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2018-06-03

烏魯木斉旅行五日目

2018年5月22日、朝7時前に目が覚めて窓の外を見ると、もうすぐ日が昇りそうだった。

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ここで起きて日の出を見に行こうかと迷ったけれど、けっこう物音がひびいてしまうのでやめた。
そうしてまた眠ることにして目が覚めると、また11時。
眠ったのが遅いので睡眠時間はそうでもないのだけれど、寝ても眠気がとれない。
しかも乾燥がつらい。
顔は粉が吹いてかさかさでむくみ、目はひりひりでやっぱりむくみ、そして唇はリップクリームも塗っても色が変色してきた。
今まで新疆旅行でいつも乾燥に苦しんできたけれど、海抜の問題もあるのか、いつもよりきついみたい。

朝ご飯をいただいて、「今日は何したい?」ということになって、
「放羊をやってみたい」と答えてみた。
馬に乗って羊を草原に追い、草を食べさせるのだ。
みんなからもやらせてもらいな、と勧めてもらってその気になっていた。
ところが、「うちは羊は飼ってないんだよ」
昨日の話では、馬、羊、鶏を飼っているという話だと思ったのが、少し勘違いしていたようで、実際は羊ではなく牛を飼っているということだった。
牛はもっと離れた、昨日登った山の向こうで飼っているとのこと。
「羊は飼っていないから放羊はできないけど、馬に乗って羊を見にいこうか」
という話になった。
てっきり放羊に行っていると思っていたニーマンさんはではどこに行っているのかというと、今日は馬を売りに遠くに出かけているらしい。
昨日乗ったあの賢い馬を売りに行ってしまったのかと思って尋ねてみると、言うことを聞かない馬の方を売りに持って行って数日は戻らないだろう、とのことだった。

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ご飯を食べ終えて、再び家の裏の草原へ。
草原へそのまま飼い馬をつないである。
昨日脱走してしまった馬も、今日は無事おとなしく繋がれている。

乗らせてもらうのは、今日も人の言うことを聞くあの賢い馬。
それぞれの馬には名前はついていないようで、その代わり太ももにマークが刻印されている。

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馬にいろいろと準備をセットする。
頭にはベルトをかける。
「これが取れたらどうしようもなくなるから、大事」
スーチンさんは言った。

今日も天気はとてもよくて快晴。
けど昨日ほどの澄み切った青空はなく、うすく霞んでいるよう。

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一面にたんぽぽが咲いていて、鳥が飛びだしては舞った。
心から癒される。

昨日も今日もほぼ無風で、するとどうなるかというと、無音の世界だった。
風そよぐ音もせず。
耳がおかしくなりそうな錯覚がした。
普段の生活がいかに音に囲まれたものであるかを、知った。
静かな場所にも何かしら意識しない音があったのだということを知った。
見渡す限りの草原で、音を発するものといえば、時々鳴き声をあげる小鳥。
馬が地を踏みしめる音。
けれどそんなものも、この広さの中に飲み込まれてないも同然になった。

羊を探しに出てみたけれど、近くには見当たらなかった。
「おなかいっぱいになって家に戻っちゃったみたいだね」
スーチンさんは言った。
朝、草を食べに出て、おなかいっぱいになれば戻ってしまう。

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それでも草原を一回りして、十分に楽しませてもらって、また家の裏に戻ってきた。
そして馬に水をあげてお昼ご飯に。
お昼ご飯は麺。
おかずを自由にかけていただく。

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そうしてしばらく来客があったりして、出発したのは17時半。
「このあとはどうしたい?」とスーチンさんはそう訊き、
「おすすめの場所があったらそこがいい」
そう答えて、今度はバイクではなく車で出かけることになった。

その前に寄るところがあるみたい。
車はやがて古くて小さな村に入り、砂埃のなか、停まった。
あたりは土とレンガでできた古い家屋が点々とする。

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「ここは前に住んでいた昔の家なんだ」
「それじゃあここはスーチンさんの生まれたところ?」
「私はバインゴリン・モンゴルで生まれたから違うよ、旦那が生まれた場所だよ」
到着した日、チャンイーが、ウルムチよりもコルラの方が蒙古族が多いと話していたのを思い出した。
コルラはバインゴリン・モンゴル自治州にある都市だ。
「ここにはね、嫁いでやってきたんだ、16年になるよ」

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土とレンガでできた家はかなりの年月を感じさせた。
昔の家には、今は鶏が暮らす。
放たれたままの鶏は、スーチンさんが餌を出すと集まって夢中になって食べ始めた。
初日にごちそうしてくれたあの料理は、飼っていた鶏を一羽まるごと使ったものだった。
大切な家畜をごちそうしてくれたのである。
家畜はかれらの財産だ。
スーパーに行ってお金を支払えば好きな塩梅で食料が手に入る生活の中で、一つひとつの命をいただくという感覚が私にはないことを恥ずかしく思う。

その裏手には、一頭の馬がいた。
それにも水と草を与える。
「この馬も言うことを聞かない馬で、数日前に逃げたからここに放り込んだんだ」

村を後にして、車を走らせてやがて山のふもとで停まった。

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「あれ、水がない」
スーチンさんは困ったふう。
本来であれば、向こうにあるダムから流れてくる水があるようだが、完全に乾いている。
どうやらここがスーチンさんのおすすめだったよう。

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せっかくなので辺りをうろうろしていて目についたものがあり行ってみると、それは何かの施設のよう。
施錠されていたが、係の人が入ってみてもいいと言ってくれたので、見てみることにした。
「訊かれたら私の妹だと言うんだよ」
スーチンさんはそうささやいたが、民族も違えば私は思い切りカメラを持っていて、姉妹だというのはちょっと苦しい。

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こんなふうにして妙な恐竜の像が建ち並び、不可解きわまる。

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実はここ、軍事演習のような訓練をするところのよう。
迷彩服や偽物の銃が並び、確かに訓練に使うようなロープやセットがある。
ゲルも並び、宿泊しながら訓練できるみたい。
でも恐竜がどうしても気になる。
「訓練って遊びの?それとも真面目なの?」と訊いてみると、
「真面目なところだよ、でも遊びでもできる」という。
今日は人がいないが、明日は利用者がいるらしい。

ここを後にしようとすると、すぐそこにはチケットを検査する場所があった。
チケットってなんのチケットだろう、この先には何があるんだろうと思っていると、
「ここには天山大峡谷があるんだよ」
天山大峡谷はウルムチからもツアーが出ている観光地だ。
まさかこんなところにあったなんて。
せっかくここにきて、立ち寄りもせず帰ってしまうところだった。
なんで誰も教えてくれない…。
ではさっそく明日はここに来てみることにしよう。
チケット売り場はここからだいぶ離れたところにあるようだったので、スーチンさんに明日そこまで送ってもらうことにした。

「向こうにはモンゴルゲルがたくさんあるから行ってみようか」
そう言って連れてきてくれたのは、昨日山の上から見下ろした場所だった。
辺りには繋がれた馬がたくさん、乗客を待つ。

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そこには軍事区域 立ち入り禁止の表示がありどきりとする。
軍事関連に近づくことはタブーだし、写真なんてもってのほか。
さらにここは辺境の地だ。
でも立ち入り禁止どころか馬が自由に行き来しているので、入ってみた。

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廃墟と目覚めるような緑が不思議な組み合わせで目を引いた。
こんな廃墟が数棟続いていて、この場所には明らかに不自然さと違和感がある。
危険、進入禁止のスプレー書きがすべての建物に書かれている。崩壊寸前のような建物だ。
これが実際はなんだったのかはわからない。

ここからまた車に乗り、しばらくして分岐点を左に曲がった。
「向こうは立入禁止だから」
そういう横を軍事関係と思われる車が数台そちらに進んでいった。
先ほどの立入禁止はここのことだったよう。
でも、言われなければわからない。
知らないで入ってしまう、そういうことが本当にあるから怖い。

分岐点を左に行くと、廃墟化したゲルがたくさん残されていた。
そのまわりを牛がのびのびと草を食んでいる

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以前は観光客向けの宿泊施設だったようだが、今ではすべてが放棄され、あるものは施錠されあるものは崩壊しかかっている。
「去年まではよかったけど、今年からダメになったんだ」
廃墟化したゲルの中をのぞくと、夜逃げしたみたいに酒瓶などがそのままに放棄されている。
美しい自然の場所に来て、なんだか悲しい光景だった。

帰りはまたあの土とレンガの村を通り、そこで学校帰りのツァイツクちゃんとパトゥパイ君を拾って家に戻った。
明らかに蒙古族ではない子供たちと一緒で、
「あら、今日はずいぶん可愛いね、どうしたの?」
スーチンさんが笑顔で声をかけると、
「お遊戯があったの」
ティアラをつけた女の子はそう答えた。
「あの子はカザフ族だよ」
スーチンさんが教えてくれた。その女の子の肌は白くて瞳が薄かった。
色んな民族が一緒に暮らしている街だ。
このあと見せてもらったスマホの映像は、学校のお遊戯のもので、それぞれの民族衣装を着たものだった。
パトゥパイ君も登場して蒙古族の衣装を着ていた。
蒙古の威厳を示すような堂々たるパフォーマンスだった。
小さな村に少数民族の場所、てっきり子供も少ないだろうと勝手に想像していたら、学校にはなんと1000人を超す子供がいるよう。
大きなバスが出ていて、広い範囲から集まって一緒に勉強しているみたい。

家に帰って、私は荷物を置きに二階にのぼった。
そうして下りてくると、何やら様子がおかしい。
するとツァイツクちゃんとパトゥパイ君が、蒙古の民族衣装を着てはずかしそうにしている。
どうやら、私に見せるためにわざわざ着てくれたみたい。

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普段は着ないけど、結婚式など特別な時には着るそう。
そういえば部屋に飾られていた家族写真も蒙古の衣装を着たものだった。
刺繍が細かくて豪華な衣装だ。
二人にとてもよく似合っていたが、数年前の衣装なのできついのを無理やり着てくれたものみたい。

このあとツァイツクちゃんと犬のゴンジュの散歩にでかけた。
怖かったのは、この一帯放された犬がとても多いこと。
それが10頭ほどのかたまりになってこちらに吠えて近づいてくる。襲われたら命はない。
ツァイツクちゃんは堂々としたもので全くひるまず石を投げた。
「あれ野犬でしょ?」
びくびくしながら彼女にしがみつき訊くと、
「みんな人が飼ってる犬だよ」
都市部では人に飼われた犬はこんなには襲ってこないけど…。
私たちが散歩するルートについてきては飛びかかるそぶりをし、またその10頭だけでなくあちらこちらから犬が飛びだしてこちらを狙う。
「大丈夫だよ、心配ない。ゴンジュには敵わないから、石投げれば逃げてく」
巨大な犬ゴンジュは私の恐怖をまったく知らないふうで、尻尾を元気に振りながら散歩に夢中。
吠えかかる他の犬たちのこともまるで目に入っていないふうで眼中になし。
「ゴンジュはあとからこの場所にやってきたから犬たちはみんな嫌がるんだ」
しかしゴンジュの勝利である。

散歩が終わるとひとりで家の裏の草原に出てみた。

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ゆっくりと沈んでいく太陽があった。
遮るものはなにもない。
見渡してもだれもいない。
私一人があの太陽を独り占めしているような気になった。

家の中に戻ると、今夜のご飯は大好きな火鍋だった。

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蒙古なので羊肉がでてくるかなと期待したけれど、意外にもお肉は一切なしの野菜と豆腐にソーセージのみの火鍋。
豆腐干に麺筋は、以前は見た目であまり好きではなかったけど、これがとてもおいしい。
ついつい夢中になり食べ過ぎてしまった。

スーチンさんは自分の兄弟や親せきの写真を見せてくれ、そんな話もたくさんした。
スーチンさん自身も、旦那さんのニーマンさんも、それぞれ兄弟姉妹6人なのだそう。
ツァイツクちゃんとはたくさん写真を撮った。
日本にも興味を持ってくれて、富士山の写真を見せるときれいだと喜んだ。
「いつまでいるの?」
と訊くツァイツクちゃんに、「24日にウルムチに帰ろうと思ってるんだけどね」というと寂しそうな顔をした。
今日なんとなく考え出していたことだった。
お宅にお邪魔して三日目、めんどうがることもなく温かく受け入れてくれて、それどころか楽しんでくれている。
私はいつも与えてもらってばかりだ。


〈記 5月22日 ウルムチ八家戸村にて〉

⇒ 烏魯木斉旅行六日目 へ続く

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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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