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2018-08-23

38日間周遊 〈10日目〉 成都

2018年7月9日、昨夜昆明站を出発して17時間の夜行列車。
遅くまで外を流れる真っ暗な風景を眺めながら、一人白酒を飲んだ。
見上げれば散らばる小さな星たち。
ふとまた銀河鉄道の夜を思い起こした。
賢治がなぜ、銀河鉄道に死生観をあらわしたのかわかるような気がした。
真っ暗な風景の中、時折灯りをともした家々が走り去っていく。
そんな一つひとつの明かりは一つひとつそれぞれの毎日で人生で、私はまるで列車にがたごと揺られながらそれらの人生を覗いているかのようだ。
それでも一つひとつの明かりと私たちは交わることはない。
ただ一瞬すれ違って、そこがどこだったのかそれが誰の人生だったのか知ることもなくまた再会することもない。
私はいま、たくさんのたくさんの一瞬とすれ違いながら、一緒についてくる星たちとともに走っている。

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目が覚めたは8時頃だった。
そのまま起き上がることなく、隣で仲良くする若いカップルを眺めながら到着まで休んだ。
窓の外は雨。
十日前に北京を出発してからみごとに晴天に恵まれることもなく、どうやら成都もまた雨が降っているようだった。

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成都では、数日前から連絡をとっていたジャオユーさんと会う予定になっていた。
もともとの計画は、成都にはほとんど滞在することなく用意していた三日間で世界遺産の九寨溝へ行ってみる予定だったが、地震の影響がまだ残っているようで、あれこれ考えてみた結果成都に残ることにした。
ジャオユーさんは、そんななかウルムチの友人ロンさんが私を心配して紹介してくれた友達で、成都站まで迎えにきてくれることになっている。
起きてみると彼から連絡が入っており、成都が雨で、しかもここ数日ずっと降り続いているということを知ったのだった。
「雨霧の世界もまた味わい深いものだ」
そんな文面に心が洗われるような気がした。

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ちょうどお昼、列車は成都站に到着した。
ジャオユーさんとは駅出口で待ち合わせをしていた。
初対面になりお互いの顔も知らなければ年齢すらはっきりわかっていなかったけれど、ごった返すような人混みの中ですぐに見つかった。
後に彼が言ったところによると、日本人はやっぱり中国人と見た目が違うのですぐにわかったのだそう。
ジャオユーさんと合流し、まず先に予約を頼んであったホテルに向かうことにした。

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成都に着いてまず一番最初にやらなければいけないのは、ビザの申請だった。
時間と労力とお金をかけて手に入れた40日ビザ。
私の安易な行動によって、入国してたった一週間で、このビザを失効させてしまった。
中国でビザ不要で滞在できるのは15日間。
このまま旅行を続けるにはビザの再発行が必要だった。
しかし調べてみると、成都の入境管理局ではこの手続きに実質十日ほどの時間が必要とのこと。
さらにその期間成都に滞在している証明として、期間中のホテル宿泊証明書をホテルに発行してもらう必要があった。
手続き中はパスポートを入境管理局に預けてしまうため、どのみち先にホテルでチェックイン手続きが必要(中国では外国人が宿泊する際、ホテルが現地公安に登記する必要があるためパスポートが必要)、その為まっすぐホテルに向かってもらうことにした。

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ホテルはジャオユーさんが仕事関係で安く宿泊できるところを予約していれていた。
車を運転しながら電話をし、ビザの手続きが必要なので到着したらすぐに証明書の発行をしてくれるようにお願いしてくれた。

ホテルに到着すると、フロントの女性は不可解な表情をしながら、
「このパスポートは処理することができません」と一言。
7月6日に河口に入境し、7月6日にまた河口を出境している。
つまり正しく入国していることになっていないということのよう。
「これが最初に入国した入国スタンプで、ビザを使ったもの。それでこれが一度出国して…」
そんな説明をする。
ややこしいが7月6日に入国して出国したのではなく、7月6日に出国して入国したのだから、現在は問題ない滞在だ。
私の説明を受けてフロントの女性はようやく頷いてチェックイン手続きと証明書の発行をしてくれた。

入境管理局にビザ申請をしている間は、原則宿泊場所を変えることができない。
つまり十日なら十日、最初に証明書を提出した宿泊場所に滞在する必要がある。
ジャオユーさんは、チェックインはするけれども、実際は宿泊せずに宿泊している形だけとってもらえないかと頼んでくれた。
つまり公安に対してはずっとここに滞在している形をとり、実際は違う場所に宿泊する。
部屋は使用しないので宿泊費はかからない。
そんなふうに手配してくれようとしたのだけれど、結局不可能とのことだった。
一泊400元を超す宿泊費で、十日もここに宿泊したら負担が大きい。
そんなふうに気を使ってくれたのだけど、最終的にはこの十日間分の宿泊費はジャオユーさんが按排をとってくれ、実際は最初の一泊だけこのホテルに宿泊し、残りの日数はジャーユーさんの家や、または出掛けた先に宿泊することになった。

「ここは成都の一番中心部になるんだ」
そういって、目の前を指した。
そこには四川科技館があり、そのすぐ隣には大きな広場、天府広場があった。
数年前に成都一人旅をしたときに歩いて通りがかった記憶があった。
「ここは成都の中心に位置していて、昔は古い建物があったんだけど取り壊されてしまった」
そんな話をしていると、四川科技館のすぐ裏手が、目的地である出入境管理局だった。

出入境管理局はたくさんの人でごった返しており、外国人の手続きを行う三階には黒人白人、たくさんの外国人が手続きの為に訪れていた。
まずはインフォメーションで、ビザを取得したが出国して失効してしまったことを伝え、そこで必要な書類を受け取った。
一つは申請書、もう一つは日程表、それを記入したら一階自動写真機で顔写真を撮影し再度提出する。
日程表を細かく記入しようとしていた私は、これ全部書くのか~と覚悟をしたが、
「こう書けば十分だ」
そう言ってジャオユーさんは横から、「甘粛省、内蒙古」とだけ記入し、住所欄は先ほどのホテルの住所を記入した。
こんな簡単でいいのか?なんて思ったけれど、提出してみるとまったく問題なかったよう。
日本でビザ申請するのはけっこう厳密な審査になり厳しいが、案外現地の手続きは緩いよう。

「以前は7営業日必要でしたが、迅速な対応の為に5営業日に変わりました」
そんな表示が見えた。
窓口の女性は、「16日にはビザを受け取ることができます」と私たちに伝えた。
今日は9日。
16日までの一週間、私は成都に滞在することになる。
本来はこのあと蘭州に向かいその後新疆を転々とする予定だったが、この時点で新疆滞在予定をすべて放棄することに決めた。

成都に滞在している間、私のパスポートは管理局に預けたまま。
中国では列車に乗るにも長距離バスに乗るにも宿泊するのにも、また一部の観光にも、パスポートが必要になる。
そのため四川を出ることはできないが、パスポートの代替になる紙切れを受け取り、四川内であればこの用紙をパスポート代わりに使用することができると説明を受けた。


この一週間、ジャオユーさんは私に付き合い旅行をしてくれるという。
「出社する必要はないの?」そう訊ねると、
「年休を使って23日まで休みをとったから問題ない」という。
年休とは日本でいう有休のようなもので、けれども日本人が一般に持っている有休よりずっと少ない。
「貴重な時間を使ってしまい申し訳ない」そう言うと、
「あなたに‟付き合って”旅行するのではなく、‟一緒に”旅行するんだ。だから今後そういう話はしないように」
そんな言葉から彼の人柄が感じ取れた。

実はこの長期休みを利用して、もともとチベット方面に一人旅に出かける計画を立てていたそう。
そこへ私の友人が「マーヨーズの面倒を見てくれ」とお願いをしたが、最初は予定があると断った。
けれども数日前に私が中国版SNSである微信にアップした文章や写真を見て、その一人旅を放棄して私と旅行することを決めたのだという。
それならば余計に申し訳ない気持ちになったが、あえて口にしなかった。
ジャオユーさんもまた旅を愛する人で、数年前にはバイク三人で新疆からスタートし、東南を通過し、私と同じように昆明から河口を経てベトナム入りし、再び中国へ戻りぐるりと回り新疆に戻る旅をしていた。
旅を愛するから、私の事情もよくわかり、だから何も謝らなくていんだよ、と言ってくれた。

出入境管理局からジャオユーさんのマンションに到着してみると、彼の部屋は私の好きなもので溢れていた。
旅の写真や、中国各地の美景、歴史、地理などの本、写真集。
とりわけ私が深い興味を持つ新疆ウイグル自治区のものが多かった。
彼は成都人だが、子供の頃新疆で生活したことがあり、また大人になってからも新疆で仕事をしていたことがあった。
お父さんは写真家で、かつて新疆に生活しながら撮影を重ね、一冊の分厚い写真集があった。
あまりに美しい写真に溢れ、ため息をついた私に、「今度おくってあげよう」そう言ってくれた。

部屋で休みながら、かつて旅行した時の旅行記や写真を見せてくれた。
「この時には男三人で15日シャワーも浴びずに走ったんだ」
人煙もなく電波もないようなところを何日何日もかけて走るため、最初にみんなで頭を丸刈りにしたのだそう。
標高も4000mや5000mなどかなりの高地で、体調も崩した。
またある時には、友達が寝込み返事をしなくなった。
けれども病院なんかあるような場所ではなく、ようやく治療できる場所を見つけ処置してもらった時、頭の中に水がたまっていることがわかり、お医者さんの話によると、普通の人であれば命を落としていたのだとか。
そんな話も、無事に帰ってこれたから笑って話すことができる。
私は話を聞きながら想像を膨らませた。

しばらくおしゃべりに花を咲かせ、ジャオユーさんは私を夕ご飯に連れていってくれることになった。
私が火鍋が大好きだということで、四川を代表する火鍋のお店へ。

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しかし実は彼は肉類を一切食べないのだという。
以前はこのんで口にしていたけれど、今は一切食べない、というより口にできなくなったのだという。
「体質の問題?」そう訊いた私に、
「そうじゃない、動物の苦しみを想像すると口にできなくなったんだ」と答えた。
牛、羊、鶏、いっさい食べないけれど、魚は大丈夫なのだという。
「それならば火鍋は申し訳ない」そう言うと、
「お客さんには現地の味を体験してもらいたいし問題ない」とさわやかに答えた。
友達と食事するときにも肉類を食べないなんて言えないから、一緒に食事するし、野菜や魚を食べるから大丈夫なのだと。

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私の中国語の会話能力はとても低いけれど、気づけば単なる会話ではなくて話題は多岐にわたった。
これからの一週間、きっと楽しいものになる。
すぐにそれがわかった。

火鍋を食べ終えて、歩いてマンションまで戻りながら、一軒の小さなお店に立ち寄った。
よく一人でも飲みに来る場所なのだという。

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お店の外にテーブルが並び、そこで飲みなおした。
ビールに落花生。
この組み合わせは日本も中国も変わらない。
雨はそれなりに降っていて、簡易屋根の下で雨の音を聞きながらビールを飲んだ。
「多くの人は雨が嫌だというけれど、実は雨が好きなんだ」
雨には情緒があるから、ジャオユーさんはそう言った。
ここ数日、成都はずっと雨続きなのだという。
私の方も十日前に北京を出発してから一度も晴天に恵まれていなかった。
旅行時に雨を望まない私だけれど、どうしてか今日雨の日でよかったと思った。

歩いてマンションまで戻り、そこからバイクでホテルまで送りがてら、成都の街をドライブしてくれた。
ここは古いお店が並ぶところで好きなんだ、ここは学問の神様のお寺なんだ、そんなふうに教えてくれるのを聞きながら、わくわくし始めているのに気付いた。

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今回の旅のベースとして、今まで訪れたことのない場所に行ってみること、滞在時間は短くしてなるべく多くの場所に足を運ぶこと。
そんなことを重点にして旅の計画を立てたから、成都は単なる通過点に過ぎなかった。
成都は本来目的地として考えてはいなかったけれど、南部から西部に向かう際にどうしても経由しなければならなく、そういった必要性から立ち寄ることになっただけに過ぎなかった。
だからビザ失効により成都で多くの時間を使うことになってしまうことに、初めはかなりがっかりしたというのが本音だ。
「成都も楽しいですよ、これもまた旅の運命かも知れませんよ」
河口で中国語のQ先生が電話でそう言ってくれたことを思い出しながら、これからの一週間、いったいどんな楽しいことが待っているだろうと胸をときめかせた。

〈記 7月12日 成都にて〉


18年38天旅行◇昆明ー成都
北京ー合肥ー紹興ー昆明ー河口ー昆明ー成都


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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