2016-05-22

伊寧旅行五日目~新源・中編~

イーニン旅行を決定したあと、ロンさんが私に提案した。
あそこには新疆でもっとも古い酒厂(酒工場)がある。
マーヨーズはお酒が好きだから行くといい。
その酒工場はどうやら新源にあるよう。行くと答えるに決まっていた。

中国の酒、といって日本人の多くは紹興酒を思い浮かべるのではないかと思う。
中華料理店などにも置いてあることが多いからだ。
紹興酒は、上海近くの紹興で造られるためそういう名を持つ。
酒の種類としては、「黄酒」。中国を代表する醸造酒だ。
紹興酒以外にもさまざまな黄酒がある。
この黄酒、熟成期間が長ければ長いほどおいしくなりまた高級になるので、「老酒」とも呼ばれる。
私はこれが好きではない。
飲んだ紹興酒が安いものだったからだとも言われるが、そうだとしても好きではない。

一方、もうひとつ中国を代表する「白酒」の方は、日本人にはあまりなじみがない。
出合う機会が少ないからだろう・
白酒は中国の伝統的な蒸留酒だ。
黄酒の度数が10数度なのに対して、白酒の度数は50度前後。
ジンやウォッカのように、この白酒は何かで割って飲むものではない。
小さなグラスになみなみ注ぎ、一気に飲み干すのだ。
そういった飲み方は日本人には馴染まないため、広まらないというのもあるかも知れない。

白酒の歴史は、酒の歴史から見ればそう古くはない。
中国に蒸留酒が登場したのは元代だと言われている。
しかし、黄酒が紳士と呼ばれたのに対し、この白酒は“ごろつき”と呼ばれイメージの良いものではなかった。
盛んに造られるようになったのは近代になってからだ。
それが今では庶民から政府高官までが愛好し、中国人の生活においてなくてはならない存在になった。

これから行く酒工場は、その白酒を新疆でもっとも早く造りだした場所だ。
向かうのは肖尔布拉克镇。

田舎風景を進んで行くと、ルオさんは道の途中で車を停めた。
元気な女性が乗り込んでくる。
私と挨拶を交すと、
「彼女は日本人で旅行で来たんだよ、あまり聞き取れないから」 とルオさんが説明した。
「あ、ごめんね」
そういいつつ、あれは胡桃の木だよとか、あれは**河だよとか、気を配ってくれた。
最初は彼女が誰かわからなかったが、これから訪れる酒工場の“品酒師”(利き酒師)なのだそう。
さっき、北京から戻ってきて着いたばかりなんだよ~と言っていた。

4人で、酒工場のある肖尔布拉克镇 に到着した。
あたりは長閑な田舎風景で、自然に囲まれた落ち着いた場所だ。
さっそく敷地に入るべく入場門へ行くと従業員たちがこちらを見て表情を変えた。
「さっき北京から戻って来たんだよ」
「わーおかえり!」
本来はここで入場チケットを購入する。
私の場合はロンさんが予め買っておいてくれた、と思う。

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歩道の踏み石にはどこもかしこも「酒」の字。
中国の歴史上、かつて様々な字が存在し、漢字も様々な字体が存在するが、ここにはあらゆる「酒」。
しかし写真のデータ量を落としたらよく見えなくなってしまった。

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こちらは「西域第一泉」。
やはり、酒造りは水がきれいなことろに限る。
と覗いてみると、濁った水に枯れ葉が浮いていた。
「今は使われていないよ」 という品酒師さんの言葉に安堵。

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酒工場と聞いて想像していたのと全然違うので戸惑う。
もっと彩りのない場所だと思っていたら。

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様々な果樹が植えられ植物もたくさん。
その一つひとつを**だよ、と教えてくれる。
その緑の中にはたくさんの酒壺。
飾りではなくて一つひとつに本当に白酒がなみなみ入っている。

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こちらはウイグルの市場で度々目にした、枸杞(クコ)。
こんなに愛らしい花だとは知らなかった。

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こちらは杏。
先ほどの杏花沟の杏はすっかり緑だったが、その一本一本にはこうした実がなっているんだろう。
酸っぱいあの味を思い出す。
品酒師さんはそうした一つひとつの植物に立ち止まっては、それが満開だった頃の写真をスマホで見せてくれた。
美味しいお酒の秘訣はもしかしたらこういうところにもあるのかも知れない。

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敷地を奥に進んで行くと、工場があった。

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入っていくのはこちら。
「においがすごいからね」 と品酒師さんは注意を促した。

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内部はすごい湿気とにおいだった。
むせかえるよう。
そのにおいを説明する言葉を持たないが、これは高粱(コーリャン)のにおいだ。
そこに山になっているのは、コーリャンだ。
カメラがすぐに曇ってしまうので、写真がぜんぜん撮れない。

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こちらは金属製の器にコーリャンが入っているのだが、どの工程かわからない。


白酒の醸造過程は、穀物に発酵を促す曲(麹)を加え、発酵が一定の程度に達し穀物中の糖分がアルコールに転化したのちに、濾過し蒸留する、というものだ。

曲(麹)にも大曲(麦由来)と小曲(米由来)、麸曲(ふすま麹)があり、もっとも良いのは大曲。
大曲は発酵時間が長く、菌糸が長く微生物の量も豊富なのだそう。

原料である穀物(コーリャン)を蒸したのち、曲(麹)を加え発酵させると固体のままアルコールを含んだもろみとなる。
この製法を「純粮固態発酵法」という。
白酒には他に液態法、固液法と呼ばれるやり方もあるそうだが、伝統的製法に基づいたものはこの固態法だ。

また原料も、コーリャン以外の穀物で造る場合もある。
1960年~63年、中ソ国交断絶、自然災害による飢饉など、中国は深刻な事態に陥っていた。
それにより周恩来総理は、コーリャンでなくもっと安価な原料を使い、安いコストで白酒を造るよう専門部門に指示を出した。
その結果、白酒の製法も多岐に発展したのだそう。
しかし、やはりもっとも品質がいいのはコーリャンを使ったものだ。

「粮为酒本、曲为酒骨」  穀物は酒の根本であり、曲(麹)は酒の骨格だ
こういう言葉がある。
つまり、もっとも品質の良い白酒の条件というのは、
「大曲、固態法、コーリャン」
この三拍子ということになる。

ロンさんが旅行前に白酒の製法について書かれたものを見せてくれた。
私は予習してきたのだ。
しかし、湿気とにおいと何やらで、その予習を現場で活かすことはあまりできなかった。
しかし少なくとも、ここでは間違いなくコーリャンを使っているということはわかった。

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今日、この建物内で作業をしているのは二人だった。
コーリャンを地面に山にしている。
私たちは土足でこの中を歩いている。
日本の厳格な工場とは対照的だが、不思議と抵抗がなかった。

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このようにところどころ、山になっている。
これは曲(麹)を加えたコーリャンに土をかぶせ発酵させているところだ。
品酒師さんが白くカビが生えたように見えるところを指さして、
「これは微生物だよ」 と教えてくれた。

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壁際にはたくさんの酒壺が並んでいる。

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その一つ。
容量は5Lで、度数は52度、製造は2012年、さらには価格は1400元と書かれている。
あとは、風味や香りの特徴が書かれているが、中国語が未熟な私には少し難しい。
白酒は香りを重要視する。命と言っても差し支えないだろう。
おそらく香りについて主に表現したものと思われる。

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こちらはもう一つ。
容量は10L、度数は50度、価格はなんと9000元だ。


白酒は香型により分類される。
複数あるが、二つあげるとすれば、「酱香型」と「浓香型」、この二つだ。

酱香型で有名なのは、茅台酒。現在、もっとも高級な白酒とされる。
この二つの型、実は私はあまり違いがわかっていない。
香りが違うのだが、私にはそれがよくわからないのだ。

正統な酱香型は、生産工程が多く製造に時間がかかる。
一方、浓香型は、工程も少なく1ヶ月程でできるのだそう。
香りによる分類分けなので一概にいっていいのかわからないが、酱香型の方が伝統的白酒の製法に基づき、浓香型はその次のランクのような、そんな印象を持った。
酱香型と他の香型との区別がどういった点にあるのかわかっている人は、酱香型しか口にしないのだそう。
つまり、それは「大曲、固態法、コーリャン」だ。

実際には、この白酒の販売においての国家基準は非常に甘く、粗悪なものが良質なものと同様の基準で販売され、消費者はそれを表示から知ることができないのだとか。
中国には白酒を愛好する人がたくさんいるが、粗悪なものを良質なものだと思い楽しんでいる人も多い。

この酒工場には、浓香型しかないと聞いていた。
しかしここに並ぶ壺を見ていると、確かにほとんどが浓香型だったが、どうやら酱香型もあるようだった。

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隅にはこのようにたくさんの壺。壺はみな景徳鎮のようだ。

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見てみると、こんなふうに子供の写真や、誕生を祝うカードなどがかかっている。
「これ何?」 そう訊いてみると、
子供の誕生を祝って造られた酒なのだそう。
それにしても、ひと壺すごい量の白酒だ。金額もその分すごい。
「ここに置いてあって、いつこんなに飲むの?」
「例えば、子供が結婚するときとかね」
それまでここで保管するとなると、20年とかそれ以上?
無事に結婚してくれればいいが、もしそうでなかったら残念なことになってしまう。



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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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