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2018-11-07

30日間成都滞在〈4日目〉

2018年9月28日、眠くて眠くてたまらなく、ジャオユーさんの起床にも気づかなかった。
「会社に行くよ」
そう言って起こしに来た時、私は悪い夢を見ていた。
まだ暗いうちに一度目が覚め、水を飲んでしばらく休んだ。
その時も悪い夢を見たばかりだった。
一晩で二度も続けて悪い夢を見てしまったそのことは覚えているのだけれど、それがどんな夢だったのかまったく思い出せない。
ただ一つだけ覚えているのは、その二つともジャオユーさんの夢だったということだ。
「もうひと眠りしなさい」
そう言って彼が出勤したあと私はまた眠りに落ちた。
目覚めてみるともう10時。
この一時間半の眠りでもまた夢を見た。
また、悪い夢でしかもジャオユーさんが出てくるものだった。
それなのにそれがどんな夢でどう悪かったのか、まったく思い出せない。
一晩でなんと三回も彼が登場する悪い夢を見てしまったことだけが確かだった。

お昼にジャオユーさんが戻り、今日は天気がいいのでバイクに乗って外にご飯を食べに行こう、そういうことになった。
成都に到着してから見事な曇天が続いていたが、今日はさわやかな青空だった。
薄く広がる白い雲が秋を実感させる。
バイクに乗ってしばらくもしない場所、都会の喧騒からほんの僅か離れた場所に着いた。

そこには現代ビルが集まり、おおくの飲食店が立ち並んでいた。

1809281.jpg

一番手前には、陳麻婆豆腐のお店があった。
陳麻婆豆腐といえば、成都でもっとも有名なお店のひとつだ。
麻婆豆腐は四川料理を代表するだれもが知るものだが、これはもともと陳さんが生み出した料理なのだという。
この陳さんのお店、もともとは小さなお店だったのだろうが、現代にあってはあちこちにその名を見る。
五年前の成都旅行の際にも、一人で行ってみた記憶がある。
一皿10元かそこらで、大量の山椒に口が痺れ、しゃべることもままならなくなった。
今日のお昼はこの陳麻婆豆腐を食べる。

1809282.jpg

頼んだのは三品。
まず出てきたのはこちら。
山になったご飯の上に砂糖ときな粉がまぶしてあり、食べてみると甘い。
ご飯として食べるには微妙な感覚がある。
その中からは豚バラ肉が出てきた。
ご飯が甘いのはいいとして、甘い中に肉があるのは少し口が合わなかった。
四川には辛いものとともに甘いものもたくさんある。
辛い物を食べるから甘いものでお口直し、みたいな感じのようだけど。
「てことは、四川人も四川料理が辛くて辛いの?」
突然湧いてきた疑問だったが、はっきり答えてもらえなかった。

1809283.jpg

そして目的の麻婆豆腐がやってきた。
言うまでもなく、日本で親しまれている麻婆豆腐と本場のそれは違う。
多くの料理が国境を越えるとそうなるように、この麻婆豆腐も日本にあっては日本人流に進化したものと思われる。
日本の麻婆豆腐は、挽肉の分量が多く比率として豆腐はそこまで多くない。
山椒はほとんど効いておらず香辛料は主に唐辛子だが、それも大量ではないので辛くない麻婆豆腐を食べる機会の方が多いだろう。
では中国本場のといえば、肉はほとんどなく主役は豆腐。
唐辛子というよりも大量の山椒が味の主体で、とにかく痺れる辛さ。
そして油が多い。
今回登場してきたものは、前回食べた陳麻婆豆腐よりも山椒が少ないように感じたが、それでも口にしてすぐに汗が噴き出してきた。
おいしいはおいしいが、山椒によって口の中が痺れてしまうため、もはや味覚は麻痺してしまっている。

これともう一品スープを頼み、私たちはお店を出た。
ジャオユーさんは胃が痛いようでどこか元気がなく、今夜はビールは一本だけにしようと言った。
昨日も一昨日も辛い物を食べお酒を飲んだから、というけれども私の方はなんともない。

部屋に戻り一人になり、私は自分のことをいろいろしたのち、もうすぐジャオユーさんの帰宅時間になろうとしていた。
山のような洗濯物を取り込みたたみ、そうして簡単にまた棚を拭いたり片付けをしていると。
棚に置かれたプラスチック製の容器の中になにやら身分証のようなものが見えた。
そこに見えた文字の一部に、私は直感で見てはいけないものがそこにあるとわかった。
ジャオユーさんは私よりも10歳年上で、現在46歳。
いつのことでどれくらいのことか知らないが、とても昔の若いころに数年結婚生活をしたことがあった。
少数民族でムスリムだということ、美人だったこと、最後は恨んで別れることになった、ということ以外のことを私は知らない。
私は、見てはいけないものである限り、一度見たら見なかったことにはできないということがよくわかっていたけれど、そのプラスチックの蓋を開けてしまった。
そこにあったのは身分証に類似するもので、2002年の日付と、顔写真や名前、生年月日、民族、その他の情報が記載されていた。
見なければよかった、と思った。
過去は過去であり、現在のことではなく、今目の前にあるものはなんの問題があるものではない。
浮気を見つけてしまったわけではなく、結婚歴があることは何も間違ったことではない。
過去があるのは私も同じことで、そんなのを気にすることは現在を否定することでもある。
けれども、私はその過去を気にする人間なのだということを、思い知ってしまった。
「結婚したことがあるけどすごく昔だ」
そんなふうに伝えられた時にはとくに大きな問題ではなかった。
たぶん現実味がなかったんだと思う。
どこのどんな人かもわからないのだし。
それがこの身分証もどきで、以前の奥さんは一瞬で現実の人間になった。
その身分証もどきの内容の中には、「なるほど、こういうことだったんだ」と改めて知らされる情報もあった。
さらにタイミングの悪いことに昨夜お酒を飲んだ時に、私の誘導はあったものの「できることなら別れたくなかった」ということを彼が口にしたばかりだった。
なんとも暗い気持ちになり、そのほかもろもろのことも重なり、楽しい気持ちがみるみる消えていく。

私は外に気晴らしに出ることしたが、ジャオユーさんが帰宅したのでマンションの下で落ち合った。
今夜は彼がご飯を作ってくれるという。
私のテンションはすっかり下がっていたけれど、彼に否があることではないので、気持ちを上げようとするがうまくいかない。

作ってくれたのは、エビのカレーと新疆風白菜炒め。

1809285.jpg

カレーのルーは日本と同じだけど、水をほとんど加えないいわばカレールー炒め。
「日本ではご飯の上にかけるよ」
そういうと、そういう認識はなかったようで彼は知らないといった。
「日本ではご飯必須だよ」
そういうと、「夜に炭水化物をとるのはよくないからご飯はダメだ」という。
新疆の白菜炒めは、細切りにした白菜とトマト、唐辛子、ニンニクを炒めたもの。
ご飯はなくおかずだけだけれど、おいしかったしおなかはいっぱいになった。
「今後は外食と家食を半々にしよう」
ジャオユーさんは明るかった。

食事を終えて、バイクドライブに行くことになった。
私が最近水泳に行くことが多いので、彼も水泳を始めた。
以前はジムに行くことが多かったが、最近では水泳に行くことが多くなったよう。
そこで、私の一カ月の滞在で、一緒に水泳やジムに行ったり、散歩やジョギングなどをして生活を楽しもうと話していた。
今日は泳げないけれど、よく通うプールに連れていってくれた。

1809286.jpg

さすが中国の大都会。
プールもまた立派だった。
屋内プールと屋外プールがあり、夏場は夜間も屋外プールが開放される。

1809287.jpg

こちらが屋外プールの方面を写したもの。
こんな夜景の下で泳げるなんてどんな気分だろうかと思う。

18092811.jpg

屋内プールは人でいっぱいだった。
ジャオユーさんは私の遊泳許可証を発行するのを手伝ってくれるといった。
「そんなのがいるの?」
水深2m未満であれば必要ないが、それ以上の場合、泳げるかどうかのテストをして許可証を発行してもらう必要があるということだった。
「今日は時間が遅いから、また後日テストを受けにこよう」
そう言ってプールをあとにして、私たちは成都をぐるりとバイクドライブした。

1809288.jpg

静かな裏通りを走っていると、途中で趣のある門が見え、
「これは知らない場所だ」
とジャオユーさんはバイクを停めた。
その名も「香香巷」。
中には狭い中に小さな飲み屋さんがぎゅうぎゅうに詰まっている。
日本風居酒屋もあり、覗いてみるとなかなか日本風だなと思わせるもので、もしかしたら日本人がやってるかもしれない、と私は話した。

18092810.jpg

こんな不思議なお酒を提供するお店もあった。
これを一杯一杯飲んでいく。
インスタ映え、みたいな感じだろうか。
「飲んでいきたい?」
そんなふうに訊いてくれたけれど、お昼にジャオユーさんが今夜はお酒を飲みたくないという話をしていたのを思い出し、断った。

その後成都中をドライブし、マンションに戻った。
成都はどこからどこまでも、眩しく賑やか。
その活気と華やかさと、そしてその中にも一歩裏には落ち着いた昔ながらの生活がある。

「またバイクドライブに連れていってね」
部屋に戻ってそう言った時、私たちの関係はまだ大丈夫だったと思う。

それからビールを開けてソファーに腰かけて、ジャオユーさんは突然真剣な表情をして話し始めた。
「今日マーヨーズに話したいことがある」
これからの二人の未来計画について話したい。
成都に来たら、どうしたい?
日本の企業に入る。
中国の企業に入る。
日本語の先生をやる。
それか、日本製品販売なんかの商売を自分でやる。

突然具体的な話に入ったが、ドライブで回復したとはいえ、今の私はこれからの二人に積極的な気分になっていなかったし、自信も喪失していた。
「待って、そんな話されてもプレッシャー感じる」
思わずそう言った。
結婚や二人の生活について話は進んでいたけれど、それはあくまでそういう話をしていたというだけで、プロポーズもされないうちに具体的な話はできないと、私はそう話していた。
いずれは考えなければならないが、私は今自分で「猶予期間」と決めていた。

「わかった、それならこういう選択肢もある」
**古鎮に古民家を買うから、そこで日本式民宿をやってみるのはどうだ?
お客さんとのコミュニケーションもできるし、マーヨーズは古鎮が好きじゃないか。
「え、待って、それじゃ別々に生活することになるじゃない」
それに、古鎮好きっていっても、旅で行くのと生活するのとでは、別問題だよ。
もし成都で生活するなら、あなたと生活するために行くんだよ。
離れて生活するなら意味ないよ。
そう言うと、「大丈夫、数十㎞の距離なんだから、同じ成都だ、いつでも会える」
いや、そういう意味じゃなくて。
「家を買ってあげるというんだぞ、なんの問題があるんだ」
彼は不満そうに言った。
「私の人生なんだから私にも考えさせて」
そういうと、「違う、“私の”ではなくて‟私たちの未来“だ。そういう言い方は好きじゃない」
ジャオユーさんは不愉快な表情をした。
ここから彼は怒りだし、彼が怒ったことに私も怒りだし、収拾がつかなくなった。

「こんな問題ばっかじゃ、これからどうなるの?」
私は言った。
「マーヨーズが別れ話を切り出すことがなければ、永遠に手放すことはない」
彼は言った。
「你不放手我不松手」(あなたが手を離さなければ自分も離さない)というのもよく言っていたことだった。
「じゃあ、手離したら?」言ってはいけないことをまた言ってしまう。
「男なんだから、追いかけるなんてことはしない、そのまま別れるにきまってる」
そうして昼間のパンドラの箱を思い出した。
「奥さんにだって、不放手不松手って言っておいて最後は手放したんじゃない」
「あれは向こうが手放したからだ!」
ジャオユーさんはとうとう噴火してしまった。
「わかった、成都へは行かない」
国内でも新しい生活環境はたいへんなのに、海外となれば私には自信がない。
結婚生活も自分に向いているとは思えず、また中国の生活や人間関係の習慣に馴染めるかどうかも微妙なところだった。
それに加えて仕事や収入。
そしてパンドラの箱はまだまだたくさんあるはずだ。
私にそれを乗り切る気力はない。
私はそんなダメ人間なのだ。
「二か月前を思い出す。あの時はこんな女性と出会えて自分が幸運だと思ったけど、今のマーヨーズは好きじゃない」
「私も二か月前は問題なかった。帰国してからすべて変わった。私も今のあなたは好きじゃない」
気が付けば小さなことが積み重なっていた。
「わかった」
ジャオユーさんは小さくつぶやき寝室へ入っていった。
私を待っていることはわかっていたが、私はそのままソファーで眠った。
夜になると寒くて、私はかぶるものがなくて仕方なくそばに置いてあったシーツを折りたたんで体にかけた。
虚しくて、部屋が寒いのか身体が寒いのか心が寒いのか、わからない。

〈記 9月29日 成都市区にて〉

※2019年現在、結婚による配偶者ビザで居留した場合、一切の就労は許可されない。
収入額に関わらず、就労した場合不法就労となり重い罰金と最長10年の再入国禁止などの罰則となる。
そのため中国で就労し収入を得るためには、就労許可をとり就労ビザを用いて入国、居住する必要がある。
けれども就労許可には細かな条件が設けられ、その条件に合致し、さらに当局が許可判断をしなければ、得ることができない。
最低限の条件として、雇用先があり、学士以上の学位をもち、60歳以下(女性は55歳以下)であること、中国国内で就労する業務と同様の業務内容にて最低2年以上の専門的経験を有しそれを証明できること、健康であること、などがある。
しかし現在は厳格化し、さらに各都市各担当官により判断基準が異なりそれらも明確にされていないことから、条件に合致したとしても許可が下りない場合もある。


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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