2016-05-22

伊寧旅行四日目~イーニン二日目・中編~

教会を出て、13時。
遅い朝食と早いお昼を兼ねて、ひとつのお店に。

16050116.jpg

こちらの定番、抓饭。
人参やレーズン、杏、それから羊肉を使ったもので、味はとてもさっぱりしている。
私はとくにこれを美味しいとは感じないが、かといって美味しくないとも感じない。
一言で言えば、無難な感じだ。日本人でも食べやすい味ではないかと思う。
新疆に来ると必ず一度はこれを食べることになりそうだ。
これにはいつもヨーグルトが添えられている。
ガイド本かなにかで、このヨーグルトは抓饭にかけて食べるものだと書いてあったため、そういうものだと思っていた。
今までの機会ではそうやって食べなかったので、スプーンでひとすくい乗せて食べてみようとした。
すると、フェイフェイが「違う、違う」 とそれを止める。
「これだけで食べるんだよ」
ヨーグルトは甘くて美味しかった。
抓饭とヨーグルトのセットは、親子丼につくお吸い物や味噌汁みたいな位置づけだろうか。しかしそれも少し違う気がする。

16050117.jpg

こちらは、大好きな烤羊肉串。
新疆に来たら必ずこれは食べたい。
長い金属製の串の先を、ティッシュでこすってきれいにしてからかぶりつく。
ひと噛みして口の中に羊の脂がじゅわりと広がる。
独特の香辛料はこの地に来たなと強く実感させる。
焼きたての羊肉は、高級牛串のようなやわらかさと脂がある。

日本ではもし羊肉を口にできるとするならば、それは中国系の火鍋屋か、ジンギスカンか、あるいは欧風の高級料理、くらいだ。
それらにつく決まり文句は、「新鮮な羊肉を使っているので生臭くありません」
それでも独特の風味があり、私はそれもまた好きだったんだけれど。
ふと気づいた。
新疆に来て食べるすべての羊肉は、それらとはまったく違うものなのだ。
同じ羊であるということが信じられないくらいだ。
「生臭くない」という決まり文句をひとかけらも思い出さない程、それがあった試しがない。
だから同じ羊だということを忘れていたというより、まったく思い出すことがなかったのだ。
羊の独特の風味が嫌い&霜降りの脂大好き、という日本人がいて、さらに新疆ウイグル自治区を訪れる機会があったなら、この烤羊肉串はいけると思う。

チャンさんは丁丁炒面を食べている。
麺といっても、粒々のようになって具と混ざり合っている。
日本のように長く伸びたものだけが麺ではないのだ。
私も少しもらった。この丁丁炒面によってチャンさんはこのあと辛い思いをするのだが、本人はもちろん私たちもまだそれを知らない。

お店を出て、ゆっくり歩きながらホテルへと戻っていく。
フェイフェイと二人おしゃべりしながら、気づくと発音レッスンになっていた。

発音が下手なことは自分がよくわかっているが、言い訳すれば「どうしようもない」のだ。
開き直って言えば、私にはネイティブに近づこうとか試験を受けようとかそういう野望は一切ない。
むしろ、いかにもな外国人の方がみんな面倒をみてくれるので、それを狙っているという場合もある。
それではダメなんだけど。

この発音はダメだな~とか、どうやってもうまくできないな~というのがある。
けど、これは比較的いけるでしょ、というのもまたある。
今回フェイフェイに「ダメ」と判を押されたのは、意外なことに前者ではなく後者だった。
けれど、実はこちらの方がやっかいだった。
OKだと思っている発音を改善するのに、どうしていいのかわからないのだ。
フェイフェイは厳しかった。
「ダメ、それダメ」
「ほとんどOK」
「そう、それ!」
「またダメになった、違う」
努力ができず根性がない私は、これはもう私の口の中の構造に問題があるに違いない、と思い始めた。
口の中の構造の問題であるならば、仕方ない。

「マーヨーズの先生は、きっと発音の練習をそんなにしなかったんだね」 フェイフェイは言った。
それは確かにそうだったが、私の低い能力がそのままQ先生の評価に繋がってしまうのはたいへん遺憾だ。申し訳ない。
Q先生はいつも私のやりたいこと、知りたいことに合わせてくれるのだ。
語学の向上に関係ない話でレッスンが終わることもある。
私にとってQ先生は単に語学を教わるだけの存在ではないのだ。
またお互いに時間がなかなか取れない為、授業もそう頻繁にあるわけではない。お互いの中国行きが重なりまったく合わない月もある。
怠惰な私は自主勉強もほとんどしない。忙しいという理由がいつも用意されている。
つまりこれは先生の教え方ではなく、私の意欲の問題(と、口の中の構造の問題)なのだ。
もし私が、「発音を完璧にしたい」と言ったならば、先生はとことん付き合ってくれるはずだからだ。

フェイフェイは言った。
「私が小さい頃に中国語を勉強した時、発音だけで1年はやったよ」
5年学習したうちの、1年は発音だったのだという。
先ほど、ロシア教会で彼女が漢族ではなく蒙古族だということを知った。
「私のお母さんは中国語の先生だったんだよ。だから学習しやすかった」
なんでも訊けたし、正しい中国語を学べたから。
なるほど。
彼女がなぜ私に対して妥協した態度をとらないのかがわかった。
きちんと学習することの大事さと、またそうした自分の経験があったからだ。

彼女はなかなかOKをくれなかったが、美しいウイグル住居の街並みの中、ゆっくりおしゃべりしながら歩くのはとても楽しかった。
気づけば、旦那のチャンさんはずっと向こうを一人で歩いている。
時々立ち止まっては、振り返って私たちを少し待ち、また待ちきれずに先を進んだ。


ホテルに戻って。
「じゃあ、私たちはこれからコルガスまで向かうけど、マーヨーズはこのあとどういう予定?」
午後にルオさんというロンさんの友達と落ち合い、その後一緒に新源に向かう。
けれど、彼とまだ具体的な連絡がとれていなかった。
適当にイーニンで遊んで、彼を待とう。
「私の携帯を貸してあげるよ」
地図アプリを使って現在地と旅程のルートが見れるから、と言う。
落としたりとかなくしたりとかが怖いので固辞するも、「いいよ、いいよ」と譲らない。
旦那の携帯があるから私は困らない、と言う。
そういう訳で彼女のスマホを借り受けた。

「もしトラブルに遭ったら、私の携帯を使って110番するんだよ」
マーヨーズの携帯じゃないよ、私のでね。
フェイフェイは念を押すように何度もそう繰り返し、さらには紙に、「困难→危险」、「110→说救命」と書いて見せた。
「わかった?」
「うん、わかった」
「ほんとに?」
「ほんと」
まるで子供のようだが、私は彼らの立場をわかっていない。
外国人である私が、女性一人でここにいる。
場所は国境手前、治安はいいとは言えない地域。
私はお気楽なものだが、何かがあって自分はよくても一番に迷惑をかけてしまうのは彼らだ。
「じゃあ、また明日ね!」
フェイフェイ夫妻とホテル前の大通りで別れた。
明日の夜、私も国境・コルガスへ追いかける予定だ。

時刻は15時。思いもかけず、一人予定のない時間ができた。
どうしようかな~としばらく考えて、行くところもないのであてのない散歩に出かけることに。
清真寺をいくつ見つけることができるだろう。

16050118.jpg

結婚式をなんどか見つけた。
車に飾られた赤い花は中国共通だ。
奥は多くの人で賑わっていた。新郎新婦を見ることができなかったのが残念。
先ほどの工人街でも、あるレストランで結婚式が行われていた。
中には頭にスカーフを被った女性がたくさんで、あれはウイグルの結婚式のようだった。

16050119.jpg

考えずに曲がって曲がってを繰り返していると、清真寺。
ちょうど中からムスリムたちがまとまって出てきた。
清真寺は女性禁忌なので、少し慌てる。
中に侵入したわけではないが、ここは観光客も通らないような地元の清真寺だったため、カメラを向けて大丈夫かどうかわからない。
新疆ウイグル自治区自体、私のような外国人は珍しいようでどこに言っても注目されてしまう。
このような道でカメラをパシャパシャしているだけで、浮いた人間なのだ。
昨晩ご飯を食べに行く時、
「観光客だとひと目でわかってしまう。カメラはしまって」
と言われたのを思い出す。
美しい清真寺の門前では、あの紅棗干を山にした物売りがいた。

遠く向こうに、スライムの形が見えた。金色のスライムだ。
スライム型と言えば、清真寺に違いない。
そう思ってあちらを目指していく。

16050120.jpg

行ってみると、それは教会だった。
教会は今日ひとつ訪れたばかりだ。
見るとやっぱりロシア教会とは面持ちが違う。
イスラムの地である新疆で教会を見たのは今日が初めてで不思議な気分。
トルコ方面から、ロシアから、場所を考えれば教会があることはなんの不思議もないどころか自然なことかも知れなかった。

昨日のイチゴを食べてしまわないと傷んでしまう。
そう思って休憩も兼ねて座ってひたすら食べる。
背中のザックに入れていたものだが、やはりすでにいくつかはジャムのようになっている。

そうしていると、ルオさんから微信が入った。
「娘の列車が遅延して到着が9時になってしまう。新源に向かうのはその後だよ」
どうやら娘さんも同行して新源に向かうようだったが、夜の9時では新源に着くのはいったい何時になるんだろう。
今日も少し新源を観光したいなと思っていた私は残念な気持ちになった。
「もし良かったらイリ河へ一緒にいこうか?付き合うよ」
そう言ってくれた。
今、解放軍病院の付近にいると現在地を告げ、
「ウイグルの工芸品を買いに行きたいんだけど」 と言ってみた。
「それなら、汉人街に行くといいよ。タクシーに言えばすぐわかるから」
そう教えてくれた。
ということで、ルオさんから再び連絡が来るまで、汉人街に行くことに。

タクシーを捕まえてみると、運転手さんはウイグル人のようだった。
中国語を話すがウイグル訛りがあり、また電話でウイグル語を話していた。
旅行で日本から来たというと、驚く。

16050121.jpg

目の前に家畜を載せた車が行く。
思わず写真を撮ると、運転手さんは笑っている。
どうしてこんなものを面白がるのか、きっとわからないだろうな。

汉人街は近かった。
車を降りると、むせそうになるくらいウイグル族で溢れていた。すごい人だ。
ここはウイグルが集まる場所のようだ。
汉人=漢人、ウイグル族のたまり場にこのような名前が付いていることは違和感がある。

そして何より驚いたのは公安の数。
新疆に来れば公安や武装警察の数は他の地の比ではない。
けど、狭い範囲にどかんどかんと公安の建物が並んでいるのはどう見ても異質だった。
目の前の交差点に、公安の建物が4つ。 
間隔は20m程しか開いていなかったと思う。
もしかしたら見えていないところにもっとあったかも知れない。
そして一つひとつがけっこうな大きさで、その建物の横には大きな銃を構えた武装警官が数人待機している。それぞれにだ。
「近づくな」
脅しのような文言が並んでいる。
多くの人々が行き交い、市場では賑やかな声がとぶ。
男性はウイグルの帽子を頭にかぶり、女性は美しいスカーフを頭や顔に巻いている。
この賑わいの風景の中に、「公安」の文字を掲げた白い建物がどかんどかん、それから完全無敵の様相の武装警官は、どう見ても不釣り合いだった。
この街の現状を見たようだったが、私もまさかここで写真を撮ろうなんてそんな馬鹿な真似はできない。
ふと脇を見ると、ウイグルの男性数人と公安が揉めていた。

16050122.jpg

交差点を渡ると、色んな物売りが台車を並べ、お店が軒を連ねていた。
公安の存在さえ忘れれば、活気で溢れた明るい風景だ。

16050123.jpg

こちらはケーキ。
今日は昨日とは打って変って初夏のような気候。
そんな暑さの中、屋根もないところでこれらは売られ、美しいスカーフを被った女性たちが次々と足を止めていく。
見た目の派手さも目を惹くが、こんな暑さで品質は大丈夫かそちらの方が気になってしまう。

進んで行くとアーケードのようなものがあり、日陰を求め入っていった。

16050124.jpg

このアーケードは主に香辛料や漢方類を売るお店が並んでいるよう。

16050128.jpg

おどろおどろしいものが麻袋に入れられ、瓶に詰められ、そして天井に並んで干されている。
何かといえば、蛇、サソリ、トカゲ、そんなラインナップだ。
まるで魔女の市場のよう。
どんな効力があるのか知りたいところだが、かと言って服用する勇気はない。
蛇はとぐろを巻いた状態で、大トカゲはそのまんまの姿で乾燥していたが、各々これを購入して自宅でどのように使うのか想像できなかった。

16050125.jpg

こちらは麻袋に詰められた香辛料。
二日目ウルムチの市場で見た枸杞(クコ)も見られる。

アーケードを進んで行き奥に抜けると、その先にまたアーケードがありそちらは食べ物を売るお店が並んでいるようだった。
食べ物はいいかなと、戻ろうとすると、その手前にはリヤカーの物売りがいて目を惹いた。

16050126.jpg

簡易なイスラミックカリグラフィーを売るリヤカーでした。
イスラム教を信仰する場所では、ありとあらゆるところにこれをみることができる。
スカーフを被った女性がひとつ買って行く。
それがいいな~と思ったのだけれど、同じものはないようで。
「これなんかいいよ」
物売りのおじさんは次々見せてくれる。

意外なことに、今まで新疆旅行は一人になることがほとんどなかった為、こうしたやり取りが新鮮だった。
本来は中国語ではない場所、中国語をぺらぺら話せる人もいれば最低限のレベルで話せる人もいる。
アラビア文字だけだとお手上げでなんにもできないけれど、中国語が手助けしてくれる。
私にとって、この地域は“中国語が使える中国以外の外国”のようだなと思う。
手軽、ではないけれど、中国を旅行しながら中国以外の国を旅している気分を仮想体験できる、そんな感覚にも近いような気がした。そしてこの仮想体験は、矛盾した表現だけれど作りものではなく本物なのだ。
これは私が新疆に魅せられている理由の一つでもある。

16050127.jpg

購入したのはこちら。これで5元だ。
光に反射してきらきら輝く清真寺に小さなイスラミックカリグラフィ。
イスラム教は偶像崇拝を禁忌とし、絵画類も同様とした。
その為、文字の芸術が発展したのだ。
イスラムの建築物に幾何学的デザインが美しいのもそう。
スカーフや服装が華やかでもいいように、髪さえ覆えば顔は露出してもいいように、場所が変われば厳格さも変わる。
これもその一例だろうか。


クリックしていただけると励みになります☆
↓↓↓
にほんブログ村 旅行ブログ 中国旅行(チャイナ)へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

いつもじっくり読ませていただいてます。
公安の件は報道などで聞いてましたが、まさかこんなに監視されているとは思いませんでした。これでは犯罪者扱いですね。ひどいです。
バザールの写真、もっと見たかったですが、こう公安が多いと、なかなか難しいようですね。
それはそれとしてですが、スマホのアプリとウイグル人バサール、なんか時代のずれを起こしそうな感覚なんですけど、古いのと最新のが混ざり合いながら生きていくのは、中国ならではだと思います。逆に自分が必要と感じない物はあえて使わない生活をしていると、アジア諸国に置いて行かれそうになりますね。

Re:

周辺諸国に囲まれた場所に位置する新疆ウイグル自治区が内地よりも厳重なのはわかりますが、汉人街の公安の様子は「監視対象はウイグル族」だとはっきり示しているようで異様な感覚がしました。
いいこともよくないことも、この地の現状を見たまま感じたまま旅行記に残したいのですが、様々な理由からそうできない時があり残念なこともあります。

中国人は新しいもの好きだなと思います。
それに順応力もあるなと思います。
中国の方がスマホ普及速度は早かったのではなんて感じています。中国人と交流していると、本当に自分は置いて行かれてるなとつくずく感じます。
新疆のウイグル料理店なんかでメニューがタブレットで出てくるんですよ。そんなのもカルチャーショックでした。
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
クリックしていただけると励みになります↲