2016-09-06

庫車旅行四日目~その一~

2016年8月14日、昨日朝にクチャに辿り着き、明日の夜にここを発つ。
相変わらず忙しないが、この中一日が一番の楽しみだった。

今日の予定はと言うと、遠出して大自然を満喫する。
クチャから北へ120㎞ほど移動する為、移動時間がほとんどだ。
これは私が提案したことではなく、ロンさんが計画してくれた。

10時半、ヌアーたちが私の部屋にやってきた。
ここで、旅費の話がでた。
車代とガイド代、これがいくらで、あとは食費や諸経費を加算する。
でも持ち金が足りないから先に400元先払いしてちょうだい、とのことだ。
「そんな高いの?」
ロンさんは、「お金は払ってもらうけどそんな多くないよ」と話していた。
実は旅行前、忙しいのと彼と連絡を取りにくかったのとで、具体的な金額を確認できていなかった。
適当に考えていた私は、金額を聞いて自分が思っていたのよりもずっと高くてびっくりした。
「でもこれは車代と人件費。それに食費とほかのお金加算するよ」
ヌアーは確認するように繰り返した。
食費ってちゃんとフェアにやってくれるのかな。
400元を渡しながら、そう思った。

すでに、彼らの仕事にはちょっとちょっと疑問や不満足が湧きつつあった。
しかし、ウイグル族についての理解が私にはないし、感覚の違い、常識の違いなんかは、ある程度は現地に合わせるべきと思っているので、それで納得していた。
例えば、中国の接客に笑顔がなくともぶっきらぼうであっても、特になんとも思わないように。
ヌアーたちの仕事は日本では仕事とは言えない。
時々私に気遣いを向けてくれたが、基本3人は3人で楽しんでおり、これではまるで3人の旅行に私が申し訳なく同行させてもらってるみたいではないか、なんて感じもした。
けれど、まぁそれはそれでもいいかと半分納得していた。
しかし、これだけの金額を取るならば話は別だった。
もし私が個人で雇った車ならば、金額にケチをつけるなり交渉するなり(できるかどうかは別として)するだろう。
しかし、ガイドとロンさんは連絡を取り合っているので、彼がいる以上不当なことはないと思われた。
ロンさんはウイグル族に少なからず不信感をもっているようだったし、それを考えても私が騙されるようなことを彼がするはずはなかった。
念のため、ロンさんに金額のことを伝え、自分が思っていたのよりだいぶ高いけど間違いないかメッセージを送った。
そうして金額のことを紙に書き、400元支払い済みと、ヌアーの目の前で明記した。

いよいよ出発となるわけだが、まずここへ寄った。
クチャの運送センターだ。クチャバスターミナルの横にあった。

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昨日の朝、コルラを発つ際にチャン・イーと会えず、彼女が私に渡したいものが受け取れなかった。
チャン・イーは運送便でそれを発送してくれ、すでに運送センターに到着していることが確認できていた。
それをまず、取りに来たのだ。
無事、荷物を受け取り車へ積む。

昨日も立ち寄った、街の出口にあるガソリンスタンドで。
時刻はすでに12時。

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イチジクの葉の木漏れ日の下には、スイカやハミ瓜がごろごろしている。
ここで卵を購入していよいよ出発。

途中までルートは昨日と同じだ。
激しい形を作り出した大地を見ながら、同じように盐水沟を通過する。

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あれは盐水沟隧道。
険しい表情を見せる山にきれいに穿たれた穴はなんだか不思議だった。
人間てすごい。
かつては困難を極めたこの難所も、これでなんの苦もない。
橋梁の下には、玄奘が通ったとされる枯れた川、盐水沟が通る。

昨日と同じく、ここで検問所を通過する。
意外に思ったのは、ここの公安と武装警察がみな漢人ではなくウイグル系だったこと。
漢人が少数民族を取り締まっている図のみを想像していたが、そうとも限らないようだ。
多くのウイグル族が身分証をスキャンして検問を受けている。
脇にはさらに細かく身体検査をする場所も。
そして、「ここは検問所、言動には注意してください」の文字。

クチャの街を出てから1時間ほど経過して、目を開けた。
寝不足と疲れでついうとうとしてしまっていた。
窓の外はすでに、昨日とは違う風景に変わっていた。
大きな川があり、その向こうには赤、オレンジ、肌色、さまざまな色相をもつ山というか塊が生えている。
「寝ちゃだめだよ、景色きれいだよ」
グリミルは隣りでそう言った。
目的地は120㎞先だと思っていたが、このドライブ自体すでに今日の目的のひとつのようだ。
しかし空に青空はなくなっていた。
「マーヨーズ、服もってる?向こうは雨が降っているよ」
ヌアーが言った。

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ここの景色がおもしろかったのは、川の風景だ。
新疆ウイグル自治区を旅行していてすでにいくつかの川と出合ったことがあったが、それは内地にみるようなたっぷりと水をたたえたものか、あるいは先ほどの盐水沟のように枯れたものだった。
今目の前に続いている川は、幾筋にも分かれまた合わさり、ひとつの川を形成していた。
その川筋の間には砂地があり、緑があり、なんだか日本に見るような河川に雰囲気が似ていた。
周りの山の風景と、その砂や土や岩の様相や色彩を除けば。
こんな遠く離れたところまできて、たびたび日本との違いに驚きながらも、突然見慣れたような感覚になったのは不思議だった。

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その川筋の合間に立って、鮎釣りをしているおじさんなんかがいそう。
けれどもちろん、そんな人はいるはずはない。

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これらの写真、実はそう離れていない場所を写したもの。
剣山のような尖った山から、台座のような平たい山まで。
本当にありとあらゆる形状を見せてくれる。
川の雰囲気は日本と似ているなと思ったものの、それを取り囲む山の様相は全然違う。

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どうしたらこういう形状になったんだろう。
大地の計り知れないパワーを見せつけられているかのよう。

激しく角度をつける地層は、なにもここまで傾かなくとも、なんて思ってしまうほど傾斜しながら大地にのめり込んでいた。
鋭い剣山は、天に向かって牙をむいているかのようだった。
深い皺を持った山肌は、今もまだその動きを止めずに変化し続けているように見えた。
燃えるような色合いは、さまざまな色相をもっていた。

「私はどうして、こんな遠いところまではるばるやって来るんだろう」
風を浴びながら、ふと考えた。
ここまで来るのはなかなか簡単ではない。
たくさんの旅費をかけ時間を用意し、それから労力も要る。
そこまでして、目にできたもの、手にできたもの、そうしたものは案外数としてはそう多くはないのかも知れない。
たった一瞬の夕日の為に何時間もドライブし、その時間を待つような。
たったひと塊の花を見るために、山を登るような。
そんなのにも似ているな、と思った。
人によっては、対価として釣り合わない労力だろう。
何時間も待った末、夕日が見れるとは限らない。
またその夕日を他の人も美しいと思うとは限らない。
けど、だからこその旅なのだと思った。

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道はまっすぐ向こうに続く。
その先に何があるかわからない。
何もないかも知れない。
けれど、道があるなら行ってみよう。

途中、川沿いにはいくつかの砕石工場を見た。
こんな風景も日本のそれと重なって懐かしいような気分になる。
ただ日本と違うのは、ここが大自然に囲まれた場所で辺りには一切の文明がないことだ。
一番近いクチャの街までも、もうすでに遠く離れていた。
そんな場所で働く人たちの為の、一つの宿舎を通り過ぎた。
その宿舎の向かいには数件の食堂、床屋さん、小さな商店。
この数件のお店が、ここに寄宿する人々の毎日だ。
ふと日本の高度成長期を思い浮かべた。

新疆ウイグル自治区は天然資源が豊富だ。
そのひとつが、鉱物資源。
中国がこの地を絶対に手放さない理由の一つだ。

車はいつの間にか川を離れ、山間に入り込んで行った。
V字に険しい岩山がそびえる間をくねくねと登って行く山道だ。

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山をどんどん登って行ったかと思うと、途中左手にちょっとした林があった。
そこで車を停め降りて行くと、他にも観光客が。
山の険しさを除けば、なんだか日本にもありそうな雰囲気だった。
林の向こうには小さな川が流れ、日本だったらこういうところでバーベキューをやるものだ。
燕が幾羽も飛び交っていた。人間に警戒心がないのか、すぐそばまで飛んでくる。
こんな場所にも燕がいるんだ。
その燕は薄い茶色をしていて、日本でよく見るのよりもふっくらしていた。
けれど飛び方と羽の形は間違いなく燕だった。

それにしても、涼しいを越して寒い。
「今、何度?」 訊いてみたら、
「15度」 とのこと。
クチャでは30数度だった。なんと20度をこして一気に15度。
すでに高度をかなり上げているとは思ったが、それとともにこの天候だった。
クチャ市街でも、日差しは熱いが日が陰れば即座に涼しくなった。

燃えるような色をした激しい岩山から、徐々に色彩に緑が加わってきた。

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この中に羊の群れが草を食んでいる。
時折、このように羊の群れを見かけた。
正面の道路を羊が塞ぎ、羊を追う犬がしんがりを務めている風景にも出合った。

正直、後部座席は残念だった。
私は後ろから身を乗り出して前方に広がる風景を覗くしかなかった。
助手席に座って写真を撮っているヌアーが羨ましく、どうしても前がいいと言えば代わってもらえたかもしれないが、運転手さんとカップルな様子に、そういう気も湧かない。
ここのドライブの醍醐味はなんといってもこのV字の渓谷だ。
これは正面を見るしかないため、時々ヌアーに頼んで前方の写真を代わりに撮ってもらったが、そのほとんどが写真の体を成していなくてどうしようもなかった。

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とはいえ、過ぎて行く風景はどれもほんとうに素晴らしかったのだ。
5月に訪れたイリ地方を思い出した。
クチャは、街を離れれば生命を阻む乾燥地帯だと思っていた。
こんな鮮やかな緑の風景に出合うとは思ってもみなかった。

遠く向こうに、一本の滝が流れ落ちているのが見えた。

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じぐざぐに滝と交わりながら、道路が上に続いている。
天山山脈の恵みの水。
この清らかな水は、先ほどえんえん見てきたあの川の流れとなり、やがてオアシス都市・クチャまで辿り着くんだろう。

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滝の上からは、今来た方面がよく見渡せた。
緑が広がり、小さなゲルを見つけた。

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ここはひとつの景観地のようで、車を停めて滝と写真を撮ったり風景を眺める人がたくさんいた。

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滝の周りにはおびただしいウイグル語の落書き。
こんなところまで来て落書き。
スプレー缶をわざわざ持ってきたのか、それともたまたまそんなものを持っていたのだろうか。

寒さもけっこうな寒さだけど、雨が降り出していた。
急いで車に乗り込み、進んで行く。

「このあと、小龙池と大龙池に行くよ」
クチャを北に120㎞行った天山の奥地には、“大・小龙池”(大・小龍池)があるのだという。
ロンさんが勧めてくれ、そこが今日の観光目的地のひとつだった。
大小龙池は、この滝からそう遠くはなかった。
進んで行くと、突然鮮やかできれいなエメラルドグリーンが目に飛び込んできたのでびっくりした。

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先に見えてきたのが、“小龙池”の方。
小さい湖だったが、あまりにも鮮やかだった。
湖の色は色濃く、けれども透き通っていて底の岩が見えた。宝石のようだった。
すごくきれいだったのに、スピードを緩めることなく車は通り過ぎてしまう。
車を停めるスペースもあったのに。
「写真撮りたい」 そう言うと、
「まだ先があるから」 とあっという間に通り過ぎた。
予期していなかったこともあり、本当に感動した。

この小龙池を通り越してすぐ先には、大龙池がたしかにあった。
大きさは比較にならないほど広い。

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カーブを描く道路の先に見えた。

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後ろからは馬に乗る人。
イリの風景を思い出す。
緑が豊かな山の景色には、どうしてこうも馬が合うのだろう。

大龙池が見えてすぐ、車を停めて下まで歩かせてもらった。

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ここの風景もなかなかだった。
しかし私の感想、小龙池とは比較にならない。
先ほどのあの宝石のような透き通ったグリーンはここにはない。
水質の関係かも知れないし、湖の深さの問題かも知れない。
残念だったのは、周辺と水辺がゴミで汚れていたことだ。
そうことも含め、先ほどの小龙池には及ばず、そのまま通り過ぎてしまったことが悔やまれた。

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振り向けば、私たちが車を停めた道路。
岩山に張り付いた緑が、生命力の強さを見せているよう。

この大龙池、まだまだ向こうに続いている。
しかし、車はここで渋滞してしまった。

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どうやら向こうで事故か何かがあったよう。
これでは夜になってもここから抜け出せないのではなんて心配をしたが、だいぶ待った後、交通整備のおじさんにより一般車両のみ反対車線の通行許可が出て先を進むことができた。
トラックなどはそのまま渋滞でかわいそう。

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その先を行くと、大龙池は様相を変えた。
深々とした湖ではなくて、湿原のような雰囲気に。
小さく小さく、その浅い緑の中で草を食む馬が点になって見えた。

この“大小龙池”、天山の奥地に並ぶ大小の美しい湖。
玄奘の大唐西域記にもそれについて記されている。
城内には水がなく、ある女性がこの池に水を汲み採りにやって来た。
すると湖の中に潜んでいた龍が人間に姿を変え、現れた。
この女性は龍の子供を産んだ。
龍人といえるその子供はたいへん力を持ち勇ましく、王の言うことを聞かないほどだった。
しかし突厥人に城内を襲われ、やがて人は絶え、その国も荒廃した。

こういう伝説は日本にも多々ある。
人間と異種あるいは神性を持つものとの婚姻だ。
けれど、こうした神秘的な場所にくると本当にそういう伝説がよく似合う。
なにか本当に人間の知らない存在があってもおかしくない、そんな風に感じる。

この神秘的な大龙池も観光地で、奥まで行くといくつかお店が並んでいた。
すでに時刻は15時半。
ここでお昼を食べることに。

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「何が食べたい?」
といくつかの料理を訊かれた。
その中に私が大好きな新疆料理「过油肉拌面」は入っていなかったが、お店の人やお客が会話するウイグル語の中に「ラグマン」という言葉がなんどか繰り返されるのを聞き逃していなかった。
ラグマンとは中国語名・过油肉拌面の現地の呼び名。
「过油肉拌面はある?」
と訊いてみると、「ある」とのことで、それをお願いした。

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ラグマン(过油肉拌面)は、トマトベースのソースに羊肉や野菜を炒めたものを、太麺にかけたもの。
こうして別々に出てきた場合は、豪快に麺にかけて混ぜて食べるのが美味しい。
新疆の美味しいところをとって集めたみたいな料理だ。
私はこれが大好きなのだ。

初めて新疆を訪れたとき、「ラグマン」と言ってもみんなそれがわからなかった。
発音がおかしいと言うよりも、漢族のみんなは中国語の言い方しか使わないから通じなかったんだと思う。
ヌアーたちにこのラグマンの発音を訊いてみた。
ラグ_マ ̄ン
“マ”にアクセントが付く、こんなイントネーションだったかと思う。
ウイグル語は数字もわからない私だけど、いつか簡単な言葉だけでも覚えてみようかな。

食事は美味しかった。
しかし、食べ終わってお会計の時。
お店のおばちゃんが金額を伝えても、3人は無反応でヌアーも払うそぶりをみせない。黙って座っている。
(…なにこの雰囲気?)
そう思って、ヌアーに訊いてみると、
「マーヨーズ、68元。早く払って」
ヌアーが真顔で短くそっけなく言った。
「あとで加算してあなたに支払うんじゃないの?」
「68元。払って」
有無を言わせない命令のような強気な態度だった。
みんなの分も支払いながら、ちょっとした不満や不安が重なっていた私は、ここでさらに不信感をつのらせた。
持ち金が少ないにしても、今朝支払った先払いの400元はなんだったんだ?
私が立て替えるのはかまわない。
けれども、それならそうで先にきちんと説明してくれてもいい。
なんの説明もなしに、強気な態度で「68元、早く払って」 それはないだろう。
言い方だって他の言い方、態度があるだろう。
釈然としない気分でお金を支払うと、
「行くよ」
ここを去ることになった。



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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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