風景を覗き込んで行く。

とりわけ私の目を惹いたのは、薬屋さん。
イスラムの薬屋さんがたくさん並んでいる。
リー・リーが入店を促し、店主に
「彼女、日本人の友達なの。写真撮ってもいい?」 と訊いてくれる。
前回も前々回もそうだったが、彼女がそう言えばみんな喜んで「珍しいでしょ?」とでも言うように見せてくれるのだ。

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漢方、と言っていいのかわからない。
繋がるところもあるように思えたし、やっぱりウイグル独特のような気もした。
蛇やトカゲなどおどろおどろしいものも。
そうしたものから、きちんと製品化されアラビア文字が印刷された薬品も並んでいる。
薬品棚の上には、いくつもの肖像画のようなものが。
髭をたくわえた偉そうな感じのウイグル人像だ。
薬学に貢献した偉人達だろうか。
リー・リーはそれらについて訊ね、うんうん、と納得していたけれど、私にはわからなかった。

入り口の上には。

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イスラムの地ではそこかしこに見ることができる、イスラミックカリグラフィーの美しい額。
私は意味がわからないこそこれを見るのが好きだ。
「コーラン」
本場の発音でも何かはわかった。

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こちらはナン。もう見飽きるほどナンはそこら中にある。
ウルムチを初めて訪れ帰国した後、「ナンを食べなかったのが残念だ」と言ったら、ロンさんは「あまりにも当たり前すぎて頭になかったんだ」と言った。
「今度来る時には、30種類ものナンを食べ比べさせてあげよう」というようなことを言ってくれた。
彼がその約束を忘れてくれて本当に良かった。
でなければ今頃、食べ過ぎて倒れている。
ともかく、それぐらいこの地はナンが当たり前の存在なのだ。

リー・リーと小道を一往復くらいして、お店へ戻る。
私にとって彼女はとても居心地がいい。
というのは、不思議なくらいに私が見たいもの、やってみたいこと、知りたいことを理解してくれているからだ。
みんな親切だけれど、なかなかそこが一致しないことがあるし、それも当然の話だなとも思う。
リー・リーは新疆生まれだ。
私が見たいもの、知りたいことなんてみな当たり前すぎて空気みたいな存在になっているはずだ。
それなのに、写真撮りなよ、これ食べる?、ここに入ってみよう、彼女がそういうものはたいがい私が欲しいものなのだった。
理解しようとしているのではなく、それは感覚的なものなのかも知れない。

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羊肉のオンパレードだ。羊の下に敷かれているのは、ナンだ。
狭いテーブルに身を寄せ合ってみんなで食べる。
とにかく羊の色んな部位を食べる。羊は残るところがないのだという。
麺も次々と出てくる。
これらにみんなで箸をつける。骨付き肉は手でかぶりつき骨はテーブルに次々と山になる。
中国ではこれが普通だ。だからみんなご飯で仲良くなるのだ。
潔癖な人は中国では交友できないだろう。
同じお皿にみんなでお箸をつつき合う。
中国でこれに抵抗を感じたことはないが、日本に帰ってこれをやるかというとやっぱり他人のお箸はいやかなと思う。
国変われば感覚も変わってしまうようだ。

勧められるままおなかいっぱいになっていると、特別警察の制服を来た青年がやってきた。背中にはSWATの文字。
みんなの友達のようで一緒に食べる。
厳めしい制服は迫力があり、笑顔もあまりなくクールな感じが、いかにも警察といった感じで頼もしい。
当然このお店の店員はウイグル人で、お客の多くもそうだ。
けれど、気にする人はいないよう。

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お店を出たのは21時半ころ。
この黄昏どきの雰囲気が好き。灯りが灯り出す。

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路地には赤いテントが並び、その下では果物やナンや羊肉なんかを売る。

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手前の青いものを指して、リー・リーが「これ何か知ってる?」と訊いてきた。
梅に似ているけど…。
「杏子」
アンズでした。ロンさんが加工したものしか見たことがなかったから、こんな青い状態のものを想像していなかった。
リー・リーが数粒買ってくれた。
かじってみると、すごく酸っぱい。
「おいしい?」 みんなが訊いてくるので、
「うん、おいしい」 そう答えた。
みんな、ほんと~?みたいな反応。
正直、酸っぱいしか感想はなく、とりあえず模範解答をしてみたものだが、それは正解ではなかったよう。

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ウイグル界隈を抜けて、再びマンションへ向かう大通りを歩いて行く。
寒くもなく熱くもなく、涼しくて気持ちよい気候だった。

写真を撮りながら歩いていると、先ほどの警察の青年が寄ってきて
「写真撮ってはダメ」
と忠告してくれた。
見ると、すぐ右手には政府機関があった。
先ほども歩いたからわかっていたけれど、うっかりだ。

私はのんびりだったが、実は夜行列車出発までそう余裕がなくなってきた模様で、にわかにバタバタしだした。
「間に合うから、慌てない、間に合うから」
そう繰り返すロンさん。
それは同時に、急がなければ間に合わないという意味にもとれた。
「まだ1時間あるから」
ウルムチ南站は激混みな上にセキュリティーが厳しいので時間がかかるのだ。

急いで15階に昇る。

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先ほど虹を見たウルムチの街もすっかり夜景に変わっていた。
22時ちょっと前だが、少しまだ空が明るい。

フェイフェイ夫妻と荷物をまとめ、階下に降りタクシーに乗り込んだ。
ここでロンさん、リー・リーとはお別れだが、バタバタのためろくに挨拶もせず気づけば駅に向かっていた。

車の中で、フェイ・フェイが電話を受け私に言った。
「カメラのお金渡し忘れたと言ってるよ!」
実は9万円近くの大金のため、それをあてにし追加の元を用意していなかった。
銀行振り込みでもいいが、できれば現金で受け取りたい。
なぜなら、今後の道行きでそううまく銀行やATMに遭遇できるとは思えなかったからだ。
電話を代わると、ロンさんは早口で多分フェイフェイに伝えたのと同じことを言った。
「听懂了吗?」 わかった? 
最後にそう訊かれたのだけ、わかった。
「わかんない!!」
「はぁ…、」
結局、新源で落ち合う予定の人からこの現金を受け取ることになった。

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このカメラ一式があるから特に荷物は膨大な量だった。
フェイフェイの旦那さん、チャンさんがそのほとんどを持ってくれる。
おかげでどれだけ楽させてもらったか。
一番きついのはセキュリティーチェックだ。何から何までいちいち通さないといけないから面倒なうえに、一つ通過したあとにまたもう一つそれがある。
去年の記憶が蘇る。
いつもこんなに大慌てだ。
「どっち?あっち?」
騒ぎながら尋ねながら、構内を走り回る。
結局、検札開始までには列に並ぶことができた。

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ウルムチ南発、阿拉山口行き。
私たちは博乐までだから、途中下車だ。
三人バラバラのベッドで、私のだけ車両まで別だった。
いいよと言うのに、チャンさんは自分のチケットと私のを交換し、フェイフェイと同じ車両にしてくれた。

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二階建ての車両で、私はその二階だった。
車内で物売りのおじさんからビールと水を買うと、「あと2元だよ」
「え?全部渡したよ」
「ああ、ごめんごめん、もらったね」
おじさんが本当にうっかりだったと思いたい。

窓際で飲んでいると、車掌さんが切符を回収しに来た。
カードと交換して、翌朝到着前に起こしにきてくれるのだ。
ところが、私のは「いらない」と言われてしまった。
これでは寝坊してしまうではないか。
途中下車なので、うっかりすればそうなる。
「どこどこの駅です~」
なんてアナウンスもないから、到着時間をみて自分で降りないと下車しそびれる。
さらに私は博乐站の到着時間も把握していなかった。
急いでフェイフェイに確認しにいく。
「8時だよ」
よし、7時には起きよう。何しろこの膨大な荷物を下まで降ろさなければならない。
時刻はまもなく0時を回ろうとしていたが、わくわくでなかなか寝付くことができなかった。


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ウイグルストア

漢族の市場もウイグルの市場もそうですが、圧倒的に光量が少なく、夜の闇に耐えている感があって、夕暮れ時からとても暖かみがあります。本文にある通り、時差が影響しているのか、夕暮れの時間がとても長く感じられますね。
しかもウイグルバザールは裸電球をたくさん使ってくれるので、僕は好きです。漢族の市場は店内蛍光灯、歩道の机は電気なしとなってしまうので、その辺の違いは大きいです。

それでウイグルストアですが、ウイグルパッケージみたいな食料品ってあるんですか?僕はなかなかそちら方面にはいけないので、義烏や上海でしかウイグルストアを利用できません。だいたいが、ただのビニールに入っただけのフード類になってしまうか、結局、漢族製品を扱っているにすぎないんです。インドから西の全く読めない文字の入った香辛料や調味料、ブリックパックなどがあれば買い物も楽しいですね。
また、カザフ商品なんてのもあるんでしょうか?

Re: ウイグルストア

私も裸電球の賑わいが大好きなんです。中国で市場や夜市を歩いている時間が幸せです。

ウイグルパッケージ…私も新疆へは3回しか行ったことがなく詳しくないのですが、新疆特産をもらうときにはいつも例えば「新疆特产・葡萄干」などと書かれてウイグル文字が入った袋にパッケージしてくれます。
麻袋の中から干果を計量してパッキングしてくれる形なので、現地でないともしかしたらそうした形では手にできないのかも知れません。
開ければ捨ててしまうものですけど、やっぱりそういう包装の方が気分が出ますね。

この旅行後半にはカザフとの国境を訪れていまして、そこで中国・カザフ、その周辺の商品を扱う免税店に立ち寄っています。
中国人とカザフ人がそれらを買い求めにやってくるエリアで、もちろんたくさんのカザフスタンのものが売られていましたよ。
カザフ語が印刷された食料品は、見慣れないのでやっぱり新鮮に感じました。

イーニン市内でもカザフ語の商品に遭遇することはあるにはありましたが、ほとんどウイグル語でした。
ただ、単独行動と市街の散策をほとんどしていないので、実際の様子はほとんど見ていないに等しいのですが…。
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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