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2018-08-22

38日間周遊 〈37日目〉 成都

2018年8月5日、最後の一日は遠くへは出かけず市内でゆっくりすることにした。
すでにお昼となり、お昼ご飯に出かけたのはあるお店だった。
「鶏家店に行く」
ジャオユーさんはそう言って、ある一つのお店に入った。
お店は大きくりっぱできれいだった。
マンションを出てすぐに激しい雷雨に襲われた私たちは、傘を持ち合わせていなかった。
それでも駐車場にはお店の従業員が待機し、傘を差しだして対応してくれた。
なかなか立派なお店なのかな、という印象。

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私たちはあえて、屋外の屋根の下に席を選んだ。
「雨ひどいですよ」
そういう店員さんに、「ここがいいんだ」と席を指定。

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頼んだのはこの四品。食べきれるか心配になる量だが、ジャオユーさんは最後の一日、私にごちそうしてくれようとして選んでくれた。
最後の真っ赤なお皿には魚が三尾沈んでいる。
雨は激しくなる一方で、時折はげしい雷が私たちを驚かせた。
私はほんとうに成都の太陽に縁がないらしい。
合わせて二週間ほど四川に滞在したことになるが、そのほとんどが悪天候で太陽となると一度も見なかったような。
そういうと、「自分にとっての悪天候は雨かどうかじゃなくて、暑いかどうかだから、今日は好天気だ」
ジャオユーさんはそう言って笑った。

料理は十分においしかったが、ジャオユーさんは納得がいっていないみたいだった。
「味が変わったな」
それからこうも言った。
「ここはもう鶏毛店じゃないな」
以前、ここは鶏毛店だったんだ。それでマーヨーズに鶏毛店を体験させてあげたくて来たのに、お店が変わったみたいだ。
鶏毛店とは、四川特色の味をそろえるお店の名前のようで、たくさんの支店があるのだという。
小さくて安い、そんなお店なのだという。
彼はその鶏毛店が目的だったようで、実際このお店には鶏毛店の文字を看板に掲げていた。
ところが、その上にはさらに違う店名が掲げられていた。

「中を見てごらん、ああいう部屋があるだろう?」
彼が差す先を見ると、お店の中には円卓のある個室があった。
「この店にはね、前はこういうものはなかったんだ」
けれども人気店だからたくさんのお客さんが来て儲かったんだな、それでお店を改装し新しくし、あんな部屋まで作った。
でもこういう部屋は作るべきではなかったんだ。
一度は成功し、料理も経営方針も変えた。
しかしそれは間違いだった。
自分が見たところによると、ここのオーナーは失敗した。
お店が変わり味が変わり、お客が来なくなった。
彼は高級車に乗っているが、買った時にはこういうふうになるとは思っていなかったんだろうな。
経営には大事なことがあって、変えるべきところと変えてはいけないところがある。
それを見誤ってはいけないんだ。
方向性を見誤ることなく継続し、揺るがない信念を持ち、約束したことは遵守する。
こうしてこそ百年老店となれるんだ。
ジャオユーさんはそう言った。
私に鶏毛店を紹介したかった彼は、私が帰国してからも「あのお店は鶏毛店の偽物だ」と度々いった。

食事を終えて向かったのは、遊びにではなく、用事だった。
ジャオユーさんのお母さんは成都の古いお宅に暮らしているが、郊外にもう一つマンションがあった。
冬場は成都は空気が悪くなるから、状況に応じて住むところを変えたいと以前食事をした際に話していた。
そのマンションの内装を変えるということで、タイルなどの資材を見に行きたいのだという。
「お母さんの部屋なのにお母さん見なくていいの?」
「いいんだ、いいんだ、見たってわからないから」
そう言っても、やっぱりジャオユーさんのセンスが認められているからだと思う。

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車が入っていったのは巨大な市場だった。
中国ではよくこのような様々な店舗の集合地帯を見かけるけれど、それはこういうものだったんだ。
一つひとつは建築や内装にかかわるものを売るお店。

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タイル、壁紙、電飾、さらには取っ手や蛇口や細かな部品、そしてトイレまで。
ありとあらゆるものの専門店がすらりと建ち並んでいて、その規模はかなり大きい。
ここまで細かいと、本当に自由自在に自分好みの部屋ができるなぁと驚いた。

「日本では専門の会社に依頼して内装をやるよ」
ここでこれらの部品やなにやらを購入しても、設置はどうするんだろう。
「ここで買っても、あとでそういうことができる業者に依頼することになるんだ」
それならば便利なのかそうじゃないのかよくわからない。
「生活なんてシンプルが一番、そんなにいろんなものは必要ない」
そう呟いたジャオユーさんだったが、お母さんの部屋につかうタイルにはとてもこだわり、なかなか決まらない様子。
一軒見て、もう一軒。
私はこっそりと離れ、市場散策に出かけた。

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ジャオユーさんは結局ここで購入しなかった。
「実はここは少し安めの市場で、もう一カ所あるんだ」
そこには後日行くよう。

次にやってきたのは、「寛窄巷子」。
私もガイドブックでその存在は知っていたけれど行ったことがなかった。
ここは寛巷子、窄巷子、井巷子という三本の路地が平行に並ぶ観光地。
古い建物が一部残り、飲食店などが入り観光地として整備された場所だ。
「現地の人はいかないけど、観光客はみんな来るんだ」
ジャオユーさんはここにまったく魅力を感じていないよう。

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路地に入る前には、壁に古い成都の地図を描いた図が時代別に並んでいる。
城壁があって、お城があって。
真ん中の蜀王府っていうのは。
「そう、“成都の中心”だ。ビザの手続きをしたところだね」
成都に着いた時、古い建物があったけど取り壊されてしまったのだとジャオユーさんが説明してくれたところだった。
「ジャオユーさんの部屋はこの辺かな?」
この辺に一環道路が通って、この辺に二環道路かな?
そんなふうに想像してみる。

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当時の古い城壁をここに移したものも。

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中国、とりわけ四川は可愛くないパンダの宝庫で、今回の旅で可愛くないパンダに出合うと写真を撮る習慣ができてしまった。
ここにあったのはパンダグッズのお店。
パンダのTシャツから食器など。
「ほしいものある?」そう訊かれ、
「うーん、今はいいや」

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寛窄巷子はうんざりするほどの人混みで、うだるような暑さも加わり、楽しんでゆっくり観光する気分にならない。
古い建物はちらほらと残るが、そのすべてが現代の服や何かを売るお店に変貌し、現地人は来ないが観光客は来るというのが納得できる。
さらに今日は日曜日で、特に人出が多いことだろう。

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ジャオユーさんが連れてきてくれたにも関わらず、彼はすたすたと先を行く。
「ジャオユーさん、つまんないでしょ?」
そう訊いてみると、「うん、ここにおもしろみはない」

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そうして寛窄巷子の散策は、散策というより通過し、終わった。
このあと道すがらお酒と煙草のお店に寄り数種の白酒の小瓶を買い、向かいの市場で食材を買って帰ることに。
今夜も外食はせずに、ジャオユーさんが食事を作ってくれる。

市場には果物、野菜、肉、魚介、調味料、麺、などで売り場が分かれている。
ジャオユーさんは肉を食べない。
昨日イトーヨーカドーで買った食材のうち、牛肉が残っていた。
彼はそれを食べることができないので、今夜私が食べる。
なのでここで買いたいのは肉以外、ジャオユーさんは魚を調理してくれるよう。

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魚売り場にはカエルも。
すがたそのまんまでも食べることができると自信がついたカエルだったが、それでも生きた状態を見るのは抵抗がある。

買ったのは桂魚という魚。鱗の処理などは売り場の人がやって手渡してくれた。

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それからデザートに山竹という果物。
中国では頻繁に出合うけれど、ナイフを持つことができない私には無縁の果物だった。
それを話すと、ビニール袋一杯買ってくれた。

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マンションに戻り、最後の夕食の支度にとりかかる。
買った白酒とビールは冷蔵庫へ。

ジャオユーさんがキッチンを片付けている間に、私は部屋の掃除をし、テーブル周辺を片付けた。

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いよいよ料理を作っていく。
今日のメインは桂魚。
薬味としてネギ、ピーマン、生姜、唐辛子。
これらを細かく切っていくスピードが速い。

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こちらが買ってきた桂魚。切り目を入れて生姜が挟まる。

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おなかにはネギがはさまる。

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蒸しあげたのち、熱した油をかけると、じゅわーっと飛沫が舞った。

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小さなテーブルを窓際に移し、簡易食卓の完成。

青城山からの帰路、夜景の話になった。
私は夜景が大好き。
「夜景なんて特におもしろいものはない」
ジャオユーさんも夜景の写真撮ってるじゃん。
「あれは成都の夜景だから意味がある。派手な夜景はただの電力の浪費だ」
そういう彼に、私なりに反論した。
「私は夜景が好き、中国のも日本のも両方好きで、旅に出るとかならず探す」
なぜかと言うとね、夜景には人々の生活があるから。
一面夜景でもね、一つひとつの明かりは一つひとつの営みなんだよ。
そこに暮らす人、旅行で来ている人、いろいろいるかもしれない。
ある人はまだ仕事をしていて、ある人は仕事を終えて飲みに出かけていて、ある人は食事をし、ある人はくつろぎ。
ある人たちは笑い合い、ある人たちは喧嘩しているかもしれない。
よろこび、楽しさ、悲しさ、怒り、苦しみ、そんなさまざまな感情が散らばっている。
それって、とてもうつくしいことじゃない?
だから私は旅行に行くと、かならず夜景を見たい。
それがどんな種類の夜景であっても。
「ねぇ、聞いてる?」
そう訊くと、「聞いてる聞いてる、マーヨーズの言うことには一理ある」
そんな会話があったので、最後の食事はジャオユーさんの部屋から夜景を見ながら食事ができるように、席を設けてくれたのだった。
そんな一つひとつの気配りや思いやりは、けっして計算や作戦ではなくて、彼の気持ちからストレートに生まれるものだった。
それがとてもうれしい。

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配置された夜光杯は、先日、酒泉で購入したもの。
今まではひとつの杯しか購入したことがなかった。
今回“対”で購入したのは、ジャオユーさんと白酒を乾杯するためだった。
それなのに、「中国人に中国のお土産は必要ない」とか、「日本に持って帰ってこそ意味がある」とか、「こんなにお金出して、今後は旅先で物を買うんじゃない」とか、そんなことを言われてがっかりだった。
がっかりしていると、「いいよ、うちに置いておこう」ということになったのだった。
今夜はこれで乾杯をする。
右奥に置かれているパンダビールは、二度目の成都到着時に、車で手渡してくれたもの。
一緒に旅行をしている時、なんどもなんども可愛くないパンダの話になった。
だからこの“悪パンダ”のビールを見つけて、買っておいてくれたのだった。

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メインの魚はとても美味しかった。
それなのに、ひとくち口にして彼が言うことには、
「1分長かったな」厳しい。
私にはぜんぜんわからない。
料理はすべてとても美味しくて、正直にいえば、今までのどの外食よりも美味しかった。
光が透けてまるで宇宙のような夜光杯に白酒をなみなみと注ぎ、乾杯を重ねる。

時刻が20時を過ぎてもまだ成都の空は明るい。
「早い時間に食べ始めると、時間がたくさんあって楽しいね」
そんなふうに話しながらも、徐々に日は傾き、少しずつ窓の外の部屋の明かりが灯りだし、話に夢中になっていると、いつもまにか夜景になっていた。

「これらの夜景は一つひとつが宝石のようだよ」
香港や上海の夜景がダイヤモンドやルビーなんかの宝石ならば、こうしたごく普通の夜景はまるで、たとえば水晶などの鉱石のよう。
私はね、その両方が好き。
ダイヤモンドやルビーのような、人の手が加わった宝石の輝きも、もちろん好き。
でもね、自然のルールに従って成長した鉱石の結晶はもっと好き。
その結晶は時にいびつな形をし、時に色合いも様々で、時に不純物をも含む。
計算された光の反射による輝きもないけれど。
けれどもそれこそ、うつくしいと思わない?
これらの夜景の一つひとつの灯りはね、まるでこうした鉱石の輝きのようだよ。
均等な色合いの宝石とは違い、一つひとつの灯りはみな違うもの。
一つひとつの生活や表情がみな違うように。
それらこそ、ほんらいある美しさなんだと思うよ。
だから私はね、旅先を訪れると必ず夜景を探す。
街を歩くとその一つひとつの様子がよくわかる。
でもそれだけじゃなくて、俯瞰してみる。
するとね、同じ街なのにぜんぜん違って見えるの。
近くから見て、遠くからも見てみる。
そうしてようやく、その街がわかったような気がするの。

ジャオユーさんは私が話している間、言葉をはさまない。
あぁ、だからどの中国人よりも会話がしやすかったんだ、と今になり気づいた。
私の中国語はつたなく、時に言葉が思いつかない時には、わかる言葉を使って代用した。
だから正しい表現になっていないこともたくさんあっただろう。
けれども彼は、私の言葉ではなく、私のこころに耳を傾けてくれる。
だから、おそらく彼の理解はほぼ正しい。
「そうだ、今から成都の夜を見に行こう」
ジャオユーさんはそう提案し、私たちはテーブルだけ片付け洗い物はそのままに、マンションを出た。

バイクに乗り、成都の街を走る。
風を切り走りながら、流れていくビル群を見上げた。
全身で浴びる風は、この街のにおいを含んでいた。
私、彼のこともこの街のことも好きだなぁ、こころからそう感じた。
成都、なんてうつくしい街なんだろう。
どうして今まで私は、この街の魅力に気づかず、また近づくことをしなかったのだろう。
それはもしかしたら、今回の出会いのためだったかもしれない。

バイクのドライブなので、もちろん写真など撮っていない。
唯一一枚撮ったのはこれ。

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見にくいけれど、左手のビルにおぞましいパンダがぶらさがっている。
信号待ちのわずかな時間に、二人で笑った。
ここはこういう場所で、あそこはああいう場所で。バイクを走らせながら、その所々で説明をしてくれた。

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バイクを停めたのはある有名なバー。
以前にも話題にあがったことがあったお店だった。
「たぶん人がたくさんいるから、並んでいたら諦めるしかない」
ジャオユーさんはそう話していて、やっぱり案の定。
今日は日曜日。
店の外に並ぶ人あり、周囲を取り巻き撮影する人あり。
このお店の周りだけ異常な人混みだ。
このお店は小酒館。
中国各地を旅行しているが、こういう味のある雰囲気のお店に出合うことは非常にまれだ。
レトロ、とそんな言葉で片付けていいのかどうか。
しかしこれは私の好みの話であり、このお店が人気を呼んでいるのは決してこの雰囲気どうこうではなかった。

このお店を有名にしたのはある一人の歌手と一曲の歌だった。
中国に興味を持つ人ならば、ここ数年で一度は耳にしたことがあるかもしれない。
趙雷が作詞作曲し歌う、「成都」という曲がある。
SNS上でもアップする人が多く、私は以前にも何人かの友達がこの曲を好きだというのを聞いたことがあった。
そして今回、成都に入ったあとにも、ジャオユーさんが一度聞かせてくれた曲である。
趙雷は当時名が売れていない歌手だった。
全国を回っていた彼にとって、成都は特別な街でありふるさとのように愛すべき街で、その感情を歌い上げたものが、この「成都」だった。
彼はこの歌をこの小酒館で歌い、その後爆発的な人気となったのだそう。
お店の前には写真を撮る人がたくさん。
それはこういうわけだったのだ。
「また日を変えて来よう!」
そう言って、私たちは小酒館を通り過ぎ、すぐ近くのまた飲み屋さんが並ぶ通りでバイクを下りた。

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ここもまた洋風の雰囲気を持つお店が並んでいる。
私たちはその一つに入店し、ビールを飲んだ。
すでに夜遅い時間になっている。
成都はほんとうに眠らない街のようだ。
最後の夜、私たちは二人で、並んだビールなんかの写真を撮って、同時にSNSにアップした。
私が上げた記事に、目の前に座るジャオユーさんからコメントが入った。
「誰?」
「あなただよ!」そう返す。
ジャオユーさんがアップした記事は数秒後に削除された。
「なんで?」
「これ、職場の上司も見るからやっぱりよくない」
明日は私を空港まで送ってくれたのちに出社をする。
こんな遅い時間に飲みに行っているような記事は、たしかに控えた方がよかった。

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店内には歌を披露する人がいて、大音量。
二人はほとんど正常な会話ができず、何か話したいことがあれば、大声で耳元に話しかけた。
けれどもそれが楽しくて、時間を忘れた。
明日は朝7時前にはマンションを出なければならない。
成都双流空港から北京へ向かうフライトは9時30分発。
通常の状況であれば夜更かししないで早寝するスケジュールだったが、そんなものは今どうでもよかった。
普段、「早く寝ないと」「食べ過ぎはよくない」「お酒も煙草もよくない」そんなふうに割と自制心の強いようなことを言うことが多いジャオユーさん。
だらしない私にとっては少し耳が痛いところではあるのだけれど。
けれども時と場合で、こういう時には“よくない”ことも一緒に楽しんでくれるところが嬉しかった。
頼んだドイツビールは二種類で六本。
片方が特においしくて、二人とも「おいしい」と声があった。
けれども最後に残っているのは各種類一本ずつ。
ジャオユーさんは私にその一本を譲ってくれる。
ビールはあっという間に空いた。

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お店を出て、次にバイクを下りたのは電視塔の足元にある火鍋のお店だった。
時刻はすでに深夜2時を回ろうとしている。
それなのにまだ賑わう成都は不思議な街に見えた。

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このお店、串形の火鍋。
ジャオユーさんが串に刺さった具材を選んで持ってきてくれた。
スープはこの世の物とは思えないほど、どす黒く赤い色をしている。
串を鍋につけて、火が通ったところでタレにつけて食べてみる。
火を吐くような辛さだった。
一本目、二本目はよくて、でも食べ進んでいくうちに口の中が痛くなってくる。
けれども、実を言うと私は辛い物が好きなのだ。
痛いけれど、おいしい。
「辛い!」そう言うと、
「ここは成都で一番辛い火鍋のお店なんだ」
「あなたたちにとっても、これは辛いの?」
今までの辛い四川料理に対して、「辛いうちに入らない」ということばかりだったジャオユーさん。
「そうだ、成都人にとってもここのは辛いんだ」
最後に一番辛いのが来たか。
しかも深夜2時過ぎに。
なかなかできない経験である。
私、四川料理いけるな。この時、そう確信した。

帰りには、ジャオユーさんが幼いころ生活したかつての家があったところを通った。
当時はたくさんの部屋があるお宅だったのだそう。
けれどもそのお宅は今はない。
比較的古いマンションが立ち並び、ここに暮らす人の中にはジャオユーさんのことをまだわかる人も少なくないのだという。
近くには公園があった。
ジャオユーさんは以前に家族や親せきと一緒に写る古い写真をたくさん私に見せてくれたが、その中にはお父さんが公園で幼いジャオユーさんを撮影したものがあった。
「あの写真はこの公園で撮ったものなんだ」
公園の内部は子供のころとほとんど変わらないから、次回はここに来てみよう。
そう言ってくれた。

最後の夜。
時間は待ってはくれない。
けれども、終わりよりも“次”の始まりを感じながらこの夜を終えることができる。
それはとても心強かった。

マンションに着き部屋に戻り、メイクも落とさずシャワーも浴びず歯も磨かずそのまま眠ることにして、ベッドに倒れ込んだのはすでに朝の4時だった。
眠る時間がない、よりも。
一緒にいることができるのも、あと数時間。
そんなことを考えながらも次の瞬間、ジャオユーさんが私をゆすった。
「マーヨーズ、起きなさい、空港に向かわないと」

〈記 8月12日 自宅にて〉


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読み終えての感想です

 長い長い38日間の旅行記、ようやく読み終えました。38日間mもの中国旅行、しかも夜行列車に乗って。うらやましいです。
 毎日の旅行記について振り返ればたくさんの感想がありますが、振り返らなくても強く印象に残ったのは成都郊外の古鎮双流の茶館ですね。古い建物と親父さんたちの語らいがとてもいいと感じました。おそらく発展目覚ましい現代中国の人々の姿とは違う人と人との普通のつながりが感じられたからだと思います。
 もう一つはこれも成都郊外の青城山の緑の木々と清流です。日本の山と渓谷とよく似たところが中国にもあるんですね。
 そして風景以外に印象深かったのはジャオユーさんとの出会いですね。後半は旅行記よりもジャオユーさんとのやりとりが気になって一気に読み進んでしまいした。
 それから、夜行列車から見た夜の街の灯と宮沢賢治について何度か触れられていました。実は私も宮沢賢治の詩と童話は大好きです。でも中国の風景は日本とはあまりに違うのと、旅行中は昼も夜もいつもハイテンションになってしまうので、私の頭の中には宮沢賢治は登場したことはありませんでした。
 私も昨年友人と夜行列車の旅を経験してすっかりはまってしまい11月には上海から夜行列車で深圳・香港への旅行を計画しています。その時は宮沢賢治の詩を思い浮かべてみようかなと思います。

Re: 読み終えての感想です

hirachanさん、ありがとうございます。
双流の老茶館は、私も今回の旅の中で特に印象に残っている場所です。この茶館は都市部から離れた静かな場所にあり、このお店だけでなく周囲の雰囲気も含めて、まるで時間の流れがほかと違うかのような錯覚をしました。
けれども成都市内にもこうした茶館はところどころに残っているようで、中国人からも成都が愛されるというのが、わかったような気がしました。
そう、四川省の山々はなんだか日本と雰囲気が似ていて、新鮮な感覚の中にもどこか懐かしさがあり、とても魅力的でした。
そんな山々の中に点在する古鎮や集落もまた、日本人のノスタルジーと繋がるものがあるように思います。
四川は日本人にも人気の旅先ですが、四川料理やパンダ、三国志だけなく、もう一歩踏み込んでみるとやみつきになりそうな魅力がたくさんあるなと、気づかされた思いでした。
ジャオユーさんとの出会いがあり、明日25日からまた一カ月成都へ行って来ます。

hirachanさんも宮沢賢治がお好きなんですね。
私は賢治作品の中でも銀河鉄道の夜がとくに好きです。
特に鉄道が好き、というわけではないのですが、銀河鉄道に描かれる静かで物悲しい列車の雰囲気は日本にはすでになく、中国の列車はまさしく私のそのイメージに合うので、とても惹かれるのです。
けれどもそれは、昼間の列車ではなく、真夜中の静まり返った列車。
それはおいても、中国の列車旅は、日本国内では絶対に味わえない魅力がいっぱいですよね。
人生に一度はと思い決めた今回の旅でしたが、もう一度やってみたいという思いがまた…。

上海から香港への列車旅、すてきですね。
高鉄の発展めざましい中国ですが、やっぱり列車旅はたのしい。失われてほしくありません。
旅途愉快!私もひとあし先に行って来ます(^^)
プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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