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2018-11-07

30日間成都滞在〈1日目〉

2018年9月25日、一カ月半ぶりの中国はまたの長期滞在。
行先は四川省、成都である。
今回はその成都に30日間滞在する。

人生で一番長期の旅行へ出掛けたのは、先々月のことだった。
会社を退職し時間がある私は、念願の中国ぐるり旅へと出掛けるべく6月30日に出発し、38日間の旅程を終え、8月6日に帰ってきたばかりだ。
北京を出発し、夜行列車を利用して時計回りに合肥、紹興、昆明、河口、成都、蘭州、ウルムチ、コルラ、ハミ、嘉峪関、酒泉、中衛、フフホト、エレンホト、長春、図們とまわり、北京に戻ってくる予定だった。
けれどもベトナム国境の河口でうっかりビザを失効させてしまった私は、成都でビザの再申請を行わなければならなくなり、三日だけ滞在する予定だった成都に十日もの日数を使うことになった。
そうして大幅な旅程変更を余儀なくされたのだった。
しかし旅の縁とは不思議なもので、この成都滞在は、旅程だけでなく私の人生のベクトルの方向をすっかり変えてしまった。

成都で出会ったのはジャオユーさんという一人の男性だった。
彼は私が中国でもっとも信頼する友人の友人で、成都通過にともなって連絡先を紹介してもらっていた。
そんな折にビザの再申請と成都滞在が必要になり、ジャオユーさんはそのすべてを面倒みてくれた。
彼はこの時たまたま一人旅に出かけようとしており、長期休暇をとっていた。
その時間を使い、私たちは二人で四川を旅行してまわり、お互いに対する理解を深めた。
私たちは出会ってすぐ、自然なながれで恋人になった。
こうして38日間旅行から帰国し、私たちは5000㎞の遠距離国際恋愛を始めることになった。

8月に帰国し私はすぐに9月25日発、10月25日帰国の成都行き往復航空券を手配した。
私の誕生日は10月で、誕生日を成都で迎えるためである。
会社を辞めて収入はないが、こんな状況だからこそ、このような長期滞在ができる。
仕事をしていたら国境を跨いだ遠距離恋愛はなかなか難しいだろう。
不思議な縁とタイミングだと思う。

購入した航空券は上海経由で、時間はかかるがなによりも格安だった。
なんと、往復3万5000円ほど。
東京―成都間には全日空の直行便が出ており、できればこれを利用したいが、今は出費を抑えたい。すぐにこの航空券に決めた。
この航空券、日程は31日間。
中国の観光ビザは30日と90日の二種類がある。
前回の38日間旅行の際にはこの90日ビザを申請し、かろうじで40日ビザとして下りた。90日ビザは審査が非常に厳しいということを聞いていたので、ひやひやした記憶が新しい。
そうしたことを受けて、今回のこの31日間の航空券は、90日ビザではなく30日ビザを申請するつもりで手配したものである。
どこかで、入国日は滞在日数に含まれないという話を聞いたことがあるような気がし、舞い上がっていた私は一日でも長く滞在しようと、確かめることもせずに購入してしまったのだった。

いよいよビザを申請するべく依頼。
中国のビザは代理店を通さないと申請できないので、前回と同じところに依頼をかけた。とても対応のよい代理店と担当者だったからだ。
依頼してみると、担当は前回と違い中国人の女性だった。
「入国日も滞在日数に含まれますので、30日ビザを申請することはできません」
なんてことだ。
今までなんども繰り返してきた自分の適当さ、バカさに、うんざりする。
なんで航空券を手配する前に確認しなかったんだ。
こうしてやむを得ず、申請が下りる可能性が低い90日ビザを、ふたたび申請することにした。

またさらに面倒が。
前回帰国の際に、羽田空港で帰国スタンプをもらえなかった。顔認証かなにかで、無人のゲートにて入国審査を通過したためである。
ところがビザ申請にあたり、前回の帰国スタンプがない人は、直接ビザセンターに出頭し窓口で身分証あわせて本人確認が必要とのこと。
代理店の担当者さんと約束をとり、東京虎ノ門にある中国ビザセンターまで足を運ぶことになった。

こうして8月末のある日、出頭し本人確認はできた。
90日ビザ申請の書類はすべて整い、それも担当者さんにより提出された。
ところが。
「現在、90日ビザは申請を受け付けていません」
窓口の女性はさらりと返答した。
え、このタイミングでそれ言われても。
どうやら5月に領事が代わり、ただでさえ厳しくなっていく中国ビザだが、とうとう30日を超す観光ビザを事実上廃止することになったもよう。
「え、この前は40日で下りたんですけど…」
そう言うと、「あれは非常に稀なケースでした。通常はああいうことはないです」とのこと。
そうだったんだ。
そんなビザを私はうっかり失効させてしまったのか。
とにかく私が購入した航空券はもう使えない。
「じゃあ、航空券取り直して、30日間にして30日ビザで申請します」
となると、用意してきたすべての書類を改めて準備し直さなければならない。
「その際はまた本人出頭が必要です」
じゃあ、今日の出頭はなんだったんだ…。
それは嫌だったのでもうここですべての手配をしてしまうことに。
申請書類等は横線で訂正で足りるとのことだったので、書類をすべて直し、その場で航空券を再手配した。
帰国日を一日早め10月24日帰国のフライトで探し、申請に必要な航空券のEチケットはその場で窓口のパソコンに転送させてもらい、対応してもらうことになった。
代理店の担当者さんもとても親切で、それも幸いした。

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こうして、すんなりとはいかなかったが、無事にふたたびビザが下りた。

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14時半に羽田を発ち、乗り継ぎをする上海の虹橋空港に到着したのは17時。
上海ではいつも浦東空港を利用するので、もしかしたらこの虹橋空港は初めてかもしれない。
少なくともここで入国するのは初めてかなと思う。
色んな空港の出入国スタンプが増えてくのも楽しく記念になる。

キャリーバックの車輪が二つ壊れてしまい、死にそうになりながら地下鉄で移動し、乗り継ぎ先である第二ターミナルへ到着したとき、ちょうど辺りが夜景に変わる頃合いだった。
荷物は二つ、合わせて40㎏にもなるというのに。
私の中国旅行はどうしてこうも毎回、初日からくたくたなんだ?
成都へ向かうフライトが発つのは19時40分。
おなかが空いて牛肉麺を食べたい誘惑に襲われるが、あいにく時間がなく必死で堪える。

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さすが上海の空港で、空港内にはいたるところで上海カニが売られているのは驚きだった。
こんなカニにまで食欲をそそられるが、これを買ってどうするんだと我にかえり、ここも耐える。

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飛行機に乗り込み、ぎりぎりまでジャオユーさんと連絡を取り合う。
意気投合しラブラブだった私たちだったが、遠距離が始まりしばらくして、頻繁に喧嘩をするようになってしまった。
ある時は、言語の壁で。
ある時は、習慣の違いで。
ある時は、会えないという状況下による不安で。
ある時は、お互いに気に入らないことがあって。
実は昨日もささいなことが喧嘩に発展し、
「こんなんじゃ明日成都に行けない!」
「来たくないなら来なくていい!」
なんてことになってしまったばかりで、今日もまだぎくしゃくして変な空気を引きずったままだった。
前日私は、退職した会社の東京本社の先輩たちからの誘いを受けて一緒に旅行に行っていた。
その晩は食材を買い込んで部屋で宴会をし、私はテンションがあがりついつい飲み過ぎてしまったのだった。
翌日、記憶がまったくない。
ジャオユーさんからの連絡に打ち込んだ返信の文章は残っていたが、送信されてはいなかった。
翌日謝ると、ご機嫌ななめな様子。
風邪を引いた状況で泥酔したこと。
意識を失うまで酔っ払ったこと。
そのことに怒ったわけだが、ここでおとなしく反省していればよかったものを私がやり返したために喧嘩に発展してしまった。
あれはほど心待ちにしていた成都行き。
よりによって出発前夜がこんなことになってしまうなんて。

上海から空路三時間、成都双流空港に着陸し、にわかに緊張し始めた。
一カ月半ぶりの再会である。
ジャオユーさんはすでにラブラブモードに戻っていたが、私は喧嘩続きに少し胸を痛めていた。
どんなふうに再会すればいいんだろう。
どきどきしながら到着ゲートをくぐると、ジャオユーさんの「実物」がいた。
実物がいたとは奇妙な言い方ではあるけれど、この時の感覚はまさしくこれだった。
出会ってすぐ20日間にわたり濃い時間を共有した。
そんな時間を過ごしたあとには、超長距離。
携帯を通してのみ連絡を取り合う毎日。
このギャップは激しかった。
言葉の壁による誤解も多く、やがてお互いに音声メッセージを控えるようになり、活字でのやり取りがほとんどに。
日本人同士でもそうだけれど、携帯の文字や文章は感情が読みにくい。
そんなことで徐々に「実物感」が薄れていったのだ。少なくとも私にとっては。

一カ月半ぶりの実物は不思議な感覚だった。
彼はなんの変化もなく、依然として彼だった。
実物同士のコミュニケーションになり、離れてからの喧嘩の日々がなんだったのかと思うほど、一瞬で仲良しな私たちに戻ってしまった。

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今日は水曜日、私への出迎えの為に22時まで会社で残業をして待っていてくれた。
そうして会社からそのまま空港へ来てくれたのだ。
もうすぐ日付は変わろうとしている。
彼は明日また、出勤しなければならない。

マンションに着くと、感じたのは懐かしさではなく、未だ慣れ親しんだ感覚だった。
大量の荷物はそのままにし、明日あらためて整理をすることにした。

テーブルにはたくさんのお酒。
冷蔵庫もお酒でいっぱいだった。
少し前に喧嘩したとき、私の為に買い込んでくれたお酒の数々を「今日飲み捨ててやる!」と彼にあらかた飲まれてしまった。
私への報復である。
悔しいがとても強い効果を持つその報復に、私のダメージは大きかった。
けれどもそのあと、またさらに買い直してくれたのだった。
お酒の山の中には、あのとき開封されてしまったバランタインの瓶があり、ほんのわずかだけ残っていた。
今夜はこのウイスキーだけいただくことに。

一カ月半ぶりの成都であり中国。
携帯を通して毎日交流していたとはいえ、ただでさえレベルの低い中国語がさらにできなくなっていることに気が付いた。情けない。
ゆっくり、簡単な言葉を使って会話をしてくれるジャオユーさん。
前回成都で一緒に過ごしたときには、もっと普通な感じだったような。
言葉の壁により起こる誤解が続き、彼はすっかり慎重になってしまった。

言葉がわかっても、文法もわかっても、単語の意味もわかっても。
意味はわかるのに、その裏にある意図や感情を正しく受け取れないことがある。
また、正しく伝えることができないことがある。
友達同士だったり、旅先でのコミュニケーションなら、それでもまぁ問題はない。
けれども恋人関係になると、言葉において大事なのは、ツールとしての機能的側面それよりも、その背景のほうになる。
例えば、「好き」という言葉を使ったからといって本当に好きだとは限らないし、場合によってはあろうことか、その逆の意味を持っていることもあるように。
同じ国の人同士でもそんなふうに理解し合えないことは多いのに、言語や習慣が違えばなおさらだ。
さらに携帯上の活字であれば余計にその言葉の背景は見えにくい。
言葉の壁であることは間違いないが、一番の問題は単語や文法ではなかった。
逆に言えば、どれだけ言語が正しくなくとも、その背景にある意味をキャッチできればいい。
前回一緒に時間を過ごした時にはそれがなかなかうまくいっていたのだけれど、携帯でのやり取りになり、それがいつしかできなくなっていた。
私はそういうことを何度か伝えたかったが、ジャオユーさんはその解決方法として、言葉の選択に気を付けることにしたもよう。
「ジャオユーさんまるで、子供に話してるみたい」
私がそう言うと、
「うん、そうだそうだ。マーヨーズはまさしく子供じゃないか」そんなふうに返されてしまう。

一カ月半の空白を埋めるかのように、実物同士でおしゃべりをして、時刻はやがて深夜の2時を過ぎた。
あぁでも、空白ではないよな。
この一カ月半も、コミュニケーションの仕方は違ったけれども、確かにそれらも間違いなく二人で過ごしてきた時間なのだった。

〈記 9月26日 成都市区にて〉

⇒ 30日間成都滞在〈2日目〉 へ続く

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