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2018-08-22

38日間周遊 〈36日目〉 成都

2018年8月4日、こんな状態で眠れない、どうしよう、そんなふうに焦ったのに、私の‟生物時間”はきちんと働き、いつのまにか眠りについていた。
昨晩はつまらないことで話がこじれ、「北京へ帰る」なんて思ってもいないことを口にしてしまった。
新しい朝を迎え、昨日のことはなかったことになってないかな。
昨日はお酒が入っていたから、アルコールが抜けた今はちゃんと仲直りできるよね。
ジャオユーさんがいつもみたいに無邪気な顔で「宝貝」って私のことを呼んでくれれば、全部元通りだ。
そう思ったものの、ジャオユーさんに無邪気な笑顔はなかった。
それならばマーヨーズ、あなたが笑顔でおもしろいことでも言えばいいんだよ、そう思ったけれど。

「昨日の友達と微信交換したよ、まだ返事返してないけど」
一応伝える。
「いつ?マーヨーズが求めたのか?」
「違うよ、あなたがトイレに立った時に訊かれたんだよ」
断ったけど伝わらなくてこうなった。でもまだ応じてないよ。
そう言うと、「応じる必要はない、彼はマナーがない」
「日本では友達の恋人に連絡先訊くのは失礼だし、席立った時に訊くなんてありえないよ」
「それは中国でも同じだ、問題ない。彼には言っておくから返事はしなくていい」
そういうことになった。

18080414.jpg

そのあと、ジャオユーさんは私のそばにあったキャリーバックの上に、ぽんとストールを投げた。
「これ、前に言ってたの」
一人行動中に、チベットのストールが手に入ったから私にくれると、そう話していたのだ。
私はそれを受け取るのをとても楽しみにしていた。
でも、わがままだけど手渡ししてほしかった。
ジャオユーさんから受け取って、「ありがとう」と言って喜びたかった。
「すごく楽しみにしてたから、こんなふうなの、少し残念だな」
ついそんな言葉が出てしまった。
すると、「残念て?あの友達と連絡先交換できなかったことが残念なのか?」
違うよ。ストールだよ。なんで終わった話なのに昨日の友達が出てくるの。
私たちはなんだかこんがらがってほどけない糸みたいになっている。

ぎくしゃくした感じで、私たちはマンションを出て朝ご飯に向かった。
朝ご飯は舗盖麺。

1808041.jpg

お店は違うけれど、ジャオユーさんと知り合った最初にも食べさせてもらった、幅広の麺。
会話もなく食べるが、おいしいものはおいしい。

「イトーヨーカドー行って何か買う?」
ジャオユーさんが訊いてきた。
イトーヨーカドーは私たちの間でしばしば話題にあがり、ジャオユーさんは日本語の発音をマスターしようとしてなんども練習してはうまく発音できなくて、大笑いしたのだった。
「行かなくていい」
買うものもなかったのでそう答えた。
昨日のぎくしゃくで私のテンションは落ち、買い物なんて気分ではない。

沈黙ののち、「今日は外で食事しないで、イトーヨーカドーで食材を買って家でつくろう」
ジャオユーさんはそういい、そういうことになった。

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イトーヨーカドーへ入ると、日本食屋さんがあった。
上野の桜。
覗くと回転寿司のようだけど、テーブルには中華式火鍋。
日本のしゃぶしゃぶやお鍋ならわかるのだけど。
「これ絶対中国人がやってるお店だよ」

私たちは食材売り場へ。
現代、中国でも日本の物がたいがい手に入る。
さらにここは日系のお店なので、スーパーもなんだか日本とそう変わらないように見える。
けれどもよく見ればもちろん日本のそれとは違うところがたくさん。
売られている魚の種類、肉や魚の味付け方法。

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こちらは果物売り場にてハミ瓜。
新疆直送の文字。

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こちらは麺売り場。
ゆでるだけの抄手や麺の種類の多さは、中国ならでは。

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餃子のコーナーも。
生地の種類も豊富で、餡も売られていて包んでゆでるだけ。

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こちらは中国で人気の‟百梦多咖喱“、バーモントカレー。
でも実は配合は日本のものとはちがうのだそう。嫌いな八角が入っているので私にはダメかな。

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こちらはタコ焼き屋さん。
伊藤名物、明石のタコ焼き、とある。
セブンイレブンと合併し日本では見ることもなくなった、青と赤のハトマークはこちらでは健在。
奥にはすき家のすがたも。

私はふらふらと市場チェックに出かけ、ジャオユーさんは食材を選びカゴに。
こうして買い物を終え駐車場に。
重くて破れそうなビニール袋。
ジャオユーさんが持っているのを片方もらい、ひとつの袋を二人で一緒に運ぶ。
でもやっぱり会話はなし。

部屋に戻り、やはり私たちは別々のソファーへ。
お互いに笑顔はなく話題もなく、気まずい空気が流れる。

「マーヨーズ、決めたのか?」
突然、ジャオユーさんが暗い口調でそう言った。
「決めたってなにを?」
「決めたのか?」また訊いた。
「決めたのは私じゃない、あなたじゃないの?」
笑顔がないジャオユーさんに不穏な空気を感じ、そう答えた。
「マーヨーズが決めたことに何もいうことはできない。でもこれで別れるのは苦痛だ。苦痛だけどどうすることもできない」
確かにここで北京に帰るということは、ほぼ別れを意味する。
「私北京に戻りたくないよ、ジャオユーさんと一緒にいたい」
この一言で解決した。
最初から思ってもいないことを言わなければよかったし、言ってしまったあとも早くこういえばよかったんだ。

彼は手元のスケッチブックを取り出し、書き出した。
「マーヨーズのヒアリングには問題がある。今後はこうなったら絵を書いて話そう」
そういって次々と絵や文字を書き出していく。
ジャオユーさんは絵を描くのが上手でよく絵を描くので、常にそばにスケッチブックがあるのだ。
「自分の思考はこう」
そう言って描いたのは、平行線のきれいな複数の線。
「マーヨーズのはこう」
そう言って線を描きだしたかと思えば、突然めちゃくちゃになった。
「それから昨日の友達のはなし」
彼はちょっと空気が読めない。
彼から連絡が来て、「ご飯食べた?」って訊いたのはひとつの社交辞令だったんだけど、彼はごちそうになりに来てしまったうえに、空気を読まない。
二人の世界を大事にしたいのに、ぜんぜんわからない。
ひいては自分の思うままにしゃべりたいことをしゃべるから、内心ではいろいろ思ったんだ。
「これが彼」
ジャオユーさんはスケッチブックに小さな丸を描いた。
「これがマーヨーズ」
小さな丸の下にスケッチブックからはみ出るような大きさで、私の名前を書いた。
ジャオユーさんは字も達筆で絵も上手。
そんなのがすらすらと書き出されていくようすはとても美しくて、そばから覗き込んでいるだけで楽しかった。
私も負けじと絵を描いてみると、
「すごい、マーヨーズの絵の才能はなかなかだ」
そんなふうに褒めてくれたかと思えば、「幼稚園の展覧会に出せばいい」と撃沈。

ジャオユーさんはいつも通りのテンションが高いにこにこの彼になり、キッチンへ向かった。
ジャオユーさんが準備をしている間に、私はテーブル周りをととのえる。
やがてジャオユーさんは買ってきた海老とボールを持ってソファーまで来た。
並んで座って、二人で海老の処理をしていく。

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その後、キッチンで調理。
「簡単な料理だけど」
そう言いながらも細部に彼の腕があらわれている。
包丁も数種類あり、調味料もたくさん。でも余分なものは置いていなくてとてもシンプル。
白い包丁は陶器の包丁だ。
一つひとつの作業を私に説明しながらつくってくれた。

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リビングに持っていき、さっそくいただく。
お箸は使わないで素手でいくのが楽しい。
開けたのはキリン一番搾り。
こうやって一つ作っては食べて、食べ終わったら次のを作る。

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次はふたりビールをキッチンまで持っていって、飲みながら次の料理を作った。
次に開けたのはベトナムの川魚。
冷凍品をボールに開けて下ごしらえして放置。
先にいただくのはブロッコリー。

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簡単なようだけど味付けは日本のものとは違う。
これもとても美味しかった。
ビールはどんどん空いていく。

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次は先ほど下ごしらえをして‟寝ている“白身魚を起こす。
ムニエルかなと思いきや、調味料が違う。
烤肉につかう調味料、唐辛子と孜然粉をつかうのだ。
この風味はほんとうに中国そのもの。
特に新疆ウイグル自治区を思い出す。

18080415.jpg

時刻は19時半。
成都の街もようやく西日がかげってきた。
成都は意外と内陸にあり、北京が標準時間である中国において、日が落ちるのが遅い。

明日は実質最後の一日だ。
明後日は早朝に成都を発ち北京に向かい、その後日本へ帰国する。
38日間の旅程もいよいよ幕引きとなるが、それよりもジャオユーさんと過ごす時間があと一日なのだということが寂しかった。
思い立って成都へ舞い戻ってみたが、その時間もあっという間に終わってしまう。
私はただ、寂しいお別れを二回経験するためにここに戻ってきてしまったのかな。
そんなふうに思ってしまう時もあったけれど、でもやっぱり来てよかった。
「明後日の北京では…」
そうふと口にした私に対し、ジャオユーさんは遮った。
「まだ明日があるんだから、明後日の話はしない」
すでに馴染んだこの部屋で、ゆっくり食事をしながら、暮れていく成都を眺めながら、一刻一刻を噛み締めた。

〈記 8月12日 自宅にて〉


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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