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2018-11-07

30日間成都滞在〈13日目〉

2018年10月7日、国慶節連休の最終日である日曜日。
明日からとうとうジャオユーさんの出勤が始まってしまうので、最後の一日を楽しみたい。

朝起きて、「何を食べに行こう」と言うので、前回気に入った舗盖麺をリクエストしてみた。
10㎝を越す幅広な麺だ。
ジャオユーさんは前回と同じ、地元人に人気な有名店へ連れてきてくれた。

お店の入り口には小さな屋台が出ていた。
人気店の前でお客さんを拾おうという目論見かと思われる。

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それは昨日、五風溪古鎮でジャオユーさんが子供の頃いちばん好きだったと教えてくれた、糖油果子という揚げドーナツのお菓子だった。
これからご飯だけれど、ついつい食べてしまう。

狭い店内にはたくさんのお客がいたが、タイミングよく食べ終わったお客がいたので席を確保できた。
選ぶ余地はないので相席状態で座る。

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舗盖麺はこうして作られる。
広がった麺生地をちぎっては伸ばす。

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こうしてできあがるのが、こんなに幅広な麺。

私は大椀を希望していたが、味は指定しなかった。
いつもジャオユーさんが訊かずに選んでくれるし、自分自身も選べないので要求することもなかった。

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やってきたのは二つのお椀。
右は、私が前回二度食べたもの。雑醤麺で、ひき肉の餡がかかっている。
私はまたこの味を頼んでくれると思い、何も言わなかった。
けれども大椀で出てきたのはもう一つの方。
「マーヨーズには排骨を頼んだから、こっち」
ジャオユーさんがそう言って、お椀を私に渡してくれた。
実を言うと、私は豚肉が苦手で、それでもしゃぶしゃぶだったりハンバーグだったり餃子だったり、おいしく食べれるものもたくさんあるのだけど、排骨が実は好きではなかった。
けれど、この麺の上で排骨の占める割合というのはほんのわずかなわけだし、せっかく頼んでくれたし舗盖麺を食べたいと言ったのも味を指定しなかったのも私なので、だまって食べ始めた。
だいぶ食べ始めたところで、やっぱり隣の雑醤麺が恋しくなった。
「実は排骨苦手で、そっちの味の方が好きで…」
そう言うと、ジャオユーさんはすでに食べ終わったお椀のスープをくれたので、排骨の麺をそちらに引っ越しさせて食べることにした。

お店を出て。
「これからは食べれないものは事前に言うんだぞ」
ジャオユーさんがそう言ったので、
「豚肉好きじゃないことも排骨好きじゃないことも何度も言ったことあるよ」
私がそう返すと、
「ない!それにマーヨーズが好きな抄手やさっきの雑醤麺だって豚肉だ。でも好きじゃないか!」
「豚肉っていってもおいしく食べれるのもあるんだよ」
私にとっては真実だったが、ごちそうしてくれる側の人間にしてみたら、私が
わがままを言っていることはわかった。
でも今後の為に排骨が好きではないことは伝えておきたかったのだ。
「もう二度と豚肉頼まない」
ジャオユーさんは怒った。
「前とは違う味を食べさせてあげたくて選んだのに、人の好意を台無しにした」
それから彼はなにも話さなくなってしまった。

マンションに戻ると、彼は無言で先日の烤肉の後片付けなど、雑事を始めた。
私の方を見ることもなく、話しかけることもなく、まるで私の存在が見えていないよう。
私は私で書斎に移り、滞在記を書く作業を始めた。
夕方になり、ジャオユーさんがこちらを覗いた。
「今からお店に行くけど来るか?」
相変わらず不機嫌なにおいがぷんぷんしているが、仲直りしたくて話しかけてくれたのはわかった。
お店、というのはあるイギリス人が経営するお店のことだった。
数日前に、中国語のQ先生がジャオユーさんに成都にあるひとつのお店を紹介した。

お店の名前は、BLUE SHEEP-岩羊―。
成都市区南西にチベット関連のお店が建ち並ぶチベット街がある。
観光地として有名な武侯祠や錦里がある場所からほどない場所に、ずらりとチベット仏教に関わるもの、仏像だとか仏具だとかそういうお店がずらりと並び、そこから一歩裏に入っていったところにそのお店は隠れるようにして存在する。
お店を経営するのは、一人のイギリス人女性、レイチェルさんという人だ。
73歳になる彼女は、これまでの人生、医療を中心に多くの慈善活動を行ってきた。
国境を越え、45年間に16もの貧困国家を訪れ、医療活動や医療にまつわる教育を行った。
そうしたなか初めて中国を訪れたのは、1989年のこと。
海抜5000mに広がる青藏高原で医療活動を行った。
その後、彼女は8年半にわたって、チベット方面で活動をつづけた。
こうした場所で骨折したり感染症に罹った人たちは、その部位を切断するしかなく、そうした人たちがさらにその後貧困に苦しむという残酷な現状を目の当たりにした彼女は、かれらに彫刻や絵画、裁縫などの技術を教えはじめた。
そして、そうした技術がかれらの仕事となることを願った。
けれども、それらを売る場所や機会がない。
そこで始めたのが、この「岩羊」だった。
2013年のことだったという。
店内にはさまざまな手作り工芸品が売られている。
それらはみな、病気やケガなどで身体または生活に困難をかかえる人たちが制作したものである。
価格は決して高くはないが、しかしまた安くもないという。
利益のほとんどはそれらを制作したかれらの手に、レイチェルさんのもとにほとんど収益は残らないのだという。
青羊の経営が軌道に乗ったとき、彼女は癌の宣告を受けた。
しかし手術の為に六週間にわたり帰国した時にも、このお店を放棄することはなかった。
彼女は自分の人生の時間すべてを使って、信念をつらぬくことを決意しているのだという。

私たちは数日前から、このお店に一緒に行きたいと話していた。
若干雰囲気の悪いタイミングになってしまったけれど、私たちはバイクで向かうことに。
マンションからお店まではけっこう離れている。

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通りから裏に入ったところになるので、見つけるのに少し手間取った。
けれども鮮やかな水色が目を引くお店は、一目でそれとわかった。
ところが、休業日の札。
日曜日が休日だったようで、私たちは事前にそれを確認していなかった。
気が付けば、同様にこのお店を目当てに来た女性が一組。
閉ざされた窓から覗くと、雑貨や衣服など、彼女の慈善活動を抜きにしてもとても魅力的な商品の数々がかろうじて確認できた。
必ず日を改めて来よう、そう決めて今日は諦めることに。

営業していないものは仕方ないので、私はジャオユーさんを置いて散歩に出掛けることに。
青羊からてくてく歩いていくと、裏通りにも関わらずL字の続くお店はみなチベットのレストランだった。

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どれも雰囲気がよくて、中国各地の他の料理とは違った様相をしている。
チベット料理ってどんなものがあるんだろう。
ヤク、とかかな。
中国人、日本人問わず、チベットに深い興味を持つ人は多い。
旅行に憧れる人も多い。
そんな中で、私はチベットに対して少し距離を置いていた。
中国のさまざまな方面の中で、こちらの方面に対する興味は薄かったといえる。
だからチベット料理なんて考えたこともなかった。
メニューはチベット文字なのかな。
お店を外から覗いてみると、多くがワインを並べている。
やっぱり、白酒っていうよりはワインが合いそうな気もする。

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このレストランの並びから少し歩いていくと、骨董品といえば響きがいいけれどもいわゆるガラクタ市のような雑多な市場に出た。
人と物が乱雑に混ざり合う混沌とした空間だ。
私はすみっこの階段に腰かけ休もうとすると、すぐそばの果物売りの男性が、
「風邪ひいてしまうよ」
と段ボールをよこしてくれた。
それを下に敷いて少し休むと、急激な眠気が襲ってきた。

ふと携帯を見てみると、なんと一時間もの時間が経過していた。
ジャオユーさんからはメッセージが。
「見つからないから先に帰ってるぞ、タクシーで帰って来なさい」
二人で、美しい心の人が開いたお店の、素晴らしい手作り工芸品の数々を買い物するのを楽しみにしていた。
ところがあろうことか、独りぼっちになってしまうなんて。

バイクで来たし私はこのお店の所在地をこのとき知らなかったので、マンションがここからどの方向にあるのかすらわからない。
曇った空に、方角すらもわからない。
ただ一つわかることは、こことマンションは、成都市区の正反対の方角にあるということ。つまり、遠いということ。
やっぱりタクシーだよな。
そう思ったけれど。
時刻はまだ夕方だった。
せっかくの機会だから歩いていってみようか。
ダメそうだったらその時にタクシーに乗るか、ジャオユーさんに助けを頼むかすればいい。
そう思い、私は出発した。

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この方向であっているんだろうか、そんな不安に駆られながらも、出発して二時間後、ようやく成都の真ん中、天府広場まで戻ってきた。
ここは成都市区の中心部なので、ここまで戻ってくればあとはだいたいいけるだろう。
問題は、日が暮れ始めていることだった。
「鍵はドアにかけておくから。門は守衛さんに開けてもらいなさい」
ジャオユーさんは、出かけるからとメッセージを送ってきた。
マンションは敷地に入る時と建物に入る時に、それぞれセキュリティー解除のカードがいる。
ところが、私はジャオユーさんと一緒に出てきたので、鍵もカードも持っていなかった。
ご飯食べに出ちゃうのか。
突然さみしくなり、マンションに戻る前にどこかで飲んで帰ろうと決めた。

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毛沢東の像が目印の、天府広場。
この裏が、前回ビザの手続きをした思い出深い出入境管理局だ。

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まっすぐ歩き、近くにパンダ塔なる電視塔が見えてきた。
すると、落ち着いた街並みの中に、酒吧を見つけた。

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前にジャオユーさんと来て、満席で入れなかったお店だ。
よし、ここで飲んで帰ろう。

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お店はまだ開店したばかりのような雰囲気で、数組のお客さんと同時に入店した。
頼んだのは、マルガリータ。
中国は日本に比べて、カクテルがそんなに身近ではない。
だいたいが、ビールとか白酒とかワインでみんなでわいわいする感じで、日本のように一人でふらりとバーを訪れてカクテルを、なんてのはあまりない。
だから、中国でカクテルに出合うことはそう多いことではないし、ましてや日本のバーのようなレベル、メニューの数なんてのは、もしかしたらそもそもないのかもしれないとも想像している。
そんなわけで、メニューのカクテル欄を見てみると、案の定わずかなもの。
その中で、私の好きなマルガリータがあったので、それを頼むことにした。
私が好きなカクテルを順にあげていくと、一番目がダイキリ、二番目がギムレット、三番目がマティーニ、そして四番目がマルガリータ。
メニューにはあいにく一番目から三番目までそのどれもなく、マルガリータがあった。

数組と同時入店だったので、頼んだお酒が出てくるのにそうとうな時間がかかった。
カクテルが出る時、「待たせてすみません」バーテンダーの男性はそう謝ったけれど、このお店でカクテルを作るのはどうやらこの人だけのようで、てんてこまい。

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私はカウンターで三杯、マルガリータを飲んだ。
マルガリータ三杯、それにピスタチオで合わせて約200元。
少なくない出費だけれど、日本だったらもう少しかかってしまうだろう。

店内には小さなステージがあり、今日は若い女性が歌を歌っていた。
切ない歌声がうつくしいなと、うっとりした。
中国の酒吧はほぼといっていいくらいに、どのお店にも歌を歌ったり演奏を披露する人がいる。
けれども私の印象だとそれらの多くが、上手ではないか、あるいは雰囲気を壊してしまうようなものか、とそんなところ。
今の若い人はこういうのが楽しいんだなと思う。
それに反して今私がいるこのお店は、他の酒吧とは雰囲気が違った。
歌の演出もすばらしく、それでいてそれがお酒やおしゃべりの前に出ることなく、後ろで控え目に存在する感じ。

三杯のショートカクテルを飲んで少し酔いがまわり、四杯目は飲みすぎだよなとマンションに戻ることにした。
歩いてマンションに帰り、守衛さんに通してもらい部屋まで戻ると、ジャオユーさんはまだ昼間の服装のまま起きていた。
すでに深夜の時間帯、明日は連休明けの出勤日。
私はまるで親を心配させながらも好き勝手に遊ぶ子供のようだ、と反省した。
反省しながらもやがて夢の中へ。
聞いたところによると、ジャオユーさんはほとんど眠れずにそのまま夜が明けてしまったらしい。

〈記 10月16日 成都市区にて〉


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まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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