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2018-08-23

38日間周遊 〈21日目〉 漢中ー西安

2018年7月20日、漢中で一晩を過ごし、今日は西安に向かう。
朝目覚めるとジャオユーさんは腕立て伏せをしていた。
この十日間鍛錬していないのでまずい、とのことだった。私も見習わないといけない。

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ホテルをチェックアウトして朝ご飯に向かったのは、「麺皮」のお店だった。
麺皮はここ漢中の名物のようで、その中でも老舗だというお店に入ってみた。

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頼んだのは麺皮に豆腐に凉粉。

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麺皮はこのように幅広麺。さらにこれが辛い。
今日は猛暑になりそうな予感で、汗だくになりながら食べた。

私がいつも一人旅で困るのは、何を食べていいのかわからないこと。
これだけ中国旅行を重ねていても、名前だけでどんな料理か想像するのは難しく、また特色料理も事前に調べているとは限らない。
料理名もせいぜい材料と調理法がわかるくらいで、頼んでから「しまった」となることも少なくない。
それでお店の前をうろうろしたりしてなかなか決まらない。
ジャオユーさんと過ごしたこの十日間、こうしたことが一度もなかった。
彼はいつも「**を食べに行こうと思うけどいい?」と私に希望を訊いた。
私はもちろんその提案を聞く。
結果、連れて行ってくれたお店、私に迷わせることなく自ら選んでくれた料理はどれもおいしかったし、仮に多少口に合わなかったとしても、どれも「現地の特色な味覚」という私がなによりも嬉しいものだった。
私であれば、外国人を迎えてこれほど要領よく物事を進めることはできない。

猛暑の漢中の街に出て、さぁ今日はどこへ行こうという話になった。
西安へは夜までに到着できればいい。
漢中にあるのは大概が三国志関連の史跡や観光地である。
私はこの方面に疎いので、どこに行くでもよかった。
「ここは再建されたものでおもしろくないし、ここは時間がかかるし」
そんなことを言いながら、結局、「武侯祠」へ向かうことにした。
記憶が定かではないけれど、漢中市区から20㎞ほどのところにあったかと思う。
武侯祠は諸葛亮を祀る廟で、中国にはいくつかのそれがある。
「成都市区にもあるね」
以前一人旅で成都を訪れた際にも成都市区の武侯祠へは行ってみたけれど、残念ながら時間が遅く閉まってしまった。

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武侯祠に到着すると、予想に反してそこはひとつの三国志テーマパークになっていた。
広い敷地内に、三国志をテーマに建設された部分と、飲食店やお土産が並ぶ部分と、それから本命である武侯祠がある。

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駐車場にはいきなり孔明のがらがら椅子のオブジェ。

入場は60元、けっこう高い。
ジャオユーさんは「ガイドなので一人無料にしてほしい」と頼んだがダメだった。
中国では、現地の人は無料とかガイドは無料とかそういうのがあるのだ。

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猛暑の中、武侯祠へ。
創建は263年、数ある武侯祠の中でももっとも古く、また唯一皇帝の名のもとに建設されたものであることから、天下第一武侯祠の名がある。
中国が大好きな‟天下第一”の修飾語。

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一列に門や建物が並び、一つひとつそれらをくぐって奥に進んでいく。

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最奥の大殿の左右には三国志の英雄たちの像が並ぶが、私には誰がどれかわからない。
一番端にあった馬超と趙雲のみ、あぁこれかぁというレベルで申し訳ない。

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天井にはたくさんの額。
そのほとんどは清代に架けられたものだったかと記憶する。

左右には石碑。
大殿の内部には神様となった諸葛亮が祀られていた。
テーマパーク化されているといっても、それは敷地内にそういう場所があるというだけで、この武侯祠自体は静謐とした雰囲気を持っていた。
建物や展示されたものはどれもみごとだったし、極端な話をすれば三国志がわからなくても、仮にここが諸葛亮を祀ったものであることを知らなくても、その雰囲気を楽しむことができる。

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この武侯祠の裏に進んでいくと、テーマパークに抜けた。

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「ここは見なくていいよ」とジャオユーさんは言い足早に進む。
そこにはいかにもぬるそうな池があり、作り物が浮かんでいた。
「これ、赤壁のあれだね」
矢が足りなくて、孔明が三日で十万本調達して見せましょう、といったあれだ。
藁人形を乗せた船を曹操率いる魏軍に向けて流し攻撃させ、放たれた矢を手に入れた。
本当にそんふうにうまくいったのかな、なんて思うけれど。

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再び高速道路に乘り、漢中を去ることになった。
次の目的地は、西安。
私たち最後の旅先だ。

道中、ジャオユーさんと日本語と中国語の教え合いっこをした。
彼はどうしてもイトーヨーカドーを習得したいらしく、
「イ、ト…なんだっけ?」の繰り返しで、
それよりも「ありがとう」とか「ごめんなさい」を勉強しようよ、と私は言った。
でもごめんなさいはごめんなさいでも、使い方は中国と日本では違うよね。
日本人は挨拶みたいな感じで軽くごめんなさいを言うから、やっぱり便宜上それぞれの言葉に翻訳されても、言語や文化が違う以上、どんな言葉も完全なイコールにはなりえない。

ジャオユーさんは私に、陝西省の方言を教えてくれた。
これから向かう西安は陝西省の省都である。
教えてくれたが文字で教えてくれたのではなく口語で教えてくれたので、何度練習しても覚えられず、それどころか発音がむずかしずぎてまったく使いものにならない。
「ところでこれ、どういう意味なの?」と訊いてみると、
人をののしる時に言う言葉だという。
変な言葉教えないでよ、と思うも、私が言うとジャオユーさんが笑うので何度も練習した。
「これ、他の人に言ったらわかる?」
「わかるよ」
陝西省以外の人でも聞き取れるののしり言葉らしいが、標準語である普通話と全然違う。
他にもののしり言葉や悪態を教えてくれたが、それがどういう言葉だったのかここに書く勇気はない。
日本語ではどうやってののしるのか訊くので、考えたあげく「ふざけるな」にしてみた。
「でも感情的になっている時には‟ふざけんな”になったりするよ」
もっと先に勉強すべき日本語があるはずなのに。

道中は楽しくて、私は、
「帰り道、長いから気を付けてね」と言った。
すると、「まだ一緒にいる時間が残っているんだからそういう話はしない」

「11日間、ずっと一緒にいたんだよね」
「明日もあるから12日間になるな」
私は人見知りが激しいから、このことは奇跡のようだった。
「昼間も夜も、寝る時もシャワーの時もトイレに行く時も、離れることがなかったな」ジャオユーさんは言った。
部屋を別にとった時も隣同士だったし、トイレも外で待ったりしていたから、ほんとのほんとに、出会って以降、離れることがなかった。
「一番離れた時で20m」
そう言って二人で笑った。
「不思議な感覚があってね、なんだか知り合って11日っていう気がしないよ」
一年くらいお付き合いしたような感覚があった。
「それはこっちもそうだよ、もう長く一緒にいる気がする」
ジャオユーさんは理系らしく説明した。
自分たちは毎日ほぼ24時間一緒にいたから、この11日で合計264時間一緒にいたことになる。
あるカップルがいるとして、週に二度デートするとする。
会う時間を一回三時間としよう。そうしたら一週間に六時間、割ると…ほら。
たった11日でも、その間離れることがなかったんだから、単純に時間だけの話でいえば、一年付き合ったカップルと同じくらいの時間一緒にいたといってもいい。
こんな経験は初めてだと、お互いに話した。

「それからまだ不思議でね、本来は私たちは出会う予定ではなかったんだよね」
ロンさんから成都の友達を紹介してもらっていたけど、都合が合わないみたいで「いいよ一人行動するから」となっていた。
それが急にジャオユーさんを紹介されて、せっかくだからお勧めのところがないか訊いてみた。
いずれにしても一人行動するつもりだった。
ジャオユーさんの方も、一人旅に出る計画があったから「悪いけど時間がない」とロンさんに何度も断っていたそう。
お互いに会うつもりはなく、ロンさんが動いていただけだったのだ。
そこに私のトラブルが発生した。
もともとは、旅行をスタートして早一週間、入国一度のみという条件のビザであったのにも関わらず、私が安易にベトナムに入国してしまったことに始まる。
これは普通に考えてありえないことだった。
これによりビザ再申請の手続きが必要になってしまった。
予定のルートでは河口のあとに昆明に戻ることになっており、昆明には手続きができる入境管理局があった。
けれどもあいにくの土日で、ちょうど月曜日に成都に到着する予定になっていたので、昆明でなく成都で手続きをすることになったのだった。
土日でなければ、成都行きをやめて昆明で手続きをしていただろう。
また40日ビザを失効させてしまった日にちは、再申請をして残りの日数滞在するのにぎりぎりのタイミングだった。
そこにまたタイミングよくジャオユーさんが面倒を見てくれることになり、一緒に旅行することになったのだった。
また私が結果成都に滞在することになった日程と、ジャオユーさんが休みを申請していた日にちがぴったり合っていたことも。
ジャオユーさんは旅先の天候があまりよくなさそうだということ、それからSNSにアップした私の記事を見て共感し、せっかくとった長期休みを私に使うことを決めてくれた。
私と知り合うのもひとつの旅みたいなものだと思った、と初日に話してくれた。

「成都站で初めて出会った時、好きになるかもしれないという一つの予感があったんだ」
神妙な口調でジャオユーさんは言った。
彼はすでにロンさんから私の事情を聞いており、婚約がダメになったが会社はやめてしまい、という状況を知っていたそう。
だから私が独身だということはわかっていたみたいだけど、私の方は違う。
成都站で初めて出会った時、私も同じような予感がした。
けれども間違いなく結婚していると思ったし、マンションに行きそして話をしていくうちに、女性の気配がないことを感じてはいたけれど、出張かも知れないしと思っていた。
私たち二人とも、みずから出会いを探しに行く気はなく、縁がなければ結婚しなくてかまわないと思っていた。
そんなところも共通していたし、そんな二人に舞い降りた縁だった。
縁って不思議だな、と思う。

一方で私はこの旅行を終えたら日本に帰らなければならない。
始まったところでどうするんだ、とも思った時もあった。
現在の私は職もなくお金もない。
この先、仕事をどうするのか。
中国にまた来れるのかも、わからない。
けれども真剣にこの先のことを考えてくれるジャオユーさんの姿を見て、不安はなくなった。
十月には私の誕生日。
その時にまた成都を訪れることになっている。


色々たのしい話、真面目な話をしながらドライブしてきたが、突然ジャオユーさんが私のしゃべりを遮った。
「ところでマーヨーズ、大事な任務がある」
彼の示す先にはガソリンメーター。

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メーターが底辺を指している。
走るのは山の中、ガソリンスタンドの気配もない。
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながらも数十㎞、ゼロメーターで走り始めた。
時には軽い下りでエンジンを切って車をすすめた。
「マーヨーズはこんなことしちゃダメだよ」
エンジンを切るということは他の機能も使えなくなるということだから危ない。
こんなところで止まってしまったらどうしよう。
ゼロメーターでこんなに走るとは驚きだった。
ながらくハラハラの運転をしたあと、ガソリンスタンドのある休憩区の看板が出た。
7㎞先である。
その先にすぐトンネル。トンネルは6000m超の表示があったから、これを越せばやっと安心できる。

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「これも一つの旅の思い出、そうだろう?」
ジャオユーさんはどんなときも焦らない。
焦ることもあるだろうが、それを私に見せることはない。

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こうして無事ガソリンを補給し、再スタート、18時半には西安入りした。

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市区に入り、予約したホテルにチェックインした。
西安には二度来たことがあった。
一度は9年前の西安旅行。その次は敦煌旅行の際に経由で訪れた。
あの時と同じ街のような感覚がしない。
それは西安の街が変化したからなのか。
それとも私の方が変化したからなのか。
おそらくその両方なのだろう。

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ここでジャオユーさんの友達と一緒にご飯を食べるということで、ホテルで彼が仕事を終えやってくるのを待っていた。
その友達とは軽く食事をして、そのあとマーヨーズを連れて回族街へ行って烤羊肉串をごちそうする、お酒を飲もう、そう話していた。
明日は20時半の夜行列車で西安を去り嘉峪関に向かうから、これが最後の夜になる。

ところが、やってきた友達は車で来てしまったため、お酒を飲めなくなった。
さらに雰囲気のある小吃街に連れてきてくれたけれど、どうも違和感がある。
私は一人でふらふら歩き、その友達とジャオユーさんが並んで歩く。
うーん、最後の夜なんだけどな、と苦い思いがするも、私は私で楽しんで男同士の世界を邪魔しないことにした。

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やがてある一つのテーブルで小吃を食べることにした。

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お友達が買ってきてくれたのは豚足。
お友達が席を立った時に、
「彼、あなたがお肉食べれないこと知らないの?」と訊いてみると、
ジャオユーさんは向こうで焼餅を買ってきてそれを食べ始めた。

やがてお友達が戻り一通りおしゃべりしたのち、
「それじゃあ自分たちは二人でてきとうに回るから」
ジャオユーさんは暗にお開きをうながした。
ところがこのお友達、まったく通じない。
実は電話でのやりとりからずっと私は見ているので、このやりとりがずっと交わされてきたことを知っている。
お友達はがんとしてゆずらず、今夜最後まで付き合い、さらには明日も付き合い、さらには西安站まで送り最後まで見届けてくれるという。
気持ちはうれしいけれど、それは勘弁して~。
二人の最後の時間、駅まで来られたらどうしよう。
結局最後はなかば強引に彼を追い返すことになった。

「二人で行動するから、帰れ!って言ったんだ。まぁそんな風には言ってないけどな」
ジャオユーさんが言った。
「うん、わかるよ」
ジャオユーさんは人に対して決して悪く対応しない。
「最後の二人の時間なくなっちゃうと思ったよ」そういうと、
「彼は相手が何を望んでるかわからないんだ、二人の世界なんて考えない。だからああなる」
そうため息をついた。

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結局私たちは二人になって、回族街へ行くのは明日にして、今夜は歩いて近くで食べることにした。

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ジャオユーさんはビールを、私は白酒をいただく。

そのあと商店に行きビールを買い、ホテルに戻って二人飲んだ。
名残惜しくてなかなか眠れず、1時、2時、とうとうソファーでジャオユーさんが先にダウンした。
私はいったい何時まで起きていただろう。
眠ってしまえばすぐに明日が来てしまう。
眠っても眠らなくても、時間はいつどこでも平等に流れているのだというのに。

〈記 7月26日 中衛行き列車にて〉

参考:
武侯祠 60元

18年38天旅行◇漢中ー西安
北京ー合肥ー紹興ー昆明ー河口ー昆明ー成都ー漢中ー西安


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Author:まゆ
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中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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