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2018-11-07

30日間成都滞在〈12日目〉

2018年10月6日、朝リビングのソファーで目が覚めた。
寝心地のいいソファーで、寝転びながら成都の夜景まで楽しめる。
ジャオユーさんはすでに起きていて、私は訊いた。
「重慶へはいつ出発するの?」
連休最後の二日は近隣の都市、重慶へ出掛けジャオユーさんの友達と重慶火鍋を食べるという話になっていた。
「重慶へは行かないことにした」
…ことにした?
「聞いていないよ」
聞いてみると、成都から重慶まで高速で三、四時間。重慶はそれほど面白い場所でもないし、行って帰ってきて明後日出勤ということを考えるとだるくなったらしい。
「重慶なんて夜景くらいしかないし、夜景なんてなんの面白みもない」
そう言った。
「あなたにとって面白い場所じゃなくても、私にとっては面白いよ」
そんな話を昨夜したばかりだった。
「明後日出勤なのに、疲れさせてもマーヨーズは何も感じないのか?」
でも最後二日に重慶に行くっていうのは、そもそもはジャオユーさんが言い出したことだったよね?
「行く行かない、どちらでも構わない。でも私に一言ほしいよ」
なぜ私が訊くまで教えてくれない。
「だから今言ったじゃないか」
もう。

そういうわけで重慶には行かないことになった、というより行かないことになっていた。
成都の空は相変わらずの曇天だったが、明日の天気はさらに悪そうだったので、今日はバイクに乗ってドライブに行くことになった。

まず朝ご飯に寄ったのは、綿陽米線。
米線とはいわゆるライスヌードルのことで、成都の綿陽は古くから米線が有名なのだそう。
辛い物と辛くないスープを選ぶことができて、ジャオユーさんは辛いものを、私は辛くないものを頼んだ。

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こちらが辛いスープ。
真っ赤なスープはもはやどす黒くも見えるけれど、味はおいしい。

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こちらは辛くないスープ。
浮かんでいるのは巨大な昆布。
私は米線よりも麺の方が好きだけれど、麺より米線の方が早く出来上がるので、ジャオユーさんは米線が好きなのだそう。

バイクに乗ってけっこう遠くまでやって来た。
巨大な道路を猛スピードで走り、一時間半。
軽い山道に入り、突然人気が増した。
道端にはずらりと芋や柚子や野菜などを並べて売る人たち。
その脇にはずらりと路上駐車の列。
近くに民家があるようにもみえないけどなんだ?と思っていたら、その先には駐車場があり、ジャオユーさんはそこでバイクを停めた。

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駐車場には地図があった。

成都近郊の古鎮が紹介されている。
平楽古鎮、安仁古鎮、洛帯古鎮、黄龍溪古鎮、これらは行ったことがあるけれど、そのほかの物は初めて知る古鎮だった。
またここには記載されていない古鎮もある。
「ここは新しい建物だからあまり意味はない」
そんな話を聞きながら、私たちが到着したのが、この地図の右端に書かれた「五風溪古鎮」だということを知った。
ジャオユーさんは行先を伝えてくれないことがあるが、それも楽しい。

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入っていくと、食べ物のお店がずらり。
その中でジャオユーさんがひとつ買ったのは。

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糖油果子というお菓子。
串にささった軽い揚げドーナツのようなもので、おいしい。
「子供の頃いちばん好きだったお菓子」なのだという。
そう言うだけあって、普段は私にたくさんくれるのに、ほとんど一人で食べてしまった。

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国慶節の連休で、中国国旗がはためいている。

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古い観音堂もあったが、こちらは閑散としている。
人でごった返しているのは食べ物がある場所だ。

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この道、実は斜面に通っており、見下ろすと下を川が流れていた。

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おいしそうなものがたくさん。
唐辛子がのった小吃は四川を代表する小吃だ。
それに凉麺に抄手なども。
以前はこういうものにも特に食欲をそそられることはなかったが、ジャオユーさんと出会ってからはすっかり虜になってしまった。
「中国の人はなんでも食べる食べる食べるだよね」
どこに行っても目的は食べること。
古鎮も、風情を楽しむというよりは食べに来ているみたい。
そう言うと、「そうだ、マーヨーズの言う通りだ」そう言って小吃を物色するのをやめて、食べ物を見ることなく通過しようとする。
そういう意味じゃなかったんだけど。
私も、食べたかったんだけど。

やがて開けた広場にでると、そこには川に向かうようにして、大きな関帝廟があった。

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300年前、清の康熙帝の時代に創建してから数度改修をくりかえしているのだそう。

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この広場の先は、「工事中につき通行止め」になっていた。
ジャオユーさんによると、この先こそ古い街並みーつまり観光客向けに整備されたのではない地元の人たちの生活―があり、それこそ私を連れて行きたかったところなのだそう。
「仕方ない、あとで別の道から行けるか調べてみよう」
この時はそう言ってくれたけど、結局周辺の道路があちこち封鎖されていて、行くことはかなわなかった。

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広場から川を渡って対岸へ行き、ぐるりとまわりバイクを停めた駐車場まで戻ってきた。
このあとどこへ行こうという話になって、ここに到着した時に見かけた古鎮を案内する地図にも載っていた街子古鎮へ行ってみようかという話にもなったけれど、ここから100㎞以上の距離があり時間がかかるからまた改めて、ということになった。
そこですぐ近くのある古い邸宅に立ち寄って帰路につくことに。

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立ち寄ったのは、「賀麟故居」。
五風溪古鎮のすぐそばにそれはあった。

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静かで緩やかなな石階段を上っていくと、年代を感じさせるゆがんだ石階段と門が見えた。
日本でいうと、なんだか寺院の入り口みたい。

賀麟は中国では有名な思想家、教育者なのだそう。私はいままで知らなかった。
1902年このお屋敷にて生まれ、1992年に亡くなった。
お屋敷はそうとうに広くてそして立派だった。
賀麟がかなり立派な家柄に生まれたことを感じる。

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こちらは客間で、賀麟のブロンズ像が置かれている。
中国ではとても有名で、彼の教育のもと多くの著名人が生まれたそうで、屋敷内のあちこちにどんな著名な教え子がいるのか写真が展示されていた。
また現代中国の礎に貢献した人として、ここはひとつの愛国教育の場でもあるようだ。

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お屋敷は奥へ奥へと続いている。
一番奥には、祖先を祀る廟があった。
その手前には古い写真が紹介されており、それは1923年に賀麟が結婚する際に、ここで撮影したものなのだそう。

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こちらがその写真。
右から二番目の立っている男性が賀麟。
見比べてみると、石段の溝などが現在と一致し、たしかに同じ場所で撮影されたものであることがわかる。

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今まで色んな著名人や裕福な人の邸宅を見学したことがあるけれど、このお宅は今まで目にしてきたものとは趣が違う。
まるで日本のどこかのひっそりとしたお寺に立ち寄ったみたいな静謐とした美があった。

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竹林の石階段を下りて戻っていくと、小さな濁った川があり、そこには柚子がたわわに実っていた。
成都に到着してからいたるところで売られている巨大な柚子だ。

ここから帰路につき、途中で公道から外れ、バイクは山道に入っていった。
「おもしろい道を通って帰ろう」
そう言って入っていったのは、木枝が進行を邪魔するような細い裏道だった。
山を登り、やがて少し開けた山道にでた。
曇って冴えない表情をした空は明るさを見せはじめ、開けた山の風景の向こうに雲間から陽光が差すのを見た。

山のドライブは楽しくて、都会の喧騒から離れて気分もまったく違ったものになる。
人のぬくもりがある街の活気も好きだけれど、人気のない静けさも好き。
ジャオユーさんはところどころで、「ここでテント張って一泊するのもいい」と言った。
けれども寒い毎日が続く最近、おそらくそれが実現するのは来年を待たなければならないだろう。

道は悪く、いたるところで崩壊による工事を行っていた。
それはもう一カ所二か所という数ではない。
ある道では、狭い個所を乗り越えるために、安全のために私はバイクから下りて通行した。

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こちらがその時の写真。
バイクドライブは最高の思い出だけれど、写真に残すことはできない。
予想外に下車したタイミングで、なんだかやるべきことみたいな感覚になってあちこちを撮りまくる。

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こうした崩壊した道路は数え切れず、ここ数日の雨によるもののよう。

知らない山道のドライブから、いつの間にか知っている道に出た。
前回成都滞在時にジャオユーさんがバイクで連れてきてくれた、龍泉山だった。
桃の産地として有名ななだらかな山である。
ここには龍泉湖という湖があるようで初めそちらに行ってみる話になったが、龍泉山も道路崩壊個所が多く、それにより道路が通行できなかったために諦めた。
その代わり途中で立ち寄ったのは、「石経寺」という名の大きなチベット仏教寺院だった。
正門はかなり大きくて立派だったけれど、ジャオユーさんはそこを通り過ぎ、横の小さな入り口から寺院へ入りそのままバイクで坂を上り始めた。
「時間がないなからバイクで行くけどいいか?」
中国の多くの寺院がそうであるように、この石経寺は山の斜面に座し、寺院内部は斜面を登っていく形になる。
私たちは寺院内部の車道を利用してショートカットすることに。

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一番奥のお堂がこちら。

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すぐ横には巨大な枯れた木の幹が横たわり、そこにはたくさんのお金が挟まっている。
「安全には出発点はあっても終点はない」
この巨木とどんな関係があるのかは謎だけれども、たしかにその通りだなと妙に納得する。

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ここから私一人お堂に上って言ったけれど、仏さまはすでに閉められていた。
その正面にはたくさんのマニ車。

龍泉山を下り、街に出てご飯を食べてから帰ることになった。
街には火鍋のお店が多かったけれども、私のリクエストで川菜のお店に入った。
川菜とは四川の味覚。

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ジャオユーさんはここにも友達がいて、かつてこのお店に入ったことがありここに来たのだという。
「このお店のおすすめは血旺だけど、マーヨーズの為に今日は選ばない」
そう言って、いくつかの料理をセレクトした。
血旺とは血を固めた料理。
南京で重慶で成都で、すでにいくども口にしすでに抵抗はなくなっていたけれど、それでも積極的に好んで食べる感覚はない。

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お鍋を覗かせてもらった。
大きな鍋の中には血の海に沈んだたくさんの血旺。

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ジャオユーさんが頼んでくれたのは、麻辣な鶏と、辛くない茄子料理と、辛い烤魚。
それにバイクドライブで私の身体が冷えたのを心配し、白酒を。
四川の辛さも麻辣も現地人のようには行かないけれど、外国人としては十分に慣れたかと思う。
それでも一番おいしく安心した味は、辛くない茄子だった。

お酒を飲みながら、お互いの酒の歴史について語った。
私の酒デビューについてここに書くことはできないが、デビューと同時に私の飲み方はほぼ決まったようなものだった。
こんな年齢になってもそんな飲み方をするのは成長がないとも思うけれど、朝から真っ赤な顔をしているどこかの親父さんなんかを見ては、こういう人もたくさんいるんだし人それぞれと納得しここまできた。
ジャオユーさんはというと、やっぱり昔から酒量は多かったが、それでもほんとうに美味しいと感じるようになったのは成都に戻ってからなのだという。
新疆時代は友達もみなかなりの酒飲みだったし、飲む量も多かったが、味わうお酒ではなかった。
ある冬の祭日、朝から各家で酒宴に参加したのだという。
夜にはそうとう酔っ払っていて、社宅へ戻る途中、公衆トイレで眠ってしまった。
偶然近くに知らないおばさんがいて、トイレからなかなか出てこないことに気づいて救出してくれた。
新疆の冬、そして深夜のこと。
零下20度の世界である。
「あの時あの人が気づいてくれなかったら間違いなく凍死していた」
そんなふうに話すジャオユーさんの表情は、それがすでに過去であることを伝えている。
今では、お酒を飲んで酔うことはあっても、自分を見失うことはけっしてないのだという。
それはなんだか私へ向けられた言葉みたいにも感じられた。
私は自分を見失うことなんて日常茶飯事だからだ。

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ふたたび夜のドライブで成都市区へ戻り、私たちはあるおしゃれな区画へバイクを停めた。
こじんまりとしているが、ここだけ別世界のように、若者が好きそうなお店が並んでいる。

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これらはみな酒吧で、好きなお店を選んでいいというので、こちらのお店を選んだ。
入り口にはビートルズやオアシスなどの有名なミュージシャンのジャケットが配されていて、入り口の黒板には「全部のビールが2割引き」と書かれていた。

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ところが頼んだビール。
「高いな」
ジャオユーさんが渋い顔をした。
店員さんに価格を確認し、また苦い表情をした。
「あれ、2割引きって書いてあるよ」
私が言うと、
「店員によると、ダースで買うと2割引き、単品だとこの価格らしい」
「それって嘘つきじゃないの?‟すべて“って入り口で見せてるのに」
「そうだ、中国でだってこれは法律違反だ」
警察に知らせたっていい、彼はそう言った。
彼によると、ここは短期でお店がよく変わるのだという。
多くの人がここでお店をやることを夢見るけれど、賃貸料が高い。
だから結局経営が立ち行かなくなって、継続しないのだとか。
「だから、こういうことになるんだね」
私は言った。
せっかくのいい雰囲気、せっかくジャオユーさんが連れてきてくれたお店にケチをつけるようで、なんだか申し訳ない気持ちにもなったけれど。

〈記 10月15日 成都市区にて〉


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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