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2019-01-02

15日南方周遊〈12日目〉 雅安

2018年12月22日、今日は冬至だ。
中国ではこの日、餃子を食べる習慣がある。
SNSでもさっそく冬至を祝う写真や、餃子を食べるぞといった投稿がたくさんあがっている。
日本人はお正月や節分、端午の節句などはまだ身近なものの、中国に比べてこうした節句、伝統に対しての意識はずいぶん薄いなと思う。
「冬至だね」とかわざわざ言うこともない。
「マーヨーズ、今日は冬至だから餃子を食べよう」
ジャオユーさんは言った。
昨日は成都に帰ったら餃子を作ろうと話していたけれど、こうして朝ご飯としてここ雅安で食べてくことになった。

青衣江沿いにはいろいろな飲食店が並ぶ。

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そこにあった抄手のお店に入ると餃子もあるようで、ジャオユーさんは注文すると先におかずを持ってきた。

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また次に出てきたのは黄糖糍粑というもの。
おもちの上には黒蜜がかかり、その上にはきな粉、すりゴマ、落花生などがかかっている。
デザートみたいな感じだけど、餃子が来る前にいただく。
日本人が好きな味だ。

そうしてやってきた本命、餃子。
日本では餃子といえば焼き餃子だけれど、中国では一般に水餃子をいう。
日本の餃子はまた拉麺と同様、まったく別物かなという感覚がある。

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こちらはノーマルの餃子。
中の餡は、肉餡。

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同時に頼んでくれたのは、辛いスープの餃子。
抄手みたいに辛いのもあるんだ。
辛いスープの餃子は出合ったことがないので、もしかしたら四川特有かもしれない。
おいしくて本当は全部食べたかったけれど、
「もう食べなくていい、食べ過ぎはよくない」
とジャオユーさんはお椀をさげてしまった。

雅安を出発して向かうのは、「望魚古鎮」。
望魚古鎮は雅安市街地から35㎞ほどのところにある古鎮である。
私はこの名を知らなかった。
雅安へ到着したときに望魚古鎮を示す標識を見て、気になった。
そうして今日、行ってみることにしたのだった。
ジャオユーさんはこの古鎮を知っていたけれど、行ったことがないよう。
10月にとても雰囲気のある古鎮、海窝子古鎮を見つけたように、一緒に新しい場所、新しい魅力を見つけるのは楽しい。

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一時間ほど、深い水をたたえた一筋の川を左手に見ながら、長閑な山道を走った。
やがて望魚村の標識を見つけ、左折。

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橋を渡った向こうが目的地だった。

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渡ってみると駐車場があった。
目の前には周公河が豊かな水をたたえている。

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周辺には現代の建物がこじんまりとしている。
「まさか、これが望魚古鎮か!?」
ジャオユーさんはいぶかしげに言った。
標識は間違いなくここを指し望魚古鎮と示していた。
古鎮といっても、昔はいろいろあって新しい建物が増えることもあるし、こういうこともあるよな、私はそう思った。
これはこれで来た意味がないとは思わない。
けれどもジャオユーさんは不服そうな様子だ。

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ところが一本道を入ってみると、望魚古鎮を指す標識とその先には長い石階段があった。
「よかった、向こうにあるみたい」

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この階段で一匹の黒い子犬が近寄ってきた。
一緒に付いてきて階段を登っていく。
餌をくれると思っているのかな。

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階段の先には人気のないひっそりとした石畳の道が向こうに続いていた。
建物はみな閉ざされて何年もたったような風貌をしていて、昨日の柳江古鎮のように‟休業“しているわけではなさそうだった。

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ここにはもう人は暮らしてはいないみたいだ。

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それでも歩いていくとようやく人に出会った。
このビニールシートの中では数人の住民がカードゲームに興じている。
中には火を焚いた缶が置かれ、ビニールシートで保温しているよう。

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この古鎮とても小さな古鎮で、石階段を登ってまっすぐのびた小さな石畳の道がメインの通りで、突き当りまで行くと右手に小さな階段が続いていた。
そこを登っていくとその先には数軒、比較的大きな家があり、野菜が植えられ洗濯物が干され、生活のにおいがした。

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こちらの建物は売りに出されている。
「ジャオユーさん、売ってるよ」
彼は古鎮に行くと必ず売り物件をチェックし、時には連絡先に連絡し中を見せてもらったりする。
ここの作りが良くないとか、改修すれば使えるとか、かなり本気な見方をするのでそういう時は彼に付き合って話を聞く。
この大きな建物は彼的にはダメだそう。
大きな割に木材も作りも質がよくなくて、何よりも構造がダメなのだそう。
左に一階二階とバルコニーがあり、右の屋内スペースは単純に真ん中で仕切られた二部屋構造になっている。
「二階にあがるのにいちいち外の階段まで行かなければならない」
それに二部屋ずつなのもよくない。奥の部屋から二階に行くには、まず隣の部屋を通って外に出て階段を登って行かなければならない。
家というのは、リビングがあって寝室があって、こんな単純な構造ではダメなんだ。
しゃべりは止まらない。

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ひっそりと山奥に隠れるようにして残る古鎮。
ここに暮らす人はいるけども、わずか数えるほど。
建物の状態は悪く、今にも崩壊しそうなものも多い。

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黒い子犬は私たちにどこまでもついてくる。
建物の中に覗きにいけば、出てくるまで外で待っている。
気ままに方向を変えれば、同じようについてくる。
犬が先に進めば、ちょっと行っては立ち止まり振り返って待っている。
まるで案内人のよう。
私たちは「狗狗(ゴウゴウ)」と呼んで、笑った。
「ゴウゴウ、そんなに私たちのことが好きなの?」

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ふたたび古鎮のメインの通りまで戻ってきた。

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この望魚古鎮は明末から清初にかけて、茶馬古道―雲南、四川の茶葉とチベットの馬が行き来した交易路―の宿場町として建設されたのが始まり。
こうした礎石はきっと当時のものが今も残るものなのだろう。

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料理名が書かれた黒板は新しい。
中を覗くと今日は営業していないみたいだったが、今も営業が続けられているお店のようだった。
その周辺にはいくつかの民宿の跡があり、それらはすべて廃墟化していた。
ジャオユーさんはためらうことなく中に侵入していき、私も後に続く。
それらはおそらく、後世手を加えられたものなのだろう。
木材も非常に質が悪く、歩くたびに床が抜けそうだった。
構造は単純で、部屋が数部屋。
ベッドや灰皿が、そのままにされている。
「この部屋の構造は問題だ。おそらくこの部屋は入るお客がいなかったはずだ」
ある部分は廊下や部屋がどうしてこういう配置になっているのかわからないようなところもあった。
この古鎮にはいくつかの民宿があるようだったけれど、そのすべてが見るも無残な廃墟になっているようだった。
望魚古鎮を案内する道路標識もあったし、下に車を停めた駐車場も観光客用に用意されたものだった。
古鎮内には、観光事務所の看板が残る廃墟や、観光客向けのゴミ箱もあった。
今はともかく、ここはかつて観光地として見込まれた場所だったようだ。
「観光地として開発しようとして失敗してしまったんだな」
ジャオユーさんは言った。
四川にはたくさんの古鎮があり、規模は大小あれど観光客を呼んでいる。
また近年の旅行ブームで古鎮は人気の旅先のひとつだ。
それでも観光地として安定した場所もあれば、成功できなかった場所もあるのだということを知った。
これは私の推測だけれども、民宿の構造や配置、建物の質を見ても、観光地として開発する際に安易だったのかもしれない。

このメインの通りの上部には、少し登ったところに廃校のようなものがあった。
これだけ小さな集落に学校があることに驚いた。

建物と建物の間を登っていくと、階段の先にまた家があった。
黒犬のゴウゴウはまるで道案内のように一緒に登っていく。
するとその先の家には5匹ほどの子犬がいて、いっせいにこちらに向かって勢いよく吠え出した。
私は犬が怖い人間で、思わず退いた。
ジャオユーさんは平気で、激しく吠える子犬たちに向かって平然と近づいていく。
子犬たちは歯を剥き出しにして吠えながら、ジャオユーさんが一歩進めば一歩後退し、また一歩進めば一歩後退した。
「なんだ、怖いんだね」
子犬たちは結局ぎりぎりに退いて吠え続けているので、私たちは廃校の方へ向かった。
ゴウゴウだけは私たちについてくる。

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校舎前は畑になっていたけれど、おそらく当時はグラウンドだったんだろう。
向こうに見える建物もかつての学校の一部だ。

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教室を一つひとつ覗いてみた。

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ある教室には黒板に文字が残っていた。
簡体字だった。
左右には孔子、毛沢東、周恩来などの言葉が記されている。

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この校舎が使われていたころ、どの家屋にも住人がいたのだろう。
校舎の大きさからして、子供も少なくなかったのだろう。
現在廃墟同然となったこの集落の姿を見て、この校舎の当時が想像できなかった。

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こちらは当時正門だったと思われるもの。

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その正面には神様が祀られていて、正門は隠れて見えない。

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この神様の横にはまた古い家屋があって、ジャオユーさんは階段を登り鍵を開けて入っていく。
私も続くと、もう何年も放置されていたような廃墟だった。
一歩踏み出せば床が抜けるのではないかとひやひやした。
「ここは少なくとも80年には人が生活していたみたいだ」
壁には新聞紙が貼られていて、その日付が80年のものだった。

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家とは、人が暮らす場所、建築。
どれだけ古くとも、どれだけ粗末でも、どんな形をしていても、人が暮らしていればそれは家として生きている。
一方で、いかに外観が建物の形をしていても、以前人が暮らしていたものでも、すでに人が住まっていないのであれば、それは家としてはもう死んでいる。
その命の有無を、私は肌で感じた気がした。
死んでしまった家は、なんとも物悲しいものだ。

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(ジャオユーさん撮影)

「数年後には…」
私が言いかけると、「もうここはないかも知れないな」
ジャオユーさんがあとに続いた。

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石階段を下りて古鎮を離れた。
下には現代の建物が並ぶ。
今になってようやくわかったけれど、どうやら古鎮内に暮らしていた人はほとんど階段下のこちらに移って生活しているみたいだった。
古い建物や景観、生活が残ってほしい、見に行きたい、外部の人はそう言えるけれども、そこに暮らす人には望む生活をする権利がある。

駐車場に向かうと、ゴウゴウはまだついてくる。
けれども車に着いて別れを告げようとして振り向くと、ゴウゴウの姿はもうどこにもなかった。

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望魚古鎮を去って山道を走り、やがてダムを通った。
ドライブの話題はほとんどが四年計画。
どんな民宿を開くかで話は盛り上がる。
「でも私四年も一人じゃいられないよ、お互い別の人ができたらどうするの?」
「四年じゃない、四年後にオープンするから実際は三年後には復縁しよう」
今はしないんだ。
「三年も無理だな~」
「マーヨーズがいいなら、一年のうち何回か会えばいい」
けれどもそんな簡単には会えない。
間に国境があるのだから。

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山道を走り、途中不思議な建築も見た。
「マーヨーズ、急いで撮って!」

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何かのお堂のようで、上に上に単独の屋根が連なっている。

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こうして成都に戻ってきた。
もう間もなく日が暮れるという時だった。
ジャオユーさんの車があまりに汚れていたので洗車に寄り、そして明日の食材を買うために市場に寄り、そうしてマンション付近まで戻ってきたとき、すでに夜だった。
ジャオユーさんの家には、つい先日友達がくれた新鮮な羊肉があり、明日は家に彼の親戚を招いて一緒に食事をすることになっていた。

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今夜の夕ご飯は近くの串串の火鍋をリクエストした。

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串は好きに選んでトレーに乗せて持ってくる。
最後に串を数えて清算だ。
普通の火鍋とは違い、色んな味を少しずつ楽しめるから好き。
私はウズラの卵と椎茸をリクエストした。
また彼が持ってきた湯葉も火鍋に合ってとてもおいしかった。
白酒もどんどん進む。

隣のテーブルに若者のの団体が座り宴会が始まった。
日本とおんなじで、若者は大差ない。
おしゃべりが楽しいし、はしゃぐのも好き。
それに度を越して騒いでいるというのでもなかったから、私は少しも気に留めていなかった。
ところが、
「こういう大声が嫌だ。だから中国人はマナーがない」
ジャオユーさんは顔をしかめて言った。
「日本人はこうじゃないだろう?」
確かに、バスや電車の中では気を付けたりするけど、賑やかな宴会の時には大きな声でしゃべるけどなぁ。

「実はさっき感動したんだ」
何かと思った。
望魚古鎮から成都へ向かうドライブで、ジャオユーさんは上着を脱いだ。
私は上着を預かって、ずっと膝の上で抱えていた。
成都に戻り洗車する時、私は訊いた。
「なんで上着こうやってるか、わかる?」
「マーヨーズが寒いからじゃないのか?」
「違うよ、あなたが寒くなってこれを着る時のために温めてたんだよ」
これに感動したのだという。
ジャオユーさんは真面目な人で、ある面とても単純で純粋で、ある面で融通がきかない頑固な人だ。
なんだかおかしくなってジャオユーさんを見てみると、口をへの字に曲げながらも、楽しそうにしている。
「マーヨーズを慰めるために今回会ったって言ったけど、本当はそうじゃない」
別れてからマーヨーズだけじゃなく、こっちだってつらかったんだ。
ジャオユーさんはそう言ったけれども。
今日は22日。
明日、明後日、そして明々後日の早朝に発つ。
私たちの関係は良好だけれども、復縁したわけではない。
成都を発った後、もう次は会う予定はない。
それを思うと寂しかった。
表面ではハイテンションを装っていて、本当に楽しかったのは事実だけれど、やっぱり寂しかった。

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マンションに戻り、見慣れた夜景。
これももうあと、二晩だけ。

〈記 12月29日 自宅にて〉


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Author:まゆ
中国が大好き。お酒も大好き。
中国へ行く度に、スケールの大きさに圧倒されます。各地を旅行し街歩きし、体感したことを綴っていきます。

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