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2018-11-07

30日間成都滞在〈7日目〉

2018年10月1日、本日はいよいよ中国の建国記念日、国慶節である。
国慶節は春節と並び中国でもっとも混乱を極める大型連休。
ジャオユーさんの職場も本日から七日間にわたり休暇にはいる。
そして10月1日、この日は私の誕生日でもある。
今回の30日にもわたる成都滞在はこの誕生日をジャオ―ユーさんとともに過ごすために計画したものだった。
自分の誕生日が折よく祝日であることが嬉しく、またかねてから「いろいろ計画している」というジャオユーさんの言葉に期待は膨らむばかりだった。
期待しすぎるとがっかりが怖い、ということもわかっていたけれど。
そんな楽しみにしていた誕生日だったけれど、直前に大喧嘩をしてしまった。
二晩にわたり寝室とソファーで別々に眠るという気まずい空気に、これからの滞在と大型連休と、そして誕生日がどうなってしまうものかと思ったけれど、なんとか回復することができた。

朝というよりお昼に近い時間に起きて、私たちは朝ご飯を作った。

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お餅を少量の油で揚げたお菓子で、中には甘い沙が入っている。
粉をこねて丸めて、沙を包んで、丸めて平らにする。
私はふざけて、いくつか顔をかたどってみたが、不細工この上なくまた揚げた後はすっかり判別がつかなくなってしまった。

今日は誕生日。
こんな遅いスタートでいいのかな。
以前にジャオユーさんは、誕生日からの連休、車乗り合いの旅行に参加し野外で数日過ごす計画を立てているのだと話していた。
「数日そとに出掛けるんだよね?いつどこに行くの?」
待ちきれずに訊いてみた。
すると、「あれはキャンセルした」
「なんで!?楽しみにしてたのに!」
平日はジャオユーさんは仕事で私は特にすることもなく、そんな毎日だったからこの連休の旅行を楽しみにしていたし、荷物もそのつもりで用意していた。
「マーヨーズがあまり乗り気じゃなかったから」
「そんなことないよ、楽しみにしてるっていったじゃない」
膨らんでいた期待はあっという間にしぼんでいった。
「じゃあ、誕生日どうするの?今日だよ?」
そう訊くと、「もう今、お餅食べてお祝いしたじゃないか」
うそ。
だとしても、「お誕生日おめでとう」も言われてないけど。
「本当に夜なんにもないの?」
「夜は‟長寿麺“を食べるよ」
うそ。
知り合って初めての誕生日の夜に長寿麺でお祝いなんて、今の中国でこれって普通なの?うれしいの?
「今日から連休なんだ。出かけたくないし家でゆっくりしたいよ」
ジャオユーさんは言った。
「出かけないの?」
「うん、連休はどこも人がすごいから、一週間家で過ごすよ」
うそ、究極につまらない。
「中国では男の人は女性の誕生日にがんばって準備すると聞いているよ」
「さぁ、しらない」
「私が最初の誕生日は重視しているってつたえたよね、知らなかった?」
「しらない」
素っ気ない返事が返ってきた。
来年、再来年の誕生日はがんばらなくて構わない。
またバレンタインデーやクリスマスもがんばらなくて構わない。
でも7月に知り合ったばかりで、しかも私はこのためにわざわざ日本からないお金ふり絞って成都まで来たのに。
萎んでいた気持ちはついに沈み切って、やがて跳ね返って怒りに変わった。
私は手元にあったクッションをなりふり構わずジャオユーさんに投げつけた。
するとジャオユーさんは降参したように、
「なにも計画していないなんて誰が言った?誕生日までまだ半日あるのになにもなかったなんて、どうしてわかるんだ?」

「自分には計画があるんだ」
13時半になって、ジャオユーさんは出発すると言い出した。
彼には彼のタイムスケジュールがあったよう。
車に乗りマンションを出て、私たちは郊外へ抜けた。

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大きな道路の左右には真っ赤な中国国旗がずらり。
国慶節のために用意されたものである。
「中国中が‟生日快楽“って私をお祝いしてくれているね、ありがとう!」

大きな道路をまっすぐまっすぐ進み、まだ開発が途中のような建設途中の風景を抜け、やがてのどかな農村地帯へ。

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途中小さな村で水などの買い物をしたのち、車は山道に入っていった。
時折、野鳥が舞う。
どこも大渋滞の本日、ここには車の一台も通らない。

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やがて展望台のような場所に出た。
成都郊外を一望する。

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天気はよいとは言えず曇りかすんでいたけれど、気持ちの良い眺めだった。
「マンションはどっち?」
ジャオユーさんが示す方向をよくよく見ていると、ぼんやりかすかに小さな小さなビル群が見えた。
一言に成都といっても広い。
今いるここも成都だし、なにも天府広場のあるあの都市部だけが成都ではないのだ。
私はまだ成都のほんのわずかな一面しか目にしていないんだな、と思った。

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(ジャオユーさん撮影)

「そろそろ時間がきたから出発しよう」
ジャオユーさんがそう言い、私たちは車に戻り来た山道を下った。

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途中崩壊した道を進み、やがて水を買った小さな村に出て、そして開発途中のだだっ広い道路を進み、そして近代的なビル群の並びに戻ってきた。
それでもここはまだ郊外だ。
ビル群の並びの向こうを指して、
「あそこが今夜ご飯を食べるところだ」
ジャオユーさんは言った。
「あのビルを曲がったところにゴミだらけの場所がある。そこに長寿麺を食べるんだ」
いくらなんでも、だんだん彼が冗談を言っていることがわかってきた。
「うん、わかった。今夜はゴミの場所で長寿麺を食べるんだね、いいよ」
でも、これで本当に麺だったらどうしよう。
そんなかすかな不安がないわけでもない。

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車を停めてビル群を歩く。
古いものがいっさいなく、近代的なビルの森はまるで中国じゃないみたいに思えた。
そんなきれいなビルの中にはたしかに小さくてあまりきれいではない麺の食堂があった。
「ここが今日ご飯を食べる場所だ」
ジャオユーさんから残念な宣告を受けて、私が覚悟を決めてそのお店に入っていこうとすると、彼はあわてて「違う、こっちこっち!」
彼は麺食堂の脇にあるこじんまりとした階段を上っていく。
「本当に麺だと思ったのか?冗談に決まってるじゃないか」

階段の先にあったのは、隠れ家のようにひっそりと存在するおしゃれなレストランだった。
入り口で店員さんの出迎えを受け、ここが‟ちゃんとしたマナーのお店“であることを知る。
豪快な中国人男性の代表みたいなジャオユーさんがこんな繊細なお店に連れてきてくれるとは思いもよらなかった。

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コース料理について彼は店員さんと少し話したのちどこかに消え、セットされたテーブルを前にして私はひとり少し緊張した。
メニューが見えたけど、けっこうな価格だった。

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彼が席に戻り、やがて料理が二皿運ばれてきた。
その二皿は違う料理で、店員さんはそれをナイフとフォークの間ではなくテーブルの真ん中に並べて置いた。
「違うコースを一つずつ頼んだんだ。二人で分け合って食べよう」
そういって、彼は料理を切り分けて、私のお皿の上にのせてくれた。
私は何もすることなく、全部彼がやってくれる。まるで子供のよう。
彼は運転なので、私はグラスで赤ワインをいただいた。

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出てくる料理がみなどれも独創的でまたおいしい。
とても失礼なことだけど、中国でこんなにおいしいコース料理を食べることができるとは思わなかった。
二人で取り分ける式はマナーでいったら美しくないかもしれないけれど、お店の人もみな協力してくれたし、私自身はじめての経験で楽しかった。
ふたつのコース料理を味わえるなんて贅沢で楽しいし、彼の気持ちと性格が表れている。

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料理は何品も出てきた。
メインは魚、肉の選択ではなく、魚も肉も両方、途中で鴨も。
最後を締めくくったのはステーキで、これも違う種類のステーキを二人で味わった。

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華やかに演出されたのはデザートの一品目で、メレンゲを焦がしたもの。
そうしてデザート。
「デザートは全部食べなくてもいいよ」
なぜかジャオユーさんはそんなことを言う。

デザートを食べ終えてトイレに立つと、手洗い場で隣のテーブルの男性と会った。
テーブルひとつ挟んで向こうには、男性の二人組が食事をしていた。
高いワインを次々飲んでいた二人だった。
「ハッピーバースデー!」
男性は中国語と英語を交えながら私にそう話しかけてきた。
どうして私が誕生日だと知っているんだろう?
「実は自分も今日が誕生日なんだ」
男性は言った。
「え、そうなの?向こうのカップルも誕生日みたいだね」
今この時間、レストラン内には三組のお客しかいなかった。
私たちが入店した時、一組のカップルがすでに食事を始めていて、テーブルにはハッピーバースデーと書かれた花で飾られた黒板が置かれていた。
偶然にも誕生日のお祝いをするカップルが二組、と思っていたらなんともう一組もそうだったとは。
しかも国慶節が誕生日とは不思議な縁である。

席に戻り、「隣も誕生日なんだって」なんて話をしていると、向こうから店員さんがケーキを運んできた。
ジャオユーさんが用意し持ち込んだものだった。
紙の王冠までついている。
大人になって紙の王冠をかぶる機会があろうとは。

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(ジャオユーさん撮影)

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ケーキは、意外にも抹茶味のミルクレープで、中には小豆が入っていた。
とてもおいしい。
私がそう言うと、「ここのは成都で一番有名なお店なんだ」
切り分けて食べながら、
「せっかく三組の誕生日がいるんだから、彼らにも分けて送るのはどうだ?」
ジャオユーさんがそう提案した。
私ももちろん賛成したが、あいにく一番先に入店していたカップルは食事を終えて帰るところだった。
切り分けたケーキを隣の男性二人組に持っていき、
「生日快楽!」
二人とも喜んでくれ、私たちの喜びも倍になった。
誕生日の男性は何枚か写真を送ってくれて、その中には私たち二人のものもあった。
「これも縁で、いい思い出になったね」

するとふとジャオユーさんが足元からなにか箱を取り出した。

「誕生日おめでとう」
少し早いけれどプレゼント、そういってチベットのブレスレットをくれたのはつい先日のことだった。
申し訳ないけれど少し期待のものと違ったあれだ。
「誕生日に渡すからこそ誕生日プレゼントだろう?あれが誕生日プレゼントなんて誰が言った?」
ちょっと得意げなジャオユーさん。

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箱はけっこう大きい。中身はなんだ?

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箱を開けてみると、大きな箱の中には小さな箱があった。
「あれ?小さい」
思わずつぶやくとジャオユーさんは笑った。

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小さな箱を開けると、その中には可愛らしいゴールドの指輪があった。
私がさんざん「銀色のものはつけないゴールド主義」なのだと話していたのをしっかり覚えていてくれている。
指輪は真ん中にハートがあり、その両側には鼓動を示すジグザグ。
「この鼓動は二人の愛情で、真ん中で交わるんだ」
女性が好きなデザインのものはたくさんあるけど、自分は自分の考えと思いが表れたものを選びたいのだと、彼は言った。

成都で一カ月生活して、今後の二人の計画について具体的に相談しよう。
そんな話をしていたので、もしかしたらそういう指輪が待っているかもしれない、そんなふうに期待していたし、彼の言動をみればそれ以外ないとも思っていた。
けれども「不安だ不安だ」とそんな話ばかりする私に、とうとう彼は「無理強いはしない、結婚はいつでもマーヨーズがしたい時に決めてくれればいい」そんなふうに言い出し、私は自分でプロポーズを遠ざけてしまったのだった。

そういうわけで、この指輪はそういう意味のものでもなく、普通の恋人指輪。
日本であれば、恋人指輪もだいたいが左手につけるだろうと思う。
今回のような場合はどうなるんだ?
彼が手をとってはめてくれれば一番楽なんだけど、ジャオユーさんは対面でにこにこして待っている。
プロポーズされてもいないのに自分で左手につけるのは痛いような。
でも右手につけるもつまらないような。
中国ではこういう場合どうするんだ?
問題は私たちは今微妙な段階にあり、結婚を現実に話し合っているが正式な段階には至っていない。
結果、私は自分で右手にはめたのち、
「日本では恋人も結婚に憧れるような感覚で指輪を左手にはめるけれども、私は次の指輪を期待したいので右手にはめるね」
と説明をした。
「もちろんだ!そのときの指輪は男の秘密だ、いつどこでなんてまだ教えられない」
いちおう考えてくれているのかな。

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お店を出ると、外はすっかり夜景だった。

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流れていくビルの灯りに気が遠くなりそうになる。
やがて郊外から成都市区に入り、私たちは先日陳麻婆豆腐を食べた飲食街に立ち寄った。
そこには飲み屋さんも多数あり雰囲気も悪くない。
その一軒へ。

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どうなることかと思った誕生日、豪快な気質の彼がこんな一日を与えてくれるとは思っていなかった。
いつまでも余韻に浸っていたいけれど、気づけばすでに日にちは変わり、その一日は早くも昨日になってしまった。

〈記 10月9日 成都市区にて〉

⇒ 30日間成都滞在〈8日目〉 へ続く

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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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