2016-07-26

秦皇島旅行二日目~その二~

階段を下りていくと、すぐに海が見えてきた。
目の前には巨大な像。
海に向かい祈りを捧げている。

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シルエットしか見えなくても、始皇帝以外ありえないからそうだとわかる。
近くには、願い事が書き込まれた赤い木札がびっしりと掛けられている。
始皇帝像の前には、「長寿箱」と書かれたお賽銭箱が。
不老不死は叶わなかったからせめて長寿というところか。
始皇帝に祈るより、目の前の海に願う方がまだご利益はありそうだけど。

始皇帝像の目の前はちょっとした広場になっていて、売店がふたつみっつ並んでいた。
日本の海辺でも見るような貝殻を並べて売るようなお土産屋さん。
きれいに磨かれた貝殻に、それらを使って作られた飾り物。
海鮮焼きを売るお店。
それからすぐ脇には縁日のような、輪投げと射的のお店。
標的は黄土色の軍服をきて泣きそうな顔をした情けない兵士のぬいぐるみ。
どう見ても日本兵だが、あまりに稚拙な作りで愛嬌すら感じられる。
景品はドラえもんやポケモンなどのぬいぐるみ。
偽物だけど日本のキャラクターではないか。
このへんの感覚が理解できないようなできるような。
そういえば昨晩、新疆の男の子から、「中国ではごく一部の地域を覗いてポケモンGOできないんだ」と嘆きの微信が送られてきたのを思い出した。

この広場の左右には砂浜が広がり、そこは海水浴場になっていた。

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遥か向こうまでびっしり海水浴客で埋まっている。
どうりで周辺に浮輪なんかを売るお店があったわけだ。
北京発秦皇島行きの列車は激込みだったし、乗客のほとんどは明らかに行楽客だったのだが、秦皇島の街自体はたいへん地味で、みんなどこに行ってしまったのかと思っていた。
この砂浜はもうすでに、秦皇求仙入海处の敷地外だ。始皇帝像を通り越したあたりで場外に出ている。
秦皇求仙入海处の敷地内はそんなにたくさんの観光客がいたというわけではなかった。
中国人観光客にとって、ここはあの有名な始皇帝が訪れた歴史の名所ではなく、楽しい海水浴場なのだった。
おのおのやりたい放題めいいっぱい楽しんでいる。
彼らの中で始皇帝のことなんて考えている人はおそらく一人もいまい。

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目の前にはまっすぐ海に突き出した道があった。
入場は2元。さっそく支払ってゲートをくぐる。

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一番先っぽにはこのようなお堂があり、海の女神さまが祀られていた。
周囲の海は穏やかだ。
天候は良くはなかったが雨は免れそうだ。わずかに青空も見えた。
観光客はみな海を覗き込んでいる。
私も一緒になって覗き込んでみると、小さな小さな小魚がたくさん散らばっていた。

中国はあまりにも広大だ。
8000m級の高峰をいくつも有し、死の海の別名を持つ果てしない砂漠を持ち、一年のほとんどが雨または曇天の湿潤な地方があり、その一方で水の恵みが命を意味するぱりぱりの乾燥地帯がある。
雪に埋もれる極寒地帯があり、雪なんか見たこともない冬でも暖かい地方がある。
魚といえば川魚しか指さない地方があれば、魚といえば海鮮をいう地方もある。

余談だけれど、以前Q先生に、「川魚か海の魚か訊ねたんだけど、相手になかなか伝わらなかった」と言ったら、
「中国ではあまりそういう聞き方はしないですね」 とのことだった。
川魚を食べる地方では海鮮は珍しいし、海鮮を食べる地方では川魚はあまり食べないから、川魚か海の魚かなんてその区別自体あまり考えないのだそう。

とにかくこれだけ中国という国土は広大で多彩なのだ。
日本は島国だから、海が身近でない内陸の地方だとしても、その感覚は中国の比ではない。
中国において、海が身近な地方は必然的に東側の沿岸部に限られるし、また内陸に暮らす人々にとって海は未知なるといってもいいほど縁遠い存在なのではないだろうか。

中国を旅行していて、巨大な河川や湖を見ることはあっても、海に出合うことはほとんどない。
今まで広がる大海に出合ったのは、福建省・厦門に、遼寧省・大連の旅行のとき。
私にとって、中国で出合う海の風景はとても特異で不思議な体験なのだ。

始皇帝が統治した秦はもともと僻地の国だった。
現在でいうと、陝西省・咸陽、つまり西安のあたり。
現在の感覚でも海は遠いのだから、飛行機も鉄路もない当時なら、文字通り未知の存在だっただろう。
始皇帝が海を初めてその目で見たときの感覚を、私は知る由もない。
しかし、不老不死を大海に求め、そして見境なくなっていく端緒となってしまったのもわからないでもないかも知れない。
始皇帝はやがて、探求の矛先を海外にまで向けた。
かの有名な徐福は、仙薬を求め日本に上陸したという記録があり、和歌山県新宮市はじめ各所に徐福由来の伝説が残る。
見境のない始皇帝から援助や報酬だけ受け取り日本へ向けて出向するも戻る気はなかった、そんな話も伝えられるが、私はやっぱり徐福は神秘的な方士で、仙薬を求め各地を周遊したのだと思いたい。

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そこらで釣り糸を垂れる人がいた。
なんだか平和な光景だが、魚が釣れている気配はまったくない。
釣り人のおじいさんは、何かを食べその包み紙を当たり前のように海に投げ捨てた。
これがなければな~。

突き当りはL字型に曲がっていて、遊覧船が二艘とまっていた。

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そこから振り返ると、先ほどの海水浴場が一望できた。
一面海水浴客でいっぱいだ。
遥か向こうには港湾のようなものが見えた。

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こちらは砂浜に戻ってきて。
すぐそばにはこのように灯台もある。
ぱっと見て、すがすがしい海の風景ではある。
しかしよく見ると、砂浜に打ち上がる波は怪しげな泡を湛えている。
やっぱりここは中国だ。

ここから海水浴客がごった返す方へ少し進んでみた。
さすが中国ですごいのは、こんな砂浜に遊園地にあるような遊具まで作られていることだ。
カラフルな海賊船が180度に大きく弧を描いている。
その手前には怪しげな箱もの。
「动感影院」 5Dとか6Dとか書かれている。
恐竜とかゾンビとかのメニューがあるようで、そんな世界が体感できるというものだが、6Dまで行くとどんなのかもわからない。
秦皇求仙入海处に入場する時4D映像を観賞できるチケットがあったが、せいぜいが4Dまでだろう。

まだ16時を過ぎたくらい。
秦皇島には他に楽しみにいくような場所が見つからなかった。
かと言って山海関に行くには時間がなく、市街地に戻るしかなさそうだ。
いったん敷地外に出てしまっているので、海水浴場から外側を通って先ほどの入場門まで戻ってきた。
リヤカータクシーのおじいさんとふたたび落ち合い、秦皇島の繁華街あたりまで戻ってもらうことに。

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こちらは付近の標識。
中国語に英語にロシア語に日本語。意外な組み合わせだ。
日本語の解説が併記されることはあるが、このような道路標識は珍しい。
だがそれよりもロシア語が意外だった。
一方で韓国語はない。
距離だけみたらに確かにロシアはそう遠くはないが、観光客がそう多いようにも思えない。
ただ、バスも通らず見るべきものも少ないこの秦皇求仙入海处がそれほど国際的にメジャーな観光地とも思えない。
「秦皇島の仙を求める海へ入るところ」
この不自然な日本語訳は、間違いなく翻訳ソフトだろう。
ただしくは、「秦の皇帝が仙(不老不死)を求めて海を望んだところ」になると思うのだけど。

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リヤカータクシーは大きく道を曲がった。
「秦皇島港」の文字。
港の施設だろうか。

市街地に戻り、繁華街付近で降ろしてもらう。

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まだまだ明るいとはいえ、日は西に傾いてきた。

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すぐ向かいには、意外にもこんな本格的なイスラム寺院があった。
中国には各地にイスラム寺院(清真寺)があるが、東から西に行くほどその様相は変化する。
甘粛省から以西にはイスラム色の濃いモスクを見ることができるが、一方東へ行くほど中国色が濃くなる。
西安の清真大寺に見るように、中国建築のものが多い。
だから、まさかこんな東の端にこのようなイスラム色の濃いモスクを見るとは思わなかった。
中国色の濃いイスラム寺院は女性でも敷地内になら入れることが多い。
しかし中国西域のモスクは、イスラム教の規律が中東に比べ緩いとはいえ、礼拝堂はもちろん女性が敷地内に入ることは絶対タブーだ。
ここはどうだろう。
好奇心に揺らぎながらも、あきらめた。

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秦皇島市街中心部には、「太阳城」と名付けられた繁華街があった。
賑やかな一本の道ではなく、けっこう広めのエリアを囲むようにして、このように太阳城の名を掲げたアーケードが建てられている。

歩き回ってみると、いくつかの商業ビルが並び、こんな広場もあった。

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一瞬変な感覚になって目を疑いそうになるが、階段を下りた広場には地面に絵が描かれているのだ。
子供たちが賑やかに遊んでいる。

小吃街もあった。
今日はお昼を食べていないのでおなかが空いていたけれど、今食べてしまうと夕ご飯が入らなそう。
そんなわけで、迷った末に土豆饼というのを選んでみた。

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細かく千切りにしたジャガイモを、揚がるくらい油がなみなみとした鉄板の上で四角く焼いていく。
これを手のひら大の四角に切り分けて行き、甘辛いたれを塗った上にスパイスと唐辛子をかける。
一枚5元くらいで、「辛いのかける?」と都度訊いてくれる。

あちこち歩き回っていると、若者が集まるエリアから外れてひっそりとした商業区に出た。
どのお店にも、水产(水産)の文字。
やはりここは水産業が盛んなよう。
大きな市場の建物もあり、中に入ってみた。

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生きた魚介類だけでなく、日本ではおつまみとして身近な乾燥珍味がたくさん山になっている。
さきいか、あたりめ、貝柱、そんな感じの。
しかし、そのどれもに蝿がたかっている。
中国の市場ではそんなに不思議な光景ではないけれど、人へのお土産をここで買うのはためらわれて、「見てごらん」と勧めてくれる人たちに少し悪い気がした。
他にも肉類、野菜、調味料、干果なども売られていたが、ほとんどが水産乾物だった。

太阳城を出て、ホテル方面まで歩いて戻ることに。

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時刻は19時を迎えようとしていたが、まだまだこんなに明るい。
そのままホテルに戻り、フロントで発送した荷物の送り状や運賃の精算をして部屋で休んだ。

ふたたび夕ご飯探しに、先ほどとは違う方面へ歩いてみた。

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あちこちが賑やかで、裸電球の果物屋さんも。
マンゴーに桃に。
桃は大好きなので食べてみたかったけれど、滞在時間が短く叶わなかったのが残念。

どのお店も人で溢れ返っていた。
入ってみたお店はすでに一組のグループが順番待ちをしていた。
店員さんに「一人だけど席空いてない?」と訊いていると、話し中にも関わらず彼らは私に話しかけてくる。
「このカメラなんのメーカー?」
最初は聞き流していたが再三訊いてくるので、「OLYMPUS」 日本のだよ、と答えると、
「写真撮らせて」
と私のカメラの写真を撮り始めた。
私のオリンパスはもう数年前の型番になるが、けっこう中国人に気に入られることが多い。
デザインがいいのかも知れないし、中国ではオリンパスはあまり見ないのかも知れない。

私も順番待ちをして、無事料理を頼んだのは21時を過ぎていた。

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水餃子は肉と海鮮の二種があり、せっかくなので海鮮を選んでみた。
中身はたっぷりのにらと卵とエビでおいしい。
もうひとつの大皿は、大虾香锅。
大きくて香ばしいエビがごろごろ。それに大量の唐辛子。
辛いし全部はとても食べきれないので、エビだけ優先してピックアップしてひたすら食べる。
にんにくも何粒もまるごと入っていたので、これも選んでガリガリ食べる。
水餃子は15個もあるから、とてもじゃないけど食べきれなかった。
ビールはハルピンビール。
青島ビールも燕京ビールもなく、ハルピンビール。
ハルピンは中国東北部のロシア文化の影響を色濃く見ることができる都市。

ホテルに戻って、併設されている小さなコンビニに入ってみると、ここにも青島ビール等はなく、ハルピンビール。
それからロシアのビールが数種並んでいた。
ロシアの飲料なんかも見られる。
今日、道路標識にロシア語表記を見たのを思い出す。
街を歩いていてロシア人を見ることはなかった。
ロシアがそう遠くない位置にあるといえばあるが、どういう背景があるのかはわからない。

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購入したロシアビール。
すでに日付は変わっていた。


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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