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2018-08-23

38日間周遊 〈18日目〉 成都

2018年7月17日、昨夜は遅くまで一人麻雀台で二次会をやったが、それでもきちんとそのあと眠りについた。

朝起きるとジャオユーさんが、
「マーヨーズ、ロンさんに何か言ったか?」
なんのことだ?
ロンさんは新疆に暮らす私の友人だ。
ジャオユーさんがロンさんからのメッセージを私に見せた。
「ジャオさん、時間があるときに連絡してくれ、事情を知りたい」
ロンさんとジャオユーさんは男友達なので、もちろんジャオさんなんて呼ばない。
これは明らかに私の言い方をまねしているのだった。

ロンさんは、私が成都を通過するにあたって、初めは女性の知り合いを紹介してくれたが都合が合わず、そしてそのあとジャオユーさんを紹介してくれた、その張本人だ。
昨夜は酔っ払っていたが、一人二次会の時に一人あれこれ考えて、実は日本にいる中国語のQ先生に今の状況を伝えるべくメッセージを送ったのだった。
ロンさんはこのQ先生が紹介してくれた人であるので、たぶんQ先生がロンさんに連絡をとったのだろうということはわかった。
「ごめん、ロンさんには言ってないけど先生に言った」
勝手なことしたかな、と焦った。

ジャオユーさんは少し深刻な顔をして部屋を出て、外でロンさんに電話をかけた。
いつもの明るさはどこかにいき、しんみりとした会話が聞こえる。
「ずっと一緒に行動して…」
会話の内容が気になるが、声が小さくて所々しか聞き取れない。
「そう、まじめだ」
すでにジャオユーさんがとてもまじめな人で人をだますようなことをしないひとだということはわかっていたが、やっぱりこの言葉が聞こえて嬉しかった。

「勝手なことしてごめんね」そう言うと、
「なんで突然先生に言おうと思ったんだ?」
それは、9日に出会ってからずっと一緒に行動してきたので、一人になる時間というのがまったくなかったのだ。
だから携帯を触る時間すらなかったわけで、昨日はジャオユーさんが酔っ払って先に眠ったので、よしこのタイミングで先生に連絡をとってみようと思ったのだった。


私たちは朝食に出かけることにした。
もちろん、ここに来たら奶湯麺。
先日ここに来た時に大好物になった麺だ。
「これが食べたかったら平楽古鎮に来ないとって言ってたら、また来ちゃったね」
思いもよらぬ再会だった。

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最初お店の親父さんは間違って頼んでない料理も持ってきてしまったが、ジャオユーさんは一度は「これ頼んでない」と言ったものの、すぐに「いいよいいよ」と受け取った。
こういうところが優しいなと思う。


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そのあとパオさんと合流し、パオさんは平楽古鎮は初めてなので紹介がてら散策に。

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ここには竹製品や籠などがたくさん売られていた。
向こうには竹林もある。四川は竹の地域だな、と思った。

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今日も川は茶色く濁っている。
昨日は臥龍から下りてきたが、聞いたところによると、私たちが通過した後また雨が降り土砂崩れが発生し、通行止めになってしまったのだそう。
数日は開通しないだろうから、少しでもタイミングがずれれば帰ってこれなかっただろう、とのことだった。
うまい具合に成都を襲った豪雨を避け、また通過するタイミングで土砂崩れが片付けられ、また通過したあと土砂崩れが発生し通行止めになった。
なんとも運続きで奇妙な感じすらする。
「幸運だね」二人で言い合った。

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この後平楽古鎮をあとにし、パオさんたち車と並んで高速道路を走り帰り、途中で二日目に私たちが行った安仁古鎮へと案内しようとしていたが、奥さんのご機嫌がよくなくて、二人はそのまま新疆に帰ることにしたよう。
運転しながら二台はそれぞれ別方向の道路へ別れ、車の中からさよならした。


成都市区へ戻り、マンションでゆっくりすることになった。
くつろいでいると、今朝の件でQ先生からメッセージが入った。
「勝手にロンさんに連絡とってごめんね、彼が独身か知りたかったから」
先生は私のことをいつも心配してくれる。

私がそのことをジャオユーさんに伝えると。
「マーヨーズ、実はまだ伝えていないことがある」
そんな言い方のあとにある話はだいたい想像がついた。
「ずっと前に一度結婚したことがある」
新疆で生活していた時のことだそう。
「ずっとずっと前だし、子供もいない。問題あるか?」
ないかと言えばないわけじゃないけど、あるかといえば別にあるわけでもなく。
ジャオユーさんは私よりちょうど10歳上なので、その年齢で結婚したことがないならないで、なんで?ということにもなるし、そういう意味では、思った通りの話ではある。
「問題ないよ」と私は答えた。
私もつい最近、結婚しそうになったばかりだしどうこう言える立場でもない。


今夜はジャオユーさんの職場の上司たちから食事会のお誘いが入ったみたいだった。
「行ってもいいし、行かなくてもいい」
そう言ってくれたし、私は人見知りだからこういう場が苦手だけど、「行ってもいいよ」と答えた。
中国では上司はみんな‟領導”になってしまうので厳密な関係性はわからないが、‟大領導”が退職し、その人が来るので集まるのだということだった。
「マーヨーズ、煙草はすごく吸いたかったら吸ってもいいけど、できれば我慢して」
友達との食事会とは違う雰囲気を感じる。
「うん、わかってる。日本もそうだからわかる」
「日本人だということもあえて先に伝えないし、関係性も伝えない」
「うん、わかった」
日本人だっていうのは会えばどうせすぐわかるし、なんで伝えないんだろう、とは思ったけれど。

ちょっと緊張しながらお店に行くと、私たちが一番乗りで、やがてちらほらと集まりだした。
そして大領導が登場し、奥の席に腰かけた。
やはりどこか貫禄があり、私は少し緊張した。
ジャオユーさんが一人一人に私を紹介してくれて、その時点でみんな私のことを日本人だと知ることになった。
みんなとても好意的で、笑顔で接してくれてうれしかったし、この職場の人間関係の良さを感じた。
隣にジャオユーさん、私たちの左右にご夫婦。
このご夫婦の旦那さんの方は財務関係のポジションにいるので権力を持ってるんだ、なんてみんな冗談を言った。
奥さんは伝統的な中国女性といった雰囲気を持っていて、とても優雅できれいな人だった。
左手前に大領導が座り、その右手には、ジャオユーさんの女性上司であるワンジエ、その隣にジャオユーさんのよき同僚である男性が座った。

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ワンジエはとても豪快な女性で次々と白酒を乾杯した。
私もうれしくて乾杯に合わせるが、その度に隣でこそこそとジャオユーさんが言う。
「マーヨーズ、ゆっくり、少しづつ」
「飲みすぎちゃダメだ」
みながみなとても楽しい雰囲気で接してくれて、「日本のこと好き」と歓迎してくれた。
また、二人の未来が実るように、と祝福の言葉もくれた。
日本人であることも関係性も、言わなくても会えばわかってしまうことだった。
「私たちは日本に学ばなければならないことがたくさんある」
そうも言ってくれたし、この言葉は中国どこでも耳にする言葉だったけど、
「実は日本人がみな礼儀正しいというわけじゃない、それに私たちだって中国に学びたいところがたくさんある」
本心だった。
列に並ばないとか、運転が荒いとか、痰を吐くとか、清潔じゃないとか、そういうことではなくて。
私個人の経験では、人間的な部分で感動することが多い。
もちろんみんながみんなそうではないけれど。
私の職場は雰囲気があまりよくなかったから、飲み会も表面的な飲み会だった。
だからジャオユーさんたちの職場の雰囲気の良さに感動した。
それを言うと、
「中国だって同じだよ、みんなこんなふうとは限らない。でもこの職場は仲がいいからこうやってよく食事会するんだ」
今回のきっかけは、大領導。
彼は退職したと言ったが、厳密にはまだ退職していなくて、単に出勤しなくなっただけだということだった。
どういうこと?と最初はわからなかったが、定年の三年前に出勤しなくてもよくなり、お給料はそのまま出るけれども、在籍しながらも事実上の定年退職、というふうになるみたいだった。
いいシステムだ。
ジャオユーさんも三年はやく退職しそのあと旅をするのが夢なんだ、と話した。

場はたのしくお開きとなり、最後までよくしてもらい、私たちふたり見送られて出発した。
バイクに乗って向かったのは成都の繁華街で、高級店がたちならぶエリアだった。
私が成都の夜景を見たいというので連れてきてくれたみたい。
「中国人はこういう高いものを買って自分をアピールするんだ、でも自分はそういうのが好きじゃない」
彼は言った。私もそれは同じだった。
車も、みんな高級車を買う訳というのは、自分はこんなにお金持っているんだって伝えたいからなんだ。
自分だったら、目的、必要な機能、それからコストパフォーマンス、そんなのを重視するから高級車は買わない。
中国人はなんでも、お金、お金、だ。
「そうだね、私もそう、もしお金があったら高級品じゃなくて旅行に行きたい」
そういうと、「定年したらランドクルーズを買って、マーヨーズと一緒に旅に出るのが夢なんだ」そう言って笑った。

ここからまたバイクに乗り、
「次に連れていきたいところがあるんだけど、ちょっとリスクがあるんだ」
ジャーユーさんが言った。
リスクってなんだろう?

途中、商店でビールを二本買い、向かったのはある大きなビルだった。
「マーヨーズはしゃべらないで」
そういって、守衛さんに交渉しはじめた。
交渉は難儀しているようで、「10分だけだから」と何度もお願いしている。
なんとかようやく了解を得たようで、「マーヨーズ、急いで!」
ジャオユーさんは小走りにエレベーターに向かった。
あとから分かったことだけれど、守衛さんにチップを渡したのだった。

エレベーターを降りたのは最上階。
そこは最上部の機械室だった。重低音が響いている。
機械室を避けて扉をあけて外にでると、屋上だったけれど、人が出入りすべきではないような屋上だった。
通れるところを探して進み、角に行きついたところで、隅にころがっていた木製の簡易はしごを持ってきて壁にかけた。
ジャオユーさんが先に登り、私もあとに続く。
梯子を上り、頭を出したとき、思わず声を上げてしまった。

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そこには成都の夜景が広がっていた。
ビルにはいちめん明かりが灯り、下を見下ろせば車がたくさんせわしなく行き交っている。
遠くクラクションの音がこちらまで響いてくる。
まだ眠らない成都の夜。
振り返ればマンションがひろがり、数え切れないほどの明かりは一つひとつ人々の営みだった。

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私たちは梯子からコンクリートの壁に登り、腰かけてビールを開けた。
ここには簡易な鉄策が一本横にのびているだけ。
油断すれば落ちてしまうし、落ちたら命はない。
高所恐怖症の私は一瞬ひるんだけれど、ここから離れようとは思わなかった。
夜風が不規則に舞い、それがここちよかった。
「今私は、成都で一番高いところにいるね」
そういうと、
「実を言うとここは‟一番”ではないんだ」
もう一カ所あるけれど、それは次回連れていってくれると約束してくれた。
それでも、私がいままで目にしたことのあるどんな夜景よりも、うつくしい夜景だった。

その後、私たちはふたたび梯子を下り機械室へ戻ろうとしたけれど、どこをあたっても扉が鎖で施錠されてしまっていて、暗闇の中、登ってきた時の扉を見つけることができなかった。
ようやく一つ鎖の緩い扉を見つけ、その扉と鎖のすきまをくぐり、エレベーターに戻った。
「今までの離婚も旅も出来事も、すべてマーヨーズと出会うためのものだったんだ」
私に言うでもなく、つぶやく言葉が聞こえた。

〈記 7月25日 酒泉にて〉

⇒ 38日間周遊 〈19日目〉 成都 へ続く

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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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