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2018-06-03

烏魯木斉旅行六日目

2018年5月23日、今日は天山大峡谷へ行くために早く起きなければならなかった。
それでもちょっと寝坊して、支度が完了したのが11時。
現地時間で9時くらいの感覚で、朝の日差しは明るくまぶしい。
スーチンさんが部屋をのぞき、
「用事ができて出かけなければならなくなったから、戻ったら天山大峡谷のチケット売り場まで送るよ」そう言って出かけて行った。

帰る日程は特に決まっていたわけではない。
いたいだけいて、帰りたかったら帰っておいで、ということになっていた。
そんな中で、こんな募集をしているよ、とチャンイーらが色々滞在期間中に参加できそうな情報をくれていた。
その中で、26日から27日にかけて野外活動の募集があった。
そこで一人で参加してみることにしたのだった。
企画者も私が外国人ということをわかったうえで了解してくれて、それに参加することになった。
テントで宿泊するために色々そろえる準備が必要ということで、24日には南山を下りることを決めた。

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お世話になった家、素晴らしい景観、目にしたもの。
そんなのとも、もうお別れかと思うと、さびしくなる。
24日は天気が悪そうで、最後の見納めのつもりで、家の裏の草原に出てみた。

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今日は雲が少し出ていて、でも草原に白い雲はとても似合う。
スーチンさんたちの馬も、草を食むのに夢中。

どれくらい待っただろう、13時にもなろうかという頃、スーチンさんが戻ってきた。
パトゥパイ君が学校の扉を壊してしまい、呼ばれてしまったのだという。
私たちは簡単に朝ご飯を済ませ、出発することにした。
「中に食べるものがあるかどうかわからないから、これ持っていきな」
そう言って、パンやリンゴ、梨などを持たせてくれる。

車で出発して、向かったのは天山大峡谷のチケット売り場。
昨日見たのは、チケットチェックする入場口。
「入場口でチケット買えれば便利なのに」
そういうと、
「去年まではあそこで買えたんだけど、今年から買えなくなったんだ」と言う。
チケット売り場は少し離れていて、私たちは家を出て、村を抜けて、小さな町を抜けて、そして建物もほとんどないような開けた場所に出た。

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この建物もないような場所にでんと目に入った建物は、冬季運動場とのこと。
スケートなどができるのだという。
「こんな大草原にこんなものがあるなんて!」
そういうと、スーチンさんは「そうだね」と笑った。

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目的のチケット売り場はこの場違いな感たっぷりの競技場のすぐそばにあった。
やたらどでかいチケット売り場は中国ならでは。
ここで、入場券と乗車券あわせて115元を購入し、ここから専用のバスに乗って天山大峡谷へ向かう。
スーチンさんと別れ、ここではなくて昨日のチケット検査入場口で待ち合わせることに。
何も言わなければバスはここに戻ってきてしまうから、途中で下車することを伝えなければならない。
「遊び終わってそこに着いたら電話ちょうだい」
そう言ってスーチンさんは戻っていった。

バスがいっぱいになったところで出発した。
しばらくして昨日のチケット検査入場口を通過して、すぐその先、ダムを通った。
昨日見たところには水がいっさいなかったけれど、ダムはエメラルドグリーンの水をなみなみと湛えている。
その左右には、険しい岩肌をあらわした山が道路を挟み込むようにしている。
このドライブこそが一番の見どころだと思うのだけれど、写真に残すことは難しい。
記憶に焼き付けるように窓からのぞく。

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天山大峡谷には二か所の停車ポイントがある。
その一カ所目、照壁山庄へ到着。
売店や飲食店、トイレなどが並び、いかにも観光地といった感じに整備されている。
歩道が整い、橋が架かり、その向こうには上に登っていけるように階段が上にのびている。

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私が今まで経験してきた新疆ウイグルのこうした観光地は、ほぼ手付かずでせいぜい観光客向けに少数民族の食べ物やゲルや馬なんかがある程度だったので、このように観光地化されているとは思わず少し残念に思った。
すばらしい山も景観も、カメラを向けるとどうしても場違いなものが映り込んでしまう。
天山大峡谷はウルムチからもツアーが出ている有名な観光地で、やはり現代の観光地化の波はしっかりここにも及んでいたよう。

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それでも豊かな水はそれは透き通っていて、天山の恵みを私たちに誇っているみたいだった。
観光客たちはみな覗き込んでスマホを向けている。

橋を渡って、向かいの山を登って見ることにした。

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上からはこのような感じ。
正面にあるのが、駐車場に飲食店などの並び。
帰りはその向こうにあったつり橋を渡って。

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注意書きの看板は、上からウイグル語、中国語、英語、ロシア語。

乗ってきたバスはまだ出発する気配がない。
そこで、売られていた烏蘇ビールを飲みながら、のんびり待つことにした。
新疆に来たならば、このビールは一度は口にしなければ。
先日ビールのメッカ、青島を旅行し青島ビール博物館を見学したばかり。
中国のビールに使うホップ(啤酒花)は新疆で生産されたものだ。

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ビールを飲み終えて、まだ上に登るバス出ないのかな、とバスに乗り込んで待つことしばらく。
係の女性が、「下山したいの?」と声をかけてきたので、
「上に行きたい」と答えると、このバスは下山するのみという。
私は誤解していて、チケット売り場を出発したバスは、この照壁山庄を経由してそのまま上に連れて行ってくれるものと思っていたが、先を進むにはここで乗り換えていかなければならないよう。
見るとすぐ近くには、15人乗りの小さなバスが。
乗りこむとすぐに出発した。

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両側にせまる山肌は急峻で、バスの窓から顔を覗かせてかろうじててっぺんが見える。
まるで切通を突っ切っているかのような場所を走るが、そういう場所は写真に残せない。

やがて、最奥の天鵝湖に到着した。
この先にも道が続き、そのルートから先ほどの照壁山庄に戻ってくることができるみたいだが、バスはここを終着として引き返すみたいだった。
夜そのことをスーチンさんに話すと、
「前は行けたんだけどね、道が悪いから今は通ってないかもしれない」とのことだった。

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天鵝とは白鳥のことだ。
ロシアから飛来してきた白鳥がここにもやってくるのかもしれない。
白鳥湖とはどこにでもありそうな名前で、その割には湖としての規模は小さいので、若干名前負けしてしまっている感もある。
そんな美しすぎる名前より、もっとここならではの名前だったらいいのに、なんて余計なお世話で考える。
湖の向こうに見える白いものは、ゲルだ。

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湖の目の前には、ずっとずっと向こうまで草原が広がっている。
馬に乗って向こうまでいく人もたくさん。
気が遠くなりそうだけど、最終のバスは19時発。
現在16時半というところでまだまだ時間はあるため、歩いて向こうまで行ってみることに。

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スーチンさんが持たせてくれたリンゴをかじりながら歩く。
日本では果物かじりながらなんてやらないけれど、中国ではなぜか行く先々で果物をかじりたくなるから不思議だ。
それに気持ちのいい天気、そして美しい風景が目の前にあるならば、いうことない。
よく見ると、足元には黄色や紫の小さな花が散らばっていた。

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しばらく草の上でぼーっとして、そこから山沿いに続く道路に出てみた。
あそこを歩いていけば、草原の向こうがどうなっているか見えるかもしれないと思ったからだ。

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しかしだいぶ歩いたところで断念。
あの先には、バスが行かなくなった別ルートがあるのだと思われる。

戻る途中、動物を発見した。
薄茶色のふわふわな小動物だ。プレーリードックとカピバラを足して割ったような感じで、ウサギよりも少し大きい。

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私が気づくと、ただ気づいただけなのに、それは石のように固まって動かなくなった。
よく見ると、同じ小動物が数匹いる。
あ、またいた!
とそちらを見ると、見ただけなのにそれはちょっとしたくぼみに隠れた。
くぼみに隠れたが頭は見えている。こちらをじっと見ている。
よし、見に行ってみようと近づくと、そのくぼみには大きな穴が開いていて、それは大きな鳴き声を上げて、くるっとその穴の中に入っていった。穴は深く奥まで続いているようだった。
「ポピポピ」というかわいい鳴き声だった。

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私は少しいじわるで、穴の横でしばらく休憩して待ってみることにした。
するとしばらくして、「ポピポピ!」という激しく混乱した鳴き声が聞こえ、それはまた穴の中にUターンしていった。
もう大丈夫かと思って出てきたらまだいたので驚いたことだろう。
周辺には、このような穴が多数あった。

夜その話をすると、スーチンさんもツァイツクちゃんもすぐにわかったみたいだった。
「“漢塔”だよ」と教えてくれた。
ポピポピの鳴き声をまねすると、「そうそう」と二人笑った。
「噛みつくから近づいちゃだめだよ、それに巣の中は道がたくさんあるから捕まえるのは難しいよ」
そういえば、一昨日に山の上まで登ったときにも、同様の穴がたくさんあった。
あれも、この漢塔のものなんだという。

こうして再びバスに乗り照壁山庄で乗り換え、チケット売り場でなくチケット検査入場口で下ろしてもらえるようお願いし、戻ってきた。
スーチンさんに電話をし迎えにきてもらい、その後、家畜の様子を見るためにまた村に立ち寄った。

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鶏に餌をやり、馬に水と餌をやり、そして番犬にも餌をやる。
土とレンガでできた飼育小屋はいくつもあり、その中からスーチンさんが私を呼んだ。
入ってみると、かつての馬小屋の中にはぽつんと卵がひとつ。
「毎日ふたつ生むのに今日はひとつだよ」
そういってもうひとつがないか探したけれど、ついに見つからなかった。

旦那さんの生家だというこの家は、土とレンガでできていてたいそう古かった。
現在は暮らしてないとはいえ、そこかしこに生活の痕跡が残っている。
生きるとは毎日の繰り返しだ。
古びた家屋や使い古されたかつての道具、もう使われていないままにされたもの。
そういうものには、みな生きるためにやってきたすべての歴史が刻まれている。
誰にも死はかならずやってくるし、どんなものも最後は朽ち果てる。
それでも生きなければならない。
これは時代や国が違っても同じことだし、貧しいかろうが裕福だろうが、すべての人間に与えられた宿命だ。
私は古い家屋や生活の痕跡を目にすると、いつもそうしたことを考える。
スーチンさんたちは今すでに新しい家に暮らしている。
けれども、どれだけ古くともこの家屋や家畜小屋は、スーチンさんたちによってまだ生かされている。

村でまたツァイツクちゃんとパトゥパイ君を拾って、家に。
最後の夕日を見に、また草原に出た。

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今夜のご飯は、最後の夕食だ。

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出てきたのはなんとまるごとのお肉。
羊肉かと思ったら、なんと牦牛肉、ヤクだ。
ヤクは以前に加工品を食べたことがあったが、料理として口にしたことはなかった。
ナイフで細かく切っていく。
これが脂身がなくさっぱりしていて、それでいて旨味がありおいしい。
冬によく食べるのだそう。

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もうひとつは、蒙古麺というそう。
さっぱりしたシンプルな麺。
おいしくて、ヤクは遠慮なくたくさんいただき、麺もお替りしてしまった。

いよいよ明日、山を下りることになった。
用意してきたお礼を渡すと、たいそう喜んでくれて、いつまでもそれを手に話がつきなかった。
「どんな人が何人いて、ってわかってなくて」
もし子供がいるってわかっていたら、日本のお菓子を持ってきたのに。
そう言うと、
「これからもよく来ればいいよ」とスーチンさんとツァイツクちゃんは言ってくれた。
五日間が短いか長いかよくわからないけれど、あっという間だった。
私はお客さんとしてやってきたから、いい気なものだ。
いろいろ面倒をみてもらい、楽しませてもらった。
スーチンさんたちの人柄で、まるで自分の家のようにくつろがせてもらった。
そんなことを思って、胸がいっぱいになった。
このうちで、この山と草原で、この村で。
中国はこんなに広いのに、世界もこんなに大きいのに。
それなのにふとした流れで、この場所にきてこのお宅にお世話になることになった。
このご縁に感謝したいと思う。
毎晩四人でテレビを囲み、布団をかぶりながらドラマを見た。
今晩も同じようにして、中国語吹替のフランスか何かの映画を見て、終わるとともに「寝ようか」と誰ともなく部屋に戻った。


〈記 5月23日 ウルムチ八家戸村にて〉

⇒ 烏魯木斉旅行七日目 へ続く

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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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