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2018-06-03

烏魯木斉旅行七日目

2018年5月24日、今日はとうとうこのお宅を去って、ウルムチ市内に戻る。
天気予報ではこの日ウルムチは大雨とでていたので、どのみち遊びには出れないと思いゆっくり寝ていた。
それでもようやく起き上がって窓の外を見てみると。

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なんと一面の雪。
さらに現在も大粒?の雪がぱらぱらと降り続けている。
なんてことだ、まさかまだ雪が降るなんて。
ここに到着した時、確かにそこらに、数日前に降ったという雪は残っていた。
けれどまだ降るなんて。

起き上がって、身の回りの支度と部屋の掃除を済ませ、下に降りていった。
外に出てみると、当然のことだけれど死ぬほど寒い。
今回、あろうことか私は夏服の準備しかしてこなかった。
お邪魔するお宅が山の上だと思っていなかったが、ウルムチ自体かなりの内陸(世界で一番海から離れている場所)なのだから、標高はけっこうあるはずだとわかるだろう。
支度が甘かったことは到着してすぐに気づいて、夜は寒くて持ってきたパーカーを着たまま眠った。
でもまさかこんな一面の雪になるとは想像もしていなかった。

昨日、スーチンさんに訊いてみた。
「冬はどれくらいの気温になるの?」
「30度」
「あ、冬の気温は?」
「だから、30度」
実は零下30度。
零下なのが当たり前すぎて、いちいちそういわないみたい。
このお宅は現代の住宅だからまだいいだろう。
でもあの土とレンガでできた昔の家には、もちろん暖房なんてない。
煙突があったから、火を焚いて冬を越したのだろうと思う。
私は温暖な地方で育ち、現代の恵まれた利器の中で生活してきて、その厳しい越冬を想像することもできない。

スーチンさんは牛の様子を見にでかけたようで、留守だった。
牛はかなり離れたところに放してあるといっていたから、当分帰ってこないだろう。
少しだけ外に遊びに出てみた。

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けれども外に出た私の体には次々と雪が降りかかってくるし、雪はけっこうな厚さに積もっていて靴はあっという間に濡れていく。
歩くのも一苦労。
鳩の鳥かごも分厚い雪をかぶっているけれど、鳩は元気そう。

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こちらは、昨日の写真。

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これが今日になったらこんなふう。

それでも雪の中、鳥は元気に飛び回り、向こうで馬がうずくまっているのが見えた。
寒くて死にそうなので急いで家の中に戻る。

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ツァイツクちゃんが昨日のご飯の残りを朝ご飯として出してくれた。
最後のヤク肉だ。
パトゥパイ君と三人でテレビを見ながらしばらく過ごす。
私が帰る日を伝えたとき、「学校ある日だね」と寂しそうな顔をしていたツァイツクちゃん。
私も寂しくなったけれど、運がよくてと言っていいのか、学校で風邪をひく人が多すぎて休校が決まったのが昨日。
そしてこの天気なので、やっぱりお休みでよかった。

今日はウルムチに帰らなければならない。
村のバスの乗り場まで連れて行ってもらい、そこから長距離バスで帰ることになっていた。
やがてスーチンさんが戻ってきたのはもうすぐ16時という頃。
牛は大丈夫だったみたいで、牛小屋のようすを写真で見せてくれた。

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牛小屋はかなり離れたところにあるそうで、鶏小屋となった昔の家も車がないと行けない場所にあるし、毎日の世話はたいへんだろうなと思う。
スーチンさんが家畜をとても大事に世話しているのが伝わってきた数日間だった。

そしてお昼ご飯は、ツァイツクちゃんが作ってくれたチャーハン。

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とてもおいしかった。
私がかなり食べるのでこれでは足りないと思ったのか、追加でスーチンさんがまた炒めてくれてもう一杯。
最後のご飯かと思うとさびしい空気になり、無言で食べた。

そろそろもう行かないとな、と思っていると、スーチンさんとツァイツクちゃんが向こうの部屋に行ったままなかなか戻ってこない。
そして部屋から出てきて差し出してきたものは。

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「蒙古では、友達を送るときにこれを渡す習慣があるの」
ストールみたいに見えるけど、少し違うふうにも見える。
「こうやって使うの?」と首に巻いて見せると、
「それでもいいし、壁や物に架けてもいい」
そう言って、テレビの上に巻くようにしてかけた。
「白いものを送る時にはね、順調満帆にって意味があるんだよ」
いろいろなところで彼女たちの温かい気持ちが伝わってくる。

突然、スーチンさんが顔をゆがめた。
「必ずまた来てね」
そう言って涙を流す彼女に胸が打たれた。
42歳で私より少し年上なだけだけれど、元気なお母ちゃんといった雰囲気の彼女。
まさかそんなふうに別れを惜しんでくれるとは思わなかったのだ。

たった五日間だけれど、家みたいに寛がせてもらい、家族みたいに接してくれた。
草原を一緒に歩いて、馬に乗るときには付き合ってくれた。
一緒に子供を迎えに行き、小さな商店の前で合流しては、野菜を買うついでにアイスを買ってくれた。
家畜に水や餌をやりに行き、村の人とおしゃべりした。
ドラマを見てはつい笑ってしまったり声を上げてしまったり。
留守番している時に来客があれば、いないよと伝えたり。
楽しかったな。
こんなふうに旅先で過ごすのは初めての経験だった。
実を言えば私は別に、お金も時間もあって旅行を満喫しよう、なんてふうに今回の日程があったわけではなかった。
理由があって今回の二週間があったわけで、しかもこの場所に来ようとして日程を組んだわけではなかった。
そういうわけだからこそ、今回ここに来たことはやっぱり縁が結ばれたんだと思った。

荷物をそろえて、いよいよ家を出ることになった。
車は分厚い雪で覆われていて、それをどけるにも一苦労。
車を運転しながら、何度も涙をぬぐうスーチンさんに私は気づいていた。
後ろの席から、ツァイツクちゃんが微信のメッセージを送ってきた。
そこには、「お母さん、妹みたいに思っていて別れたくなくてつらいんだよ」と書かれていた。

私はウルムチにいる同じく蒙古の友達フェイフェイに、奶疙瘩をお土産を買っていきたくて、商店に寄ってもらうことになっていた。
フェイフェイは実は出産を控えていて、私のウルムチ滞在中には生まれそうだった。
ところが、雪により軒並みお店を閉ざしている。
ここからウルムチに戻るバスに乗れるようでバスはすでに待機していたが、もう一つ上の乗り場に行けば別の商店が近くにあるから行ってみよう、ということになった。

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無事に奶疙瘩を1㎏購入し、バスがある場所に行ってみると、こんな場所。

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中には乗客はおらず、運転手さんは仮眠している始末。

スーチンさんがバスを叩いて運転手さんを起こしてくれて、無事バスに乗った。
みんなとはここでお別れ。
慌ただしいお別れでかえって良かった。
出会いは素晴らしいけれど、別れるときが寂しい。
「再見!」
そう言って別れるけれど、また会いたいと思うけれど、それは簡単なことではない。

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バスの中には私と瞳の薄い運転手さんふたり。
私は一番まえの座席に座ったため、必然的におしゃべりをすることになった。
「一人でこんなところまで来たのか?」
そういって驚く運転手さん。
「ウルムチに行く乗客いないの?」
「今日は雪が降ってるから少ないな」
そういいつつも、途中で人を拾いながらやがてバスは座席をうめていった。

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村を抜け街を抜けると、雪は止み減り、そしてまったくなくなり、遠くに雪山を確認するだけになった。
どうやらあの村だけ別世界のようだ。
「バス一本であの村にはいける、それならまたいつでも来れる」
そう思うと別れの寂しさが少し楽になった。
けれどもウルムチまでが遠いのは言うまでもない。

途中でウルムチのロンさんと合流し、バスを降りて市内へ戻った。
「雪の動画は撮ったか?」
そう訊いてくるロンさんに、
「写真は撮ったよ、動画は撮ってないよ」
というと、「なんだバカ、終わってるな」と大きくため息をついた。
悪態はご機嫌をあらわしている。

騒がしい世界に戻り、あの穏やかな草原での生活が嘘みたい夢みたいに思えた。
ウルムチは都会の風景で、すでに見慣れた街並みだ。
見慣れた街並みに、聞きなれた悪態、笑い声。
夢にならないで、と思いスーチンさんに無事に到着したことを伝えた。
「あなたは善良な人ですごく好きになったから、別れるのがつらい」
スーチンさんからそんな返事が来た。
私は人見知りが激しいから、そんなに積極的な交流ができたわけではなかった。
スーチンさんもそんなに積極的だったわけではない。
それでも人と人の交流というのは、単にどんな言葉を交わしたとか、何をしたとか、そういうことだけではなく、温かい空気のような感じで交わるものなのだと思った。

「ご飯は素菜を食べに行くぞ」
「素菜?」
「肉、が、ない」
「ああ、素菜だね」
そういって連れてきてくれたお店が今夜の晩御飯。
蒙古は野菜をあまり食べないで肉ばかりが多いからこれを食べなさい、とスピルリナのサプリメントを大量に持たせてくれていた。
そんなだから、おそらく気を使ってこのお店を選んでくれたのだと思う。
セルフサービスで自由におかずをとるのだけれど、男二人のロンさんとリュウさんのボリュームがすごい。
「ここのはおいしいからよく食べなさい」
ロンさんがそういうと、お店の人が笑った。
「彼女が日本に帰って宣伝するから、これから日本人客が増えるぞ」
得意げに店員さんに言う。

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食事を終えてホテルへ。
ホテルは到着した日に一泊したところと同じホテル。
ちょっとした出入りにもチェックが厳しくて面倒だ。
新疆のあらゆるホテルには、セキュリティーチェックがあり、夜通し保安官が見張る。
チェックインの際にはちょっとしたトラブルが。
ある南方の民族が、チェックインを拒まれていたのだ。
訊いてみるとその民族の身分証では宿泊受付ができないという。
私はその民族を知っていたが、そんなに問題のある民族だとは思わなかった。
しかしそのように認識されていて、法令で決められていることなのだという。
新疆にきて面倒なのはなにも外国人だけではない。
問題視されている民族はなにもウイグルやチベットだけでない。
そういうことを見た瞬間だった。

ロンさんたちと別れるとき、明日トルファンに出かけてみたら?という話がでた。
滞在期間中、もともとはなにも予定が決まっていなかったのが、こんなのはどう?と色々提案してくれて、でも外国人が不可だったり予定が合わなかったりだった。
とりあえず明後日、一泊野外活動に参加してみることが決まっていたが、明日の予定は今のところなかった。
テント泊になるので明日はいろいろ準備しようかな、と思っていたくらい。
「トルファンに友達がいるから、交河故城に行くなら送ってもらうようにしようか?」
リュウさんがそう提案してくれた。
そこで急遽、明日は日帰りトルファン、しかも交河故城のみ行ってみることにした。
トルファンは非常に見どころが多く、日本人からも人気の場所である。
けれども見どころが多いことでかえっていまだ足が向いていなかった。
行くならトルファンをメインに旅行を計画したかったが、これもタイミングだ。
いずれまた目的地に旅行を組むとして、今回はちょっと遊びに出かけてみよう。
そういうことになった。

明日は朝早くにウルムチ南站に行って切符を買わなければならない。
けれどホテルに戻り烏蘇ビールを飲みながら本日分の旅行記を書いていたら、気づけばまた深夜。
日本と実質的な時差三時間は感覚がおかしくなるが、実質時間でももう遅い。

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〈記 5月24日 ウルムチ市区にて〉

⇒ 烏魯木斉旅行八日目 へ続く

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朝起きると一面の雪とは季節感の真逆さは旅の醍醐味の一つかもしれません。以前、鳳凰と網走で同じ経験をしました。僕は道産子の癖に寒さと雪が大嫌いです。でも、例外的に前日の風景と変わる初雪や季節外れの雪が好きです。外で鼻腔の奥で感ずる雪の匂いの冷たさと静寂さが理屈抜きで大好きなんです♪今年は色々とあって中国には行かないかもしれません。来春は春節に中国に行くかもしれません。僕個人は仕事や体調との兼ね合いで今年は何処にも出かけないかもしれません。老婆とは台湾の旧知に会いにでも出かけようかとか話しはしていますが未定です。楽しいブログ楽しみにしています(^^)

Re:

そうですね、季節感の真逆さ、普段生活する日本とのギャップはもちろん、予想外の季節感は旅に来たんだな~という実感を高めてくれます。
新疆は一日のうちでもころころと天候を変えますが、今回昼夜の気温差が30度以上になるときもありました。
生活するとなると対応できるかどうかはわからないけど、旅だからこそ楽しめる旅行者の特権とも思います。
私が住むところは雪が降らないんですよ、それだけで珍しくて楽しいです。
身体あってこその旅の楽しさだと思いますし、何よりもご家族のためにも身体はお大事になさってくださいね!
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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