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2018-06-03

烏魯木斉旅行十日目

2018年5月27日、寝袋から起き上がってテントから出たのは8時頃だった。
起きたのがその時刻ではない。
目は覚めていたけれど、周りの人が起きだして自分もテントから出たのがその時刻だった。
昨夜はほとんど眠っていない。
眠れなくてそのまま朝を迎えてしまった。
まったく眠れなかったような感覚だけど、夢を見た記憶があるから、眠っては起きて眠っては起きてを繰り返したのだろう。
というのは、めちゃくちゃ寒かった。
厚手の上着を重ね着して寝袋に入ったがそれでも寒く、寝返りを打てば背中が寒く、もうどうしようもなくて困っていた。
寒さを無視して眠りに落ちるほど眠気があったわけでもなく、いびきが聞こえるどこかのテントがうらやましかった。
新疆は昼夜の寒暖差が激しいから、昼間暑くても夜は冷える。
テントを張ったのは高原だったので、きちんと確認してはいないけれど2000mくらいは標高があったのではないかと思う。
雪が残る風景を通過してたどりついた。
寒くて当然である。

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テントを出てみると、太陽は昇り夜間ほどの冷え込みは落ち着いたとはいえ、いまだ手がかじかむような寒さだった。
化粧も落とさず歯も磨かず寝たので、残り少ないミネラルウォーターを使って歯を磨き、化粧を軽く直した。

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見るとみな活動的で、おのおのすでにガスで火をおこし朝食を作っている。
私は火を起こすのもめんどうで、リンゴや梨、蟠桃などを食べて朝食代わりにした。

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けれどみんな作ったものを「食べな」と勧めてくれる。
「もうおなかいっぱいになったから食べてくれよ」
なんて言いながら、また別のものを作り始めているからすごい。
しかもみんながみんな、そうなのだ。

同乗のメンバーが、「キノコを探しに行くけど行く?」と誘ってくれた。
今日は移動せず、出発時間まで自由にここで行動するらしい。
「行く!」
向かうのは昨日と同じ山の上だ。
「大丈夫?」
「頑張る!」

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けれども結局、いざ山の斜面を登るという時、
「やっぱりやめておいた方がいいよ、あの二人と行動して待ってて」
と、近くにいた別メンバーを指した。
私も結局、いざ斜面を見ると自信がなくなってきたので、別メンバーの二人の方と行動を共にすることにした。



二人は元気のいい豪快なおばちゃんプラス犬のニュウニュウだ。
昨日は野草採りに夢中になっていて、遊びというより本気度が高くちょっと驚いた。
「これもそうだよね」と同じような葉っぱを袋に入れようとしたら、
「違う!」

今日もまた何かに夢中になっていて、楽しそうな雰囲気はなく本気度が高い。
「何してるの?」と訊いてみると、
「きれいな石を探して家に飾るんだ」と言う。
見るともうすでに大きな石がごろごろ採集されている。
私も便乗してみることにした。

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大きな石は持って帰れないので、小さな石を数個だけ拾ってみた。
光に透かすと、琥珀色をしてきれい。

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おばちゃんに見せてみると、
「なかなかだね、それで大きければいいんだけど」
たくさん拾っていて、なんでも拾っているようで実はちゃんとえりすぐっている。
時間をかけて抜いた大きな石も、「ここがダメ」と放り投げた。

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こうしてまたテントまで戻ってきた。
男性陣は出かけることなく、にぎやかなおしゃべりに花を咲かせている。
今日は運転になるのでお酒は飲んでいないが、こうしてみるとお酒が入っていようといまいと、テンションはそう変わらない気もする。

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さっき朝食を食べたばかりだが、また次々と作っていて分けてくれる。
まるで食べるためにここに来ているかのようだ。

やがてキノコ組が帰ってきた。
「なかった?」と訊くと、
「一個も、なかった!」
そのかわりてっぺんからの景色は見事だったようで、写真を見せてもらったあとやっぱり行けばよかったと後悔したほど。
「行きたい!」と言うと、
「でも道がなくてどうしようもなかったから、無理だよ」

昨夜の寒さがほんとうに夢かと思う程、打って変わっての暑さだった。
手元の温度計を見ると、30度を越している。
手がかじかむ寒さから、30度って。
日焼け止めを塗ってはいるけれど、手首から先や首元は黒く日焼けしていた。
紫外線も強い。

「私たちおなかいっぱいになったから早く家に帰って休まないと!」
帰ろう、とだれかが言い出した。
そうして、まだ続けている昨日の先発組を残しておのおのの車は帰路につくことになった。

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帰り路はまた違った印象に見える。
残念ながら帰りはそのまま一直線にウルムチへ。
しかし最後の最後、ビル群に到着するまでこの広大で荒涼として生命を受け付けないような大自然の迫力は続く。

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私が新疆ウイグル自治区に魅せられている理由は一つ二つではない。
いろいろと理由がある。
文化、民族、歴史、友人関係、食文化、情勢、挙げたらきりがないけれど色々。
その中で、この自然。
新疆ウイグル自治区のほとんどといっていいほど大半を占めるのは、生命の存在を阻むような厳しい自然環境、気象、地質、地理である。
この地方に対して多くの日本人が想像するのは、シルクロードにイメージされる砂漠。
法顕が仏国記で、「上に飛鳥なく、下に走獣なく、ただ死人の枯骨を以て標識となすのみ」と書き表したすがたである。
けれども、私が時間とお金をかけてでも来る意味があると感じさせるのは、実をいうと、通常は同居しないようなものが同居した風景を目にすることができること。
激しい地層と色合いをあらわした、乾いた土の層。
触ったら怪我でもしそうな尖った岩肌。
生命に恵みを与える豊かな草原。
そこに寄生するかのように生える色濃い杉の木。
それらの向こうにいかなるものも自由にさせないような、神宿る天山。
まぶしい雪のかがやき。
それに、完璧なまでに不純物のない、青い空。
これらが視界に同時に映る。
しかしそこには違和感はない。
ただ、宇宙を創造した偉大なる力、というものがもしあるならば、それは今目にして感じているものなのだろうと思う。
その圧倒的な感覚こそが、私にとってこの地の魅力なのだ。
あのまぶしい輝きの天山を向こうにみたとき、私は感動で泣きそうになる。
生命を守る恵み、生命を拒む力、生命を超越したもの。
これら同居しないはずのものが、同居する場所。
それがここにはあるのだ。

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車はやがて行きに来た道を順調に戻り、徐々に文明に近づいてきた。

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道端には紫がきれいな小さな花がところどころに咲いている。
「馬蘭花だ」
行きにダーウェイさんが教えてくれた。
菖蒲を小さくしたような花である。
今回の道行き何度も目にした。

向こうに建築物が見える。
いよいよもうすぐウルムチの市区に近づいてきた。
と思ったら、日本では考えられないような悪路がまだまだ続く。
そんなのを慣れたようにこなしていくのはさすがだと思った。
ダーウェイさんはエアコンをかけない。
窓を開けてもむせるような暑さで、手元の温度計を見てみると35度を指している。
それでも悪路に舞う砂ぼこりに、しばしば窓を閉めるはめに。

夫婦ふたりが車を降り、やがてもう一人の女の子もマンションの前で車を降りた。
私にとてもよくしてくれた人たちで、今回の野外活動がこんなに楽しかったのは彼女たちのおかげだった。
ダーウェイさんは最後に私もホテルまで送ってくれた。
「ここ向こうに回れないからここでいいよ」
そういってホテルの向かいの反対車線で下ろしてもらったが、でかい荷物をしょって歩いて横断歩道まで向かい始めると、また呼ぶ。
「女性にはやさしいんだ」
そう言ってわざわざ進行方向を変えてホテル前まで送ってくれた。
真っ黒に日焼けした顔で笑顔を見せた。

チャンイー、今回の活動を紹介してくれたリーリー、ロンさんに戻ったことを伝えた。
「文明圏へようこそ」
ロンさんからはそんな返事がきた。

ホテルのドアを開けて入ると、保安官とフロントの女性が私を見て笑顔で、
「マーヨーズ、おかえり!」
昨日チェックアウトしたが、今晩からまた宿泊することになっている。
すっかり名前まで覚えてもらったみたい。
「野外活動に参加してきたよ」そう言うと、
「どこに行ってきたんだ?」
「索尔巴斯陶草原」
といってもぴんとこない風。

シャワーを浴びて借りていた荷物を簡単に洗ったりして、夕ご飯を食べに外に出た。
外に出る時にも、
「マーヨーズ、你好!」
ホテルの従業員、保安官、みんな優しくしてくれる。

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もう22時という時間だったが、まだ空は明るさが残る。
ロンさんは治安の問題などから、漢族居住区のつまり現代ビルが立ち並ぶエリアにホテルをとってくれていた。
だから付近を探してもなかなか新疆料理のお店に出合わない。
あるのは中国各地の食堂で、なぜだか重慶料理がやたら多かった。
そんな中でようやく見つけて入ってみたのは、羊専門のお店だった。

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頼んだのは、羊肉湯と、過油肉。拌麺ではないおかずだけ。
それと烏蘇ビール。
これがどちらもとてもおいしかった。スープの方は羊のダシがよく効いていて体がほっとする。

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ホテルの横にはコンビニがあり、そこでまた烏蘇ビールを買って帰る。
ホテルのドアを開けるとまた、「マーヨーズ、おかえり!」


〈記 5月28日 ウルムチ市区にて〉

⇒ 烏魯木斉旅行十一日目 へ続く

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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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