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2018-06-03

烏魯木斉旅行三日目

2018年5月20日、朝9時に携帯が鳴った。
寝不足が続いたうえに昨日は眠ったのが朝4時を過ぎていて、着信には気づいたけれど出ることができなかった。
するとまた着信が。
おかしいな…昨日ロンさんとは11時出発だという話だったのに。
新疆ウイグル自治区は西域にあるために、北京を基準とした標準時間よりも二時間、地域によってはそれよりももっと時間感覚が遅い。
だから11時出発でも遅いというわけではないのだ。
着信にでれないでいると、今度は部屋の固定電話が鳴った。
これにはさすがに出ると、フロントが
「フロントで待っていてくれますよ」と。
どうしよう、まだ起きてもいない。
ということで急いで電話をくれたリュウさんに電話をし、
「時間、勘違いしていた!したくするまで待っていて!」と伝えた。

今日はリュウさんの運転で、蒙古族の牧場地帯まで行く。
そこで私は数日、蒙古族のお宅に滞在させてもらうのだ。
日数は決まっていなかった。
「帰りたくなったら帰ってくればいい」
そうロンさんは話していてくれた。
本当はカザフ国境手前のイリ地方に行こうとしていたけれど、ラマダンの影響で警戒が強まっていて新疆ウイグル自治区のあらゆる地域が、外国人の立ち入りを禁止していた。
そして最後にあたってみたのがウルムチ郊外にある南山という地域だった。
近場にはなってしまったが、ここがダメだったらもう他はなかったようで、
「マーヨーズが来る直前最後にここが決まって安心したよ」
ロンさんはほっとしたように言った。
ありがたいことだった。

今日はロンさん、チャンイー、運転してくれるリュウさんは、一日付き合ってくれて私を彼らに紹介してくれる。
私を受け入れてくれる蒙古のお宅を紹介してくれたのが、昨日食事をしたロンさんの友達、蒙古族のカンツァイさんのようだ。

急いで支度をしてフロントに下りて、リュウさんと合流した。
外の天気はあまりよくない。
昨夜の雨が残りまだ地面は濡れていて、また気温も低かった。
こうしてリュウさんの運転でロンさんの部屋に行き、四人合流して出発することになった。

まず朝食に立ち寄った小さな食堂に売られていたのは、餡餅。
いくつかの種類があって選んだのは、青椒鶏蛋餡餅と胡辣湯。

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青椒鶏蛋餡餅は中にごろごろと青唐辛子と野菜が入っていて辛いけれどおいしい。
胡辣湯もまた具が盛りだくさんで、体によさそう。
おなかいっぱいになって出発した。

ウルムチの都会の風景を抜けてしばらく走ったところで、リュウさんがロンさんに話しかけた。
「***に行ってみるか?」
そこは近いようなので、ついでに立ち寄ることになった。

どうやらそれは、「亜州大陸地理中心」。
つまり、アジア大陸のちょうど真ん中にあたるところのよう。
ウルムチは、世界でもっとも海から遠い場所である。

途中で道がわからなくなり、荷車を運転する男の子を呼び止めて訊いた。
すると、現在は未開放のよう。
それでも入り口から見ることができるとのことで行ってみることにした。

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確かに入り口は閉鎖されていたが、門番がちょうど寝ていた。
「寝てるぞ!急いで、入ってしまおう!」
いたずらするようにロンさんがいい、未開放をしらないふりをして入ってしまった。

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こちらがアジア大陸の中心部。
しかしあと少し、というところで入り口から叫び声が聞こえた。
「入るな!」
「もう少しだったのに!」
慌てて戻る。

やがて雪をかぶった険しい山々が姿を現した。

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まさか雪が残っているなんて。
しかし気温はすでに冬の気温で、見てみると7度。

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向こうに見える二本の雪の筋は、スキー場なのだという。
「冬になればたくさんの観光客がくるんだよ」

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小さな村に着いた。
そこで、昨日食事をしたカンツァイさんと合流し、二台の車で向かった。
ここからしばらく車を進めたところに、天然の牧草地帯が広がる目的地があった。
「モンゴルゲルではなくて、民家に泊まるから安心しなさい」
ロンさんはそう言っていたが、ここには同じ外観をした建物が、自然地帯のなかにちょっと浮いたような感じになって建ち並んでいる。
このうちの一つが、私がお邪魔するお宅だった。

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ここはウルムチの南側に位置する牧草地帯で、「南山」と呼ばれるエリアだ。
地球の歩き方にも南山牧場というのが載っていて、その辺りではあるけれど、ここはツアーがあるような観光客向けの場所ではなく、純粋な遊牧地なのだそう。
板房溝八家戸村という場所になる。
「牧民の生活を体感してみなさい」
ロンさんが提案してくれたプランだ。
ロンさんの友人であるカンツァイさんが、このお宅を紹介してくれた。
「牧民」は、中国語の発音で“ムーミン”となる。
発音はあのアニメのムーミンとほぼ同じで、ムーミン、ムーミンと繰り返されて、その語感だけで楽しい気持ちになった。

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テーブルにはナッツが並べられ、それからパンと湯気をあげる奶茶(西域少数民族のミルクティー)があり、いただいた。
奶茶にはバターを入れて飲む。
新疆の奶茶はおいしくて大好物だ。新疆の各地で飲んだことがある。
一昨年に訪れたイリ地方のそれは本当においしくて感動したのを覚えている。
牛乳や羊乳を使うので、その質が味に反映される。
バターを加えるのは今回が初めてだったうえに、味が今までのとけっこう違う。
「場所によって味が違うの?」と訊くと、
「そうだよ」
茶葉を加える量が違うのだという。
カザフ族は茶葉をけっこう加えるが、蒙古族はあまり茶葉を加えるのを好まないのだという。
たしかに、茶葉の風味が全くしなくてさらに香辛料もあまり加えられていないみたい。
純粋にミルクの味である。

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ナッツとともに、白い塊が。
「奶疙瘩」
実は昨日すでに、ロンさんの部屋で口にしていた。
が、それともちょっと味が違う。
さらに一昨年イーニンでも口にしていたが、それとも少し違った。
「カザフ族のは酸味があるけど、蒙古族のには酸味がないの」
なるほど、確かにそう。
ちなみに、奶疙瘩とは乾燥ヨーグルトだ。
雰囲気としてはぱさぱさした味が薄いチーズみたいでもある。
奶茶ともに、牛、羊、どの乳を使うかでも味が異なる。

パンも奶茶も奶疙瘩も、そしてバターもみな、このお宅で育てた家畜のものから手作りしたものだ。

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地下室があり、見てきてごらんというので覗きにいくと、奥さんが鶏を一匹ぶつ切りにしているところだった。
これから私たちをもてなす食事を用意してくれるみたい。
「これもうちで育てた鶏なんだよ」

ロンさんがおしゃべりに花を咲かせているので、チャンイーとリュウさんと三人でちょっとその辺までドライブしてみることにした。

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ドライブから戻ってきてお昼ご飯はごちそうだった。
部屋にはチンギスハンの顔をデザインした布がかけられ、蒙古の民族衣装を着た家族写真に蒙古族のもの。

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大盘鶏は、先ほど作業していた鶏だ。頭から足までそのまままるごと入っている。
抓飯はウイグル族だけのものかと思っていたら、新疆の各民族でも作るよう。
新疆式ピラフだ。さっぱりしていて、ドライフルーツやニンジンなどをつかっているのが特徴。

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とりわけおいしかったのは手抓肉。
手づかみでかぶりつく、羊肉だ。骨についたお肉はやわらかくてほろりとはがれる。
味付けはしていない、純粋の肉の味だ。

「“ドウゾ”、は“请”の意味なんでしょう?」
「コンニチワ」
彼らは私に日本語の話題を振ってくれた。
日本語は話せるわけではないが、その“ドウゾ”などの発音はとてもきれい。
「蒙古はね、漢族よりも日本語を習得するのが早いんだ」
どうやら発音形態などから、学習しやすいのだという。
かれらは普段は蒙古語を話し、そして中国語も話せた。
奥さんのスーチンさんは漢字を書くことができたが、ご主人のニーマンさんは話せるが書けないのだという。
発音も蒙古のなまりがあり、中国語能力の低い私と彼らがコミュニケーションするのに、ロンさんらの中国語の翻訳がはいり、少し不安になった。


ごちそうを終え、ロンさんらはウルムチ市内に帰っていった。
部屋は二階の一室を使用させてもらうことに。

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周囲にはまったく同じ外観の建物が建ち並ぶが、一部には人が入るがそのほとんどが無人のよう。

みんなが帰っていって、寝不足続きで限界が来た私は、お借りした部屋で二時間ほど眠りに落ちてしまった。
起きて下に降りると、スーチンさんがご飯を出してくれた。

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ちぎった麺が入った麺料理だ。
私はこの系統が好きだけど、男の子のパトュパイ君は好きではないといって手をつけない。
「夜おなかすいちゃうよ」
そういうと、「大丈夫、リンゴとかそういうのを後で食べるだろうから」
スーチンさんはもう慣れているみたい。
このお宅には二人のお子さんがいて、女の子のツァイツクちゃんは15歳、男の子のパトゥパイ君は10歳なのだという。
学校はここから5㎞離れたところにあり、毎日送り迎えをしているのだそう。

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食事を終えて、スーチンさんと二人の子供とともに外に散歩に出かけてみた。
車に乗らないと小さな商店さえもない、静かな住宅地だ。
辺りには人の気配もないみたいだったが、
「こっちもこっちも人が暮らしていないけど、向こうの家には人がいるよ」
スーチンさんはそう言った。
こんな静かで人少ない場所に、それでも公安だけはあり、赤と青のランプが異様に思えた。
「公安は怖いよ」
私の数度の新疆旅行を通して今ある感覚だ。
テロや民族問題や治安よりも、それを警備する国家の方が、私にとっては怖く感じる。
検問も厳しく、悪か悪でないかではなく、彼らが問題があると判断するかどうかが問題になる場所だ。
私は犯罪者ではないが、内地ならともかく新疆では問題があると判断されれば何をされてもおかしくない。
去年のカシュガル旅行では、アトシュ郊外で検問にひっかかり大変な思いをした。
だから今日も検問でびびる私をロンさんは笑ったが、その話題が出て
「だから怖いんだよ」と言った私に対し、
「安全のためにあるものなんだから大丈夫」と言う。
その後の検問でも、
「この国は友好な国だから怖がらないで」
リュウさんもそう言うが、これらの治安組織は中国を守るためのものであって外国人である私は違うよ、と心の中で思った。
新疆が危険かとかそういう話題はつきないが、治安の方面での危険を挙げていうならば、私にとってはテロや民族問題、宗教問題よりも、それを治安する公安や特殊部隊の方がこわく感じてしまう。

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日が刻々と暮れていく。
日本では、こんなに広い空を見ることはない。
遠く遠く向こうには、ウルムチの街明かりがわずかに確認できた。
距離にして50㎞ほどである。

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部屋にもどりしばらくすると、ご主人のニーマンさんが帰宅した。
昼間はあんなにおとなしかったのに、なんだか別人のようにテンションが高い。
スーチンさんは苦い表情をした。
「お酒飲んできて酔っ払ってるよ」
どうやらバイクで帰ってきたらしいが、運転大丈夫だった?と心配になるほどお酒の匂いがプンプンしている。
その後、酔っ払い中国語を話せない状態になったニーマンさんの相手がたいへんだったこと。
スーチンさんはうんざりしたようす。
私も一杯だけ白酒をいただき、退散することにしたが、そのあともたいへんなのだった。

そして困ったことに、圏外だった。
持ち込んだ移動Wi-Fiは正常に動いていたが、電波がゼロ。どうしようもなくあきらめた。
スーニンさんにも訊いてみると、今日は天候の問題があるのではないかとのこと。
普段はそんなことないという。
みんなと連絡がとれなくなるのは困ったが、電話の方はできるみたいだったので、ネットが壊滅していることだけチャンイーに伝えた。


〈記 5月20日 ウルムチ八家戸村にて〉


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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