FC2ブログ
2018-11-07

30日間成都滞在〈16日目〉

2018年10月10日、珍しい陽射しを見せてくれた昨日に引き続き、今日も青空が広がっていた。
ジャオユーさんはお昼に帰宅すると、
「今日は天気がいいから、今夜は屋上で烤羊肉をやろう」
そういい、私を屋上へ連れて行った。
ジャオユーさんの友達が送ってくれた羊肉がまだ残っているのだ。
26階までエレベーターを昇り角を曲がると、さらに上まで階段が続き、そこに屋上はあった。

1810101.jpg

快晴の下に広がる成都の街並み。
私たちは屋上のどの場所でどの方面の景色を見ながら烤肉をするか相談しながらも決まらず、夜を待つことにした。

1810102.jpg

1810103.jpg

お昼を食べに来たのは商業施設の一角にあるビザハット。
天気がいいので屋外の席で。
せっかくの天気だからと座ってみたものの日差しがきつく、10秒で椅子を日陰に移動した。
成都はもともと晴天率が低いようで、今日のように天気がいい日にはみなこぞって外に出掛け食事をするのだという。
見渡せば、多くの人がそこらで各々の時間を楽しんでいる。
「あ、あそこに座っている女性は同じ会社の人だ」
そんなふうに言ったかと思えば、通り過ぎる人の何人かはジャオユーさんの知り合いのようで声をかけていく。

ジャオユーさんはここからそのまま職場に戻ることにし、私は散歩に出掛けることにした。
「近くに大学があるから中を散歩してくるといいよ」
そういって私に道順を教えてくれた。
ここをまっすぐ進んで川に着いたら曲がって…。

1810104.jpg

木漏れ日の中を散歩しながら大学の入り口を見つけ中へ。
電子科技大学は成都を代表する大学の一つ。

1810105.jpg

構内にはざまざなな建物がある。
研究棟や講堂や食堂や商店や、それから学生が生活する宿舎も。

1810106.jpg

外部の人も入ることができるけれど、急ぎ足でどこかに向かっていく彼らはきっとみなここの学生なんだろうなと思う。
すでに遠い昔になってしまった大学時代だけれど、私の場合勉学に励んだとはとてもいえない。
だから真面目に勉強する彼らに共感するのはなんだかおかしいけれど、それでも若かったあの頃を思い出す。

1810107.jpg

敷地内には大きな運動場があった。
手前にはバスケットゴールに卓球台、それから向こうには陸上のトラック。

1810108.jpg

ある教室棟では、これから授業が始まろうとしていた。
席は埋まっており、前までプリントを取りに来ては目を通す学生たち。
私なんかしょっちゅうさぼっていて、最後単位が足りなくて留年する寸前だったけれど、ここにはきっとそんな学生はいないんだろうな。
教室は二つ並んでいて、もう一つの教室の前では男子学生が数人外に並んでスクワットをしていた。
その前には女性が見張るような様子で。
もしかしたら日本ではもう見ることはなくなった、遅刻した罰みたいな感じかな、なんて想像をする。

1810109.jpg

大学散歩を終えて、外に出てみた。
相変わらずの天気で、陽光が覗いたかと思えばあっという間に雲がどこからか湧いて出てくる成都の空にあっては、今日はめずらしい一日になりそうだった。
天気がいいままだったら屋上で烤肉。
成都の空の神様は、私たちの烤肉への願いを受け止めてくれたようで、ジャオユーさんが帰宅した夕方、未だに雲一つ見つからない。

ジャオユーさんは帰宅するとそのまま厨房へ。
解凍しておいた羊の処理を始めた。
「私も手伝おうか?」
一応声をかけてみるも、羊の処理にはルールがあるということで、私の役目はそれを見学することになった。
先日平楽古鎮で烤肉をやった時には、烤羊肉串にもっとも適しているという後ろ足を使った。
今日は前足を使う。前足は若干筋があり、食感が後ろ足とは少し違うのだという。

18101010.jpg

18101011.jpg

脂肪を切り取り、筋に沿って肉を切り分けていく。

18101012.jpg

切り取り残った骨は、明日の料理の下ごしらえに使うということで、鍋に投入し火にかけた。

18101013.jpg

こちらは串焼きに使う肉。
先ほど切り取った脂肪と玉ねぎのみじん切りも、そしてビールを少々加えて。
これを串に刺していく。

18101014.jpg

四つの肉に対して一つの脂肪を間に刺す。
この脂が新疆烤羊肉串のポイントになる。

18101016.jpg

串焼き台、テーブル、椅子、食材、お酒などを屋上に運びあげる。
昼間は洗濯物でいっぱいだった屋上だったが、それらはすっかり取り込まれていた。
屋上にも住人のいる部屋があるよう。
「上層の部屋ほど高いの?」
私は訊いてみた。
単純に、上の方が家賃が高いというイメージを持っていた。
「上層は高くないんだ、一番高いのは真ん中だ」
ジャオユーさんの部屋は中層階だ。
「上層はエレベーターの行き来が時間がかかって面倒だし、下の階もよくない」
そういうわけで最上階は高くないのだというが、一度荷物を運びあげるだけでさっそくそのことを実感したのだった。

18101015.jpg

屋上へ上がったのは19時。
ちょうど暮れていく成都のすがたに、私は思わず声を上げた。
夜景へ変貌していく成都の眺めがうつくしかったのか。
マンションの屋上でこんな烤肉をするのが初めての体験でうれしかったのか。
ふたりの時間が始まることに幸せを感じたのか。
よくわからないけれど、そんなあれこれが入り混じって、私は声を上げた。
見上げれば、一部の方角に雲がわずかに湧いているものの、素晴らしい快晴。
透き通るような空。

18101017.jpg

準備はだいたい整った。
私たちはどちらからとも言い出すことなく、自然と成都の中心部方面に場所を決めた。
正面には都会の風景と、あの電視塔が見える。

18101018.jpg

炭を焚き羊を焼き始めた。
塩、唐辛子、孜然と、丁寧に調味料を振りかけ焼き上げていく。
焼いたところを「はい」と渡してくれるので、なんともぜいたく。
烤羊肉は焼き立てで食べるのことが重要で、冷めてしまったものはもうそれではない。どんなに質のいい肉であっても。
翻せば、今この烤肉は、もっともおいしい状態を味わえているということだ。
さらに言えば最初の一本の最初のひとくち。
このおいしさといったらない。

二人のテンションは最高潮にあがり、持ってきたビールはあっという間になくなっていく。
先日酒屋さんでケース買いしたドイツビールだ。
私はトイレも兼ねて、冷蔵庫に補充したビールを取りに行く。

18101019.jpg

18101023.jpg

18101022.jpg

そんなふうに楽しんでいると、気づけばビル群には明かりが灯り、電視塔も派手に色を変えはじめていた。
大都会の中、見上げれば秋の星座が散らばっていた。
晴れの日の少ない成都である。
ましてや都会で、こんな星空を見ることはそうそうないだろう。
「あ、人口衛星だ!」
またたかない小さな光が静かに弧を描いていく。
見上げる空には、雲ひとつ見当たらない。

18101024.jpg

実は今回、日本から切り餅を持ってきていた。
焼いて食べようと思って持ってきたものだったが、ジャオユーさんの厨房には焼く網がなくて、ちょうどいい、この串焼き台で焼いてしまおうと思い部屋から持ってきた。
食べ終わった串を並べ網替わりにし、そこに餅を並べ焼く。
ぷっくりと膨らみ焦げ目がついたところで、醤油をつけて海苔で巻く。

中国でもお餅は食べるけれどこういう味で食べるのは珍しいかなと思い、ジャオユーさんに食べてもらいたかった。
かぶりついて一言。
「うん」
日本では「うん」は時に美味しいという意味だったりするけれど、ジャオユーさんのそれがそうだったかはわからないまま。
ちょうど最上階の住民である女性が顔を覗かせたので、
「日本の味覚だから食べてみて」
ジャオユーさんは彼女にそう勧めた。
彼女は遠慮しながらも受け取った。
けれどおいしいと思ったかどうかはわからない。
私はお餅と海苔と醤油の組み合わせ、すごくおいしいと思うんだけど。

18101022.jpg

18101020.jpg
(ジャオユーさん撮影)

最後の羊をほおばっていると。
「マーヨーズ、見て!」
ジャオユーさんが突然大声を上げた。
私は彼がいったいどの方向を見てと言ったのかはわからなかったけれど、反射的に正面の夜景に顔を向けた。
すると上空を、眩しく激しい光が緩やかに緩やかに落ちていき、消えるかと思った瞬間、それは最後の命を燃やし尽くすようにもう一度眩しく輝き、そうしてちょうどあの電視塔の上で静かに消えた。
「…」
一瞬二人の間に沈黙の空気が流れ。
「生まれて初めて見た!」
ジャオユーさんが大声を上げた。
都会で流星を見ることは難しいけれど、あれは流星の中でも火球だった。
火球は一般の流星よりも大きな塵が大気圏に突入した場合に見られるいわば巨大な流星である。
マイナス等級の眩しい明るさと、ゆっくりと流れる動きに、はっきりそれとわかる。
もし普通の流星だったならば、この都会で目にすることはかなわなかっただろう。
火球だったからこそ見ることができたのだ。
けれども流星に比べ火球に出合うチャンスは少ない。
それなのに、たまたま烤肉をしていた方角にそれが流れた。
まるで意図的に配したみたいに、成都の夜景の上を流れて電視塔の上で消えた。
最後の羊肉を食べていたのにジャオユーさんはその瞬間たまたまそちらを向いていて、さらに火球の緩やかな動きだったからこそ、私も彼の声に反応して見ることができた。
さらに言えば、成都はほとんど晴れの日を見ることがなかったのに、昨日は日差しが回復し今日はみごとな快晴となった。それがなければ今夜屋上に出ていないしもちろん星空もなかった。
私たちはそんな偶然をそれぞれ口にしたけれど、興奮でお互い支離滅裂だった。
「日本では、流れ星に願い事をすると叶うというよ」
私がそう言うと、
「中国だって同じだ、だから一緒にいれるようにって願ったんだ」
数秒間にもわたって輝いた火球だったので、きっと届いたはず。
ジャオユーさんは興奮して一番仲のいい友達に電話をした。
「マーヨーズと二人で見たんだ!46年間生きてきて、初めてこんなものを見た!」
電話を切って、彼はSNSにそのことをアップしたけれど、すぐに削除してしまった。
「なんで削除しちゃったの?」そう訊くと、
「写真がない限りみんな信用しないよ、嘘だと思う」
「でもあれだけの火球なら見た人多いはずだよ」
「いや、きっと誰も見ていない、きっと見たのは二人だけだ」
そんなことを言っていると、私がアップしたSNSにコメントが入った。
安徽省の友達で、同じものかわからないけど自分も見た、と言う。
「安徽でも見た人いるよ」
私はそう言って、私たちが目にしたものが本物だということを伝えたかったが、やっぱりこのまま二人だけの流れ星にしておいた方がいい気もした。
「ほとんど太陽がない成都なのに、今日に限ってこんなに晴れたんだよね…」
なんだか神様が采配してくれたみたい。
星空だって、初めて見た。
そう言って見上げると、いつの間にかどこからか雲が湧き、少しずつ空を覆い始めていた。

18101021.jpg

18101025.jpg

ジャオユーさんのテンションは絶好調になりビールは次々と空き、彼は引き続きビールを、私は白酒の小瓶を飲み始めた。
「マーヨーズ、動かないで」
突然、彼が言った。
数秒後、彼のスマホを覗いてみると、そこには私の写真があった。
「なんてきれいなんだ!畜生!」
彼はあろうことか罵り言葉を連発した。
「なんで罵り言葉なの?」そう訊くと、
彼にとって罵り言葉は、とても気分が悪い時ととても気分がいい時と、両方有効な言語表現なのだそう。
成都の夜景に向かって、大声で罵り言葉を浴びせる。
「一番きれいな写真が撮れた。最高だ、この写真大きくして飾るべきだ」
彼はそう言って私の写真をSNSにアップすると、さっそくたくさんの人からコメントが入った。
自分の写真ながら、ほんとうにきれいな写真だと思った。

羊肉でテンションがあがり、暮れ行く夜景にテンションがあがり、屋上の開放感と星空に、そしてふたり同時に見た大きな流れ星。
最後に永久保存版の私の写真。

18101026.jpg

18101027.jpg

23時を過ぎ、徐々に街は明かりを落としていった。
それでもこの街はまだ眠っていない。
日付が変わり、私たちは手際よく片づけをし、屋上を下りた。
屋上から階段を下りる時、彼は軽くよろめいた。
「飲みすぎたな」
そう呟く声。
ジャオユーさんがこんなふうになるのは珍しいことだった。
肌寒い日々が続き、冬の予感さえ感じるようになった。
もう間もなく、こんなふうに屋外で楽しめなくなるだろう。
今日は最後のチャンスだったかもしれない。
そう考えるともしかしたらほんとうに、神様が与えてくれた一晩だったかもしれない。
本気でそう思った。

18101028.jpg


〈記 10月19日 成都市区にて〉

⇒ 30日間成都滞在〈17日目〉 へ続く

クリックしていただけると励みになります☆
↓↓↓
にほんブログ村 旅行ブログ 中国旅行(チャイナ)へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
クリックしていただけると励みになります↲