FC2ブログ
--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2019-01-02

15日南方周遊〈8日目〉 成都

2018年12月18日、がらっとドアが開き、乗務員さんが声を張り上げた。
「起きて!着きますよ」
時刻は5時。
成都站への到着は6時14分なので、起こしにくるにはちょっと早い。
5時半で十分間に合う。
それに成都站は終着駅なので、降り過ごす心配もない。
到着が早まったのかなと思い訊ねてみると、そういうわけでもなく定刻通りに到着するらしい。
身体のだるさと痛みは相変わらずで、なんの変化もないどころか、むしろ悪化していた。
私は昨晩に続き二粒目のキューピーコーワゴールドをオレンジジュースで飲んだ。
下段ベッドの女性はいつまでも寝ていて、乗務員は三度起こしに来た。
睡眠は二時間もなく一時間ちょっとというところで、私も寝ていたい。
けれどもそういうわけにはいかない。
私はベッドを下りて洗面所に行き、メイクを少し丁寧目に直した。

ジャオユーさんはこんな時間にも関わらず、出勤前に成都站まで迎えにきてくれるという。
彼は友達の誰に対してもこうで、でもやっぱりこんな時間に迎えに来てくれるなんて嬉しい。申し訳ないけれど。
望まないかたちの別れ方をして、最後のあの日から二か月が経った。
この二か月で私たちの関係は徐々に変化した。
電話すらすることもなく、限られたわずかなスマホ画面の文字からは感情も状況もくみ取ることはできず、自分の中で整理ができずにいた。
それでも時折、私への感情が伝わってくることもあった。
けれども彼の性格を考えると、だからこそ私のもとに戻ってくることはないだろうという確信があった。
一時的に腹が立って離れたならば、その感情が落ち着けばまた状況も変わるかもしれない。
けれども私たちの状況はそうではなく、愛情云々ではなく、状況から一緒に生活することは困難だろうという判断を彼がしたということがわかっていた。
だからいくらスマホ上でやり取りをしても、関係が復活することはありえない。
もし二人がまたやり直す時がくるとするならば、それは実際に会って実際のコミュニケーションを重ねたあとのことだろう。
けれども5000㎞の距離を隔てて、その間には国境があり、そういう状況は限りなくゼロに近いと思えた。
私は疲れ、友達宣言をした。

友達宣言をする前に、私は中国で仕事を探したいと相談していた。
そしてできるならば、慣れ親しんだ大好きな成都で働きたいと伝えた。
彼が嫌がれば成都を選択することはできないけれど、彼はよろこんでくれた。
お互いの関係がどうであれ、彼は私にとってもっとも信頼できるもっとも頼れる人であることに変わりない。
彼はその後、私の就職活動に協力してくれ、また事あるごとに落ち込み不安になる私を力強く励ましてくれた。
けれども11月の半ばから始めた就職活動はやればやるほど、絶望的になった。
まず、私の中国語能力は仕事で活用できるレベルに達していないこと。
また私の能力と職務経験は乏しく、選べる仕事の選択肢がたいへん狭いこと。
中国は外国人労働者の受け入れに対し年ごとに厳しくなっていること。
日本サイドから探すと、成都の求人は皆無に等しかった。
見つかる求人はみな上海や深圳、広州など別の地域だった。
日本サイドからいくつかあたり、それから中国現地の求人サイト二か所に登録し、中国サイドから探し始めた。
サイト上に学歴や履歴書などを登録しいくつかエントリーし、また別に中国語版の履歴書と職歴書をエクセルで作成しPDFにして用意した。いくつかの場所にはメールで書類を送り、また若干の反応があった先もあった。
けれどもそれらはもともと中国人を対象にした求人であり、やっぱり厳しいかなと感じた。
成都で仕事をしている日本人の方を紹介してもらい、相談する機会があった。
すると、私がエントリーしているところはみなそもそも労働ビザの手続きができない場所であるということがわかった。
スタート地点にも立てない。
今回の旅行記で何度か「成都での用事」と表していたのはこの就職活動のことである。
先方には私の状況を伝え、QQあるいは微信、スカイプなどでの面接か、あるいは私が中国滞在時に面接に訪れることができると伝えていた。
どこかの面接が入るといいなと期待していたけれど、結局それは実現しなかったのだ。
私はまだ失業保険を受け取っていない。
まだ若干の時間的猶予はあるけれども、毎月のようにのしかかる市県民税、年金、健康保険料は、まるで「仕事してないやつは生きるな」と言われているみたいにきつかった。
そんなこと言いながら旅行しているけれど、少ない貯金を使うことに恐怖を感じながらの旅行だった。
ジャオユーさんとも相談して、諦めて日本で正社員職を探すか、臨時で仕事をしながら糊口をしのぎ並行して成都の仕事を探すか、また中国各地場所を選ばず仕事を探すか、そんなことも考え出していた。

中国で仕事をすることを考え出したのは急なことではなかった。
4月に婚約を破棄し5月に職を離れまっさらになった時、人生は一度なのだから失敗覚悟で一度挑戦してみるのもいいかも知れないと思った。
けれどもいい機会なので、今年いっぱいは仕事を忘れ楽しんでみることにし、そのことは一度保留になった。
ジャオユーさんとのことがあり、また成都で仕事をすることを現実的に考えたけれど、先に結婚したいと彼が言っていたので、中国に定住してからゆっくり考えればいいと思いあまり現実的に行動していなかった。
そして今の状態がある。
中国で仕事をするとなると、日本で得ていた給料観念は一切捨てなければならない。
将来のことを考えるならば、安易に考えてはいけない選択だなと思う。
いずれまた日本に帰ってくるならば、それが歳を重ねたあとならば、私は生活能力を持たない。
そういうことも考慮すべきだと思う。
不安と迷いは毎日あるけれども、それでもやってみようという気持ちがあった。
いつか、中国と日本と両方に関わる仕事ができたなら。
それは私の願いだったから。

そういうこともあり、ジャオユーさんとの関係も徐々に変わりつつあった。
さっぱりした友達関係になるにはまだ気持ちの変化を待たなければならないけれど、悪い関係ではないと思った。

列車が徐々に速度を落とし始めた5時50分、ジャオユーさんから「おはよう」とメッセージが入った。
到着時間が早いので7時過ぎに来てとお願いしていたのに、彼はやっぱり時間通りに迎えにきてくれるみたいだ。

18121801.jpg

6時14分、定刻通りに成都站に到着した時、まだ完全な夜だった。
五か月前に私たちが出会った成都站出口を抜けると、こんな時間にも関わらずたくさんの人。
その多くがしつこいタクシーの客引き。
「友達が迎えに来るから」と言っても引いてくれない。
私がしゃべると、「どこの人?」
「日本人だ」と答えると、それを聞いて何人かの人が集まってきて盛り上がり始めた。
成都は国際的な大都市で外国人なんて珍しくないはずなのに。
昨夜の列車から私は珍しがられてばかりだ。
体調も悪く、ジャオユーさんを待ち緊張している私は、なんとかして彼らから離れた。

18121802.jpg

「マーヨーズ!」
声がして振り向くとジャオユーさんがいた。
恋人ではなく友達なんだからと、距離感を考えながら。
お互いに明るく会話をしても、ちょっと気まずいようなぎこちないようなそんなふうに感じたのは、私だけかも知れない。
「まずは朝ご飯を食べに行こう」
車を運転しながら彼は言った。
真っ暗に寝静まった成都の街は、おそらく私も通ったことがある道だろうに、まるで見知らぬ街みたいに思えた。
朝ご飯の話をして彼は続けて言った。
「二つの選択肢がある。民宿のマンションに泊まるか、家に泊まるか」
マーヨーズが好きに選べばいい。
民宿のマンションは一人で何部屋もあって寂しいかもしれないけれど、一人で思考に耽れる。
でも床暖房がない。エアコンはあるから問題ないけれど寒いかもしれない。
家であれば暖房はある。
好きに選べばいい。
ジャオユーさんはそう言った。
朝ご飯の話に続いてその話が出たので私は聞き間違え、朝ご飯をどちらのマンションで食べるのかと訊いてるのだと思い、
「どっちでも構わない」と答えた。
彼は返事をせず、また私も長いことその聞き間違いに気づかなかった。

18121803.jpg

車はある包子のお店で停まり、私たちはまだ暗い静かな街で朝ご飯を食べた。
体調は万全ではないけれど楽しく会話をしながら、彼の明るい態度に安心した。

18121804.jpg

マンションに着いたのは8時前。
空はすっかり明るくなり、マンションの大きな窓からは見慣れた街並みがはっきり見渡せた。
懐かしい、という表現は少し違うように思えた。
この二か月間はとても長く感じられたけれど、マンションに到着してみるとほんの数日ぶりに訪れるみたいなごく当たり前な感じがした。
すっかり慣れた場所だったのに。
もうこの場所を「私の場所」とか「私たちの場所」と言うことはできない。
不思議で表現しがたい感覚だ。
「まさかまたここに来る機会があるなんて思ってもいなかったよ」
ジャオユーさんは、これから出勤するから寝室を使って休んでいいと言ってくれた。
すっかり慣れた寝心地のいいベッドは、嬉しいような悲しいような複雑な感覚。

18121805.jpg

一時間ほど眠ってシャワーを浴び化粧をし直して、お昼に彼はマンションまで戻ってきてくれた。
お昼ご飯に向かったのは、これもまた何度も通った蘭州拉麺のお店。
相変わらずの繁盛ぶりで、この寒さにも関わらず屋外のテーブルまですべて埋まっている。

お昼を食べてマンションまで戻り、休んだ。
私はやっぱり恋愛感情が抜けていないと自分でわかっていたけれど、それでも友達ができそうだと思った。
そんな時。
「自分たちは一緒に生活はできない」彼は話し始めた。
結婚すれば、いつか問題が起き離れる時に、お互いのダメージが大きすぎるだろう。
マーヨーズは外国人で中国で生活して、もし結婚生活が失敗したらどうなってしまう?
でも友達なら大丈夫。
友達なら喧嘩もしないし、いつも一緒にいることができる。
一生、友達ができる。
将来ランドクルーズを買って中国じゅうを旅する時、マーヨーズも一緒に行ったっていい。
私は彼の決意が動くことはないことを再認識した。
と同時に、やっぱり友達できるかなぁと自分の感情に不安になった。

午後彼はまた出勤し、私は周辺を散歩した。
そうして夕方になり、小さいほうのバイクに乗って私たちは夜ごはんに向かった。

18121806.jpg

夕ご飯の前に寄ったのは、何度も訪れたことのある酒屋さん。
白酒からビールからワイン、そのほかの洋酒が豊富にそろっている。
ジャオユーさんは洋酒、白酒ををいくつか購入した。
お店には6リットルサイズの巨大な茅台酒。
価格はと見てみると、48800元、現在のレートでだいたい80万円以上。
買う人いるのかな。

ご飯を食べに入ったのは、烤魚のお店。

18121807.jpg

まずは先ほど購入したお酒を開け。

18121808.jpg

先に来たのはこちら。烤カエル。
骨つきのカエル肉は鶏肉と食感が似ている。

18121809.jpg

次に来たのは、烤魚。成都に親しんで好きになった料理だ。
この下には魚が隠れているのだけど、大量の調味料、材料により発掘しないと出てこない。
これらには、辛さ対策か、麻花がのっかっていた。
私たちの会話ははずみ、お酒も入り、やっぱり楽しいなと思った。
友達だっていいじゃないか、そんな風にも思えそう。

突然ジャオユーさんが私の写真を撮り始めた。
「違う、その角度、手はこうして」
どういうことかと思い撮ったものを見せてもらうと、見た覚えがあった。
数日前、九江から貴陽に向かう夜行列車の中で、ジャオユーさんから写真が送られてきた。
それは私も知っている彼の新疆の友達で、ちょうどその日成都に来ていて一緒に食事しているのだという。
友達が烤魚の前で笑顔でピースしている、そんな写真だった。
その写真と、料理も席もポーズも、一緒。
彼はその私の写真を、同じ友達に送信した。
そんな様子を見て、彼も楽しんでいることが感じられて安心する思いだった。

その後私たちは場所を変え、私も一緒に食事したことがあるジャオユーさんの二人の同僚を呼び、四人で飲んだ。
一人はワンジエで、私に友好的に接してくれる女性だった。
彼女の実家で作っている白酒を一本持ってきてくれた。
「職場の人たちには別れたことは言っていないんだ」
だからあまり深くは話さずに適当に合わせていればいい。
彼はそう言った。
職場というのはいろいろと複雑なよう。
私には少し酷だったけれど、お酒が入っていることが幸いして何の苦もなかった。

18121810.jpg

ワンジエは私たちの関係に対し、激励をくれる。
「彼は責任感が強いから、安心してついていけばいい」
「うん、わかった」
もう別れてしまっているんだけど。
私が成都で職を探していて、面接のために今回の滞在を用意したことを彼女はジャオユーさんから聞いて知っていた。
「一緒に生活するために、頑張ってね」
「うん、頑張る」
一緒に生活することはないんだけど。
二人ともとても友好的で、またけっこうお酒がまわりとても楽しい気分になっていた。
お店の前で二人と別れ、私たちはバイクに乗って深夜の街を走りマンションへ向かった。
テンションが上がっていた私たちは、バイクの上から大声で日本語練習をした。
「コンニチワ!」
「こんにちは!」
「ドウイタシマシテ!」
「発音ちがう!どういたしまして!」
一緒に酔っ払える相手としては、私にとってジャオユーさんはこれ以上ないほど合う相手なのだ。

マンションに戻り、部屋でもしばらく飲んだ。
そうして、ジャオユーさんは自分がソファーで寝るから寝室を使っていいと言ってくれた。
彼はけっこうお酒が回っているようだったので、私は彼を寝室に引っ張り重い身体をなんとか動かしてベッドの中に押し込み、一人ソファーで眠った。
このソファー寝心地がいいのだ。
この前の滞在の時、喧嘩した夜何度かここで寝たんだった。
私も眠りについてしばらくして、ジャオユーさんが寝室から起きだした。
「風邪ひくから、ベッドで寝なさい」
こうして同じベッドで眠ることになったけれど、彼は私に別の掛布団を与えた。
一つのベッドに掛布団二つ。
私はジャオユーさん側の掛布団を探ってみたけれど、掛布団の端はしっかり彼の身体の下に潜り込んで少しの隙もない。
何もそこまで拒絶しなくても。
大きなベッドの端っこと端っこで背中を向け合って、なんだか奇妙な寝心地だった。

〈記 12月26日 自宅にて〉


クリックしていただけると励みになります☆
↓↓↓
にほんブログ村 旅行ブログ 中国旅行(チャイナ)へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
クリックしていただけると励みになります↲
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。