2016-05-22

伊寧旅行三日目~イーニン一日目・後編~

このウイグル族の住居巡りが良かったのは、観光地であり観光地化していなかったことだ。
他の多くの観光地に見るように、もともとの姿、変わらないそのままの生活風景を覗くことができる。
人々はきっといつも変わらずこんな生活をしているんだろう。
雑談に花を咲かせるおじいさんたち。
集まってはしゃぐ子供たち。

この喀赞其民俗旅游区、ガイドブックにもその名が載っている。
ウイグルのガイドたちが観光客を受け入れる。
入り口にはたくさんの馬車が並び、お客を待っている。
観光客を受け入れるお宅の中には、先ほどのように工芸品を部屋に並べたりアイスクリームを用意しているところもあるだろう。
しかし、それだけだ。
ふと昨年の平遥を思い出した。
そこに暮らす人々が生活の延長線上に観光客を受け入れ、それをそのまま生活の一部にしただけだ。
だから、観光地でありながら観光地化していないのだ。
もしここイーニンを訪れる人がいて、そして中国各地の観光地化にうんざりしていたとしても、ここはぜひお勧めしたいなと思う。
馬車で一回りしたら、歩いて散策するのもいいだろう。

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しかし、観光地化はしていなくともこんなふうな中国のプロパガンダはあちらこちらに。
「民族団結」
美しいウイグルの白壁に異質に書かれたその文字は皮肉だ。
ウイグル語のルビはさらに皮肉だ。
まるで動物のマーキングのようだと思った。

馬車はある建物で停まった。
「吐达洪巴依旧居」と書かれている。

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広い庭があり、ここはちょっと観光客向けな雰囲気になっている。

吐达洪巴依は、かつてロシアで仕事をしていた商人なのだそう。
1930年代にイーニンの地にやってきてここを住居とした。
ロシア、ウイグル族、中原、锡伯族、これらの文化をこの邸宅に取り入れたのだそう。
それ以降、この邸宅はこの地の文化中心的存在だったとか。

普通の公園みたいだな~なんて思っていると、奥がにぎやか。
ちょっとしたステージがありその前には椅子が用意されていた。
すでにたくさんの中国人観光客が夢中になっている。

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男性がアコーディオンのようなものを演奏していて、それが終わるとこのようにウイグルの舞がスタートした。
これがけっこう激しい舞だった。
テンポいいウイグルの音楽に合わせて、アクロバティックに踊る。
男性は躍動的で、女性は衣装をひらひらさせながら優美だった。
こういうステージの催し物は本来そんなに好きではない私だけど、これには見入ってしまった。
やっぱりここは中国でありながら中国文化ではないな、と実感した。
しかしまた皮肉にも背後には「民族団結」の帯。

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私が特に気に入ったのはこのおじいさん。
頭に大きな花瓶を載せて、うまくバランスをとりながらステージ上を動き回る。観客も歓声をあげて大喜び。
笑顔がすごくチャーミングで素敵だった。
けっこうなお歳に見えるが、これからもずっと頑張ってほしい。

司会者は、一通り演出が終わると観客をステージ上にいざなった。
みんな一緒に踊ろうというわけだ。
いつもテンション高い中国人はこういうの好きだろう。みんな喜んで壇上へ。
フェイフェイは、「どうする?」とこちらを見て私の様子を伺う。
日本では絶対こういうの嫌派の私だが、中国に来ると少し変わるのか、ちょっと参加してみたくなった。
しかしいかんせん、踊りのセンスがないのだ。
みんなわからないなりに踊り子の真似をして踊っているが、私にはさっぱり踊り方がわからない。
ということで、不参加を選択。
けど、見ているだけでも十分楽しい気分を味わえた。

このステージのある建物の内部はひとつの展示室になっている。
なにがあるかと言えば、大きな大きな絵が一枚。

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見事な油絵だが、これはかつてのこの地区を描いたものだ。
100年前かそれ以上か、その辺りだろう。
これがよく見てみると、実に実際に忠実だった。
馬車で大雑把に回っただけだが、建物の位置など、これを見て当時と基本的配置は変わっていないことがわかる。
喀赞其民俗旅游区の文字があった最初の大門は、当時から同じデザインをしていたのだとここで知った。
この吐达洪巴依の邸宅もある。中央に大きく描かれている。
入り口のイスラム式大門のすぐ横には中華風の清真寺があった。
これは回族の清真寺だそうで、当時からこうした中華風だったようだ。
また、馬車で通り過ぎた西域風の清真寺も描かれており、こちらはウイグル族のものだそう。
ガイドさんは回族の方が160年前、ウイグル族の方が300年前のものだと説明したような気がするが、記憶はあいまいで疑わしい。
ここは長い歴史の中、ゆっくり流れる時間と共に受け継がれてきた場所なのだと思った。

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再び庭に出て。
庭を取り囲むように、古びた建物が見えた。
これらには、锡伯族、ウイグル族、ロシア人の三族が分かれて生活していたのだとか。

吐达洪巴依旧居を出て、大門まで歩いて戻って行く。

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横を覗けは水路にきれいな水が流れ、近くでは子供たちが木登りしてはしゃいでいた。
何かを採ろうとしているみたいだけど、枝が細くて危なっかしい。
けれど、なんて平和で幸せな光景なんだろう。

「あなたたちは見慣れているのに、私に付き合ってくれてありがとう」
そう言うと、「私もここに来たのは初めてなんだよ」 とフェイフェイは言った。
一緒に楽しんでくれてありがとう。

この旅游区を抜けると、待っていた最初のガイドさんとふたたび合流し、大通りを横断して対面の雑多な賑わいに移動した。
色んな物売りから生活用品を売るお店がごっちゃになっている。
「ここのは安いからいいのがあったら買うといいよ」
「さっきみたいな工芸品が欲しい」
そう言うとフェイフェイがガイドさんに訊いてくれた。
しかし、そういうのはここにはないとの返事。

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奥に見えるのは、乾燥したチーズみたいに見える。
何か訊いてみると、「ヨーグルトから作ったもの」だそう。
「食べてみる?」と訊かれたので、味見ということで一つ2元で購入。
これがすごく硬い上に、もさもさしていて、さらに味は酸味しかしなかった。
無味に若干の酸味。おいしくはない。
「どう?」 と訊かれたので、正直に「口に合わない」と答えた。
「食べたことある?」 そう訊いてみると、
「あるけど、私も同じ風に思うよ」 とフェイフェイ。

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お口直しというわけではないけど、イチゴ。
イチゴ売りはあちこちにいた。
1㎏、10元。
今日明日には食べないとだけど1㎏は多いよな、と思いつつも購入。結局、傷んだものをよけて食べきりました。
「日本にもイチゴある?」
「あるけど、高いよ」
10個くらいで1000円するのもある、そう言った。
イチゴのランクも多々、価格も多々、私の説明もどうかと自分でも思ったが、とにかく日本の果物は高級路線だということを伝えたかったので、まあこれでもいいだろう。
実際、私はイチゴの平均的価格のデータを持ち合わせていなかった。
今後はこれに、「大切に一粒一粒育てられ売り出されているからなのだ」という説明をつけれるようになれば、より間違いない説明になる。

お店や物売りが雑多とするウイグル族の界隈をもっと覗いてみたかった。
奥には迷路のようにそれが続いているのが見えた。
けれどガイドさんたちは、さらりとそれを横に見て通り過ぎて行く。
ここは予定にないよ、とでも言うように。
そうして車に乗って、私がロンさんにリクエストしていた“伊犁河”へ。

伊犁河(イリ河)は、イーニン市街地を南下した辺りを流れる川。
ガイド本にも載っているし、コルラの友人の北疆旅行記にも紹介されていたから、ぜひ行ってみたかった。
彼の写真は夕暮れを写したものでとても幻想的で美しかった。
そこでは、現地の人が結婚式を挙げていたのだそうで、そんなのも想像を掻き立てられた。

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イリ河に辿り着くと、アイスクリーム売りが。
先ほど食べたばかりだけど、すごく美味しかったからもう一度。
「ここの名産だよ」
アイス売りはそう言った。
ウルムチのバザールで食べたのとコルラの老街で食べたアイスは味が違ったけど、あれもとびきり美味しかった。
こちらのはキャラメル味が主流なのかな。
先ほどと同じですごく美味しい。
新疆にきたらウイグル族のアイスクリームは食べるべし!だ。

では肝心のイリ河はどうかというと、橋をすたすたと通り過ぎただけで、感じいるも何もなかったのだ。
おそらくガイドさんは「イリ河を通過で任務完了」だったのかも知れないし、彼女本人ここに観光的魅力を感じていなかったのかも知れない。
ガイドさんはロンさんの知り合いではあったが、私との交流はいっさいなかった。
私は最後まで名前すら知らなかった。
最初にフェイフェイが、
「彼女日本人で旅行に来た。しゃべりと聞き取りはあまりうまくないよ」
と説明して以降、会話はすべてフェイフェイオンリーになった。
私は今回旅で出会うすべての人と友達になりたかったが、このガイドさんはちょっと義務的な感じがして実際このあとそのまま別れてしまうのである。

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渡った橋。
この反対側にはまだ西日とも言えない夕方の日差しで川面が眩しい。
時刻は20時。
川の規模は大きかったが、水量はそう多いわけではない。
雨の後、水は茶色く濁っていた。
ちょっと眺めていると、みんなはあっと言う間に向こうだった。
川の向こうはもう街の外れで、建物すらそうはなかった。

このあとホテルに戻り、ここでガイドさんと運転手さんとはお別れ。
フェイフェイ夫妻と三人でご飯を食べに行くことに。
「マーヨーズ、何食べたい?」
「特色菜(その土地ならではの料理)が食べたいよ」
彼女たちもここは初めてでわからないので、チャンさんがスマホでリサーチしながら街をうろうろ。
見つけた回族のお店に入ってみた。

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揪片子。麺が食べたいと私が言ったから。
やっぱり麺はおいしい。トマト風味だった。

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こちらは椒麻鸡。
「椒麻鸡食べたい?食べれる?」
と訊かれ、なんだか私これを知ってるなぁ、きっと美味しかったからに違いない、そう思い
「食べれる、食べたい」 と返事。
しかしお皿が到着して思い出した。
二年前のウルムチ旅行、昌吉へ行った帰りに回族のお店でこれを食べたのだったが、口が痺れて辛くて辛くてとても食べれなかったのだ。
「好きじゃない」 そう答えた記憶があるのに。
頑張って食べてみるが、やっぱり同じ味だ。
美味しいは美味しいのだ。
しかし、身体は素直に反応を起こしてしまう。

フェイフェイは言った。
「マーヨーズ、休みは何曜日?」
「土日だよ」 と答えると、
「じゃあ、土日に合わせて日本に遊びに行ってもいい?」
私が彼女初め中国人の友人たちが大好きでかつ安心して自然体でいられるのは、彼らもまた自然体で接してくれるからだ。
私が、「中国の一番遠くに行きたくて」と話したら、
「じゃあ、チベットに行くといいよ。行くなら一緒に休みを合わせて行こう」
実を言うと、私はチベットにそう強い関心があるわけではない。どちらかと言うと関心がない方だ。
けど、彼女(あと旦那のチャンさん)とだったら行ってみたいなと強く思った。

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お店を出た時、すでに22時を回っていたがまだ暗くなりきれていない。
私がうろうろしたいと言ったら、二人も付き合ってくれた。
「私一人でぶらぶらしてから帰るから、二人は先に戻ってなよ」
そう言うと、
「だめ。危ないから」
私はいつもこんなだよ。時間もまだこんな時間だし。
「内地だったらいい。でもここでは一人はダメ」
やっぱり、私は甘いようだ。
ちなみに、内地とは新疆など辺境から見た、沿岸部、例えば~省というようなエリアを差す。
日本人から見たら大陸内側の方が“内”だが、これはそういう意味ではない。

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部屋に戻り、おとなしくくつろぐ。
先ほど小さな商店で買った乌苏啤酒とヨーグルト。
商店では、支払いの時に5角硬貨を使おうとした。
すると、「使えない」と拒否されてしまった。
「ここでは硬貨は流通してないよ」
おじさんは勘弁してよというように話す。
しかたなく5角札でお釣りをもらうが、フェイフェイは
「私たちウルムチから来たんだよ」 と不服そう。
ウルムチではそんなことはないからだ。
こういうことは頻繁にあるかと言えばそういうわけでもないが、かと言って中国では珍しいことでもないのも事実だ。

度数の低いビールを飲みながら、窓の外の限られた景色を見ていた。
今回の旅行はあちこちを点々とするのだ。
イーニンの夜を見収めておかないと。
向こうの道路をひっきりなしに公安の車が行き来する。
灯りの少ない暗いイーニンの夜に、赤と青の公安のライトの点滅がやけに目立って、ああ随分遠くに来たなと、変なところで実感した。


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ウイグル人というのは人をノせるのが上手ですね。ウイグルダンスが始まり、そしてラストになると、靴を脱いで壇上にあがる人の数が多いこと。普段怒った顔をしている人までもが、笑顔でダンス。

また、旅で必ずテーマになる物価のこと。そうですね。ただ価格を伝えるだけでなく、その国の持っている背景を伝える。必要なことですね。
また反対に、中国のこと、僕らがどう日本で伝えるかですね。

Re:

そういえば、私のウイグル族のイメージは、不機嫌そうな表情とこれ以上ないくらいの明るい笑顔。
でもやっぱりこういう笑顔の方が本来なはずですよね。
観光客への演出とはいえ。

「日本ではこれいくら?」「これ日本にはある?」
複雑な会話ができないので、こうしたやりとりが基本毎回ありますが、中国に来ると私がいかに日本のことや身の回りのことを知らないんだということに気づかされます。
相手の文化に触れることで自国の文化についても意識が向く、これも旅の楽しみです。
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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