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2019-07-14

30日間成都滞在〈彭州へ〉前編

2019年6月7日から9日まで、中国では端午の節句による連休で、私たちは二泊三日で山へ遊びに行くことになった。
ジャオユーさんの新疆時代の同僚が現在暮らしている農村へ。
彼女のいとこの男の子が現在成都の学校に進学しており彼女も成都市区に来ていたため、成都からは私たち二人と、元同僚リーリー、それからいとこの男の子と四人で出発することになった。
しかしこれらは後からわかっていったことで、この時会うまで、誰とどこに行くのかまったくわかっていなかった。

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リーリーは私よりわずか年下の元気な女性だった。
リーリーもいとこもとても気さくで、道中日本の話題などずっと話しかけてくれた。
私が何か言えば大爆笑してくれ、車内の雰囲気はこれ以上ないくらいに明るい。

彭州に入り、昨年10月に訪れた記憶のある葛仙山を目の前にしたところで、車は左折した。

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長閑な農村風景が続き、気持ちが開放されるようだった。
四川の農村や山の風景は、どこか日本のそれに似ている。

車を走らせやがて小さな街に出た。
ここが物を買える最後のスポットのようで、市場に立ち寄り必要品を買っていく。
中国のこうした市場では、野菜、肉、卵、魚、調味料、あらゆるものが手に入る。

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私は中国の野菜売り場が好き。
ついつい手に取ってあれもこれもと買ってしまいたくなる。日本のスーパーでは見かけない野菜も。

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市場にはこうした籠を背負った人が多かった。これだけ大きな籠ならば、どれだけ買っても大丈夫。

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買ったのは、大量の野菜にこのまな板。
こうした丸太を輪切りにしたまんまのまな板は、中国ならでは。

買い物を済ませリーリーたちを待っていると、
「今日の服、‟不好看“(かわいくない)、好みじゃないから着替えて」
ジャオユーさんは私に言った。そんなこと、言う人だった?
私は悲しくなったけれど、持ってきていた寝巻用のユニクロのワンピースに着替えると、「それならいい」
ちょっと不穏な空気が流れた瞬間だったけど、リーリーがやってきて、
「食べる?」と市場で買ったポンカンを差し出した瞬間、何事もなかったかのような雰囲気に戻った。

こうしてこの街でお昼ご飯を食べることに。
「ここは私がごちそうするよ!」とリーリー。

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並べられた野草や肉類を選び、調理を頼む。
料理が出てくる前に食べたのは、冰粉。リーリーたちが買ってきてくれた。

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冰粉は、日本で言うとあんみつのような雰囲気。
でも寒天のようには弾力性はなく、ほろほろと崩れるゼリーのような感じ。
クコの実や黒蜜がかけられて控え目な甘さがあり、四川では夏になるといたるところで売られているのを見かける。さわやかな夏の味覚である。
私はすでに何度か口にしたことがあったけれど、それがどうやって作られるのか知らなかった。
いとこの男の子が私に製造過程の動画を見せてくれた。
この寒天の材料は、假酸浆の種子を含んだ果肉部分。
假酸浆はなんだか新疆のイチジク(日本のものより小さく、臙脂色が少ない)に似ていて、中の柔らかな部分を取り出し水に漬けて放置したのち、それを布で濾し石灰水で固めて作る。
イチジクみたいだね、と言うと、違うという。
假酸浆ってなんだろうと思い調べてみると、オオセンナリという植物だった。四川や貴州、雲南、チベットに多く生息する植物だということで、冰粉が四川の夏の味覚であるのに納得。
このオオセンナリ、漢方でもあり、身体の熱をとったり痰に効果があるのだそう。
作り方を知り食べてみるとおいしさもまた違う。
リーリーたちが買ってきてくれたものには、中に氷の塊が沈んでいて、冷たくてとても美味しかった。

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ようやく出てきた料理。
私は四川郊外、古鎮や山の中の食堂で出合えるこうした野草料理が大好き。
これが本当においしいのだ。
日本では口にできない‟中華”は山ほどある。
しかし私にとってはこの四川山間の野草料理こそ、口にできないのが惜しいと思わせる。
名前もわからないような野草が並べられ、選ぶのも迷ってしまう。
こうした食堂にメニューはないも同然。
食材を選び、調理方法を店主と相談しながら作ってもらう。
たとえばニンニクなどで炒めた野草炒めはいくらでも食べられそう。
他の肉料理は減らず、四人みな野草炒めに箸をのばすので、あっという間になくなってしまった。

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ここから山道を走り、目的の村に到着した。
山道を登っていくと古びて朽ち果てたような小さな小さな寺院があり、そこをカーブして登っていくとすぐだった。

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リーリーの家は簡素な木造だった。
車を停め、ジャオユーさんは持ってきていた羊肉を取り出し料理の準備に。

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私たちは家の裏を散策し、あちらこちらに実っている野イチゴを収穫した。

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私はこのあと、一人で周辺の散策へ。
リーリーの家の下には数軒の農家が点在していた。
覗いてみると、家畜の鶏を見つけたり、くつろいでおしゃべりに花を咲かせている親父さんたち。

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このように宿泊できる建物も。

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再びリーリーの家に戻る途中、裏に回ってみるといろとりどりのお花畑を見つけた。農村風景の中で、こうした色彩はとくべつ際立って見えた。

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戻ってみると、いとこの男の子がおでこに「王」の字を書いてくれた。
見ると皆おでこにはすでに王の字が。
今日は端午の節句。これはこちらの風習なのだそう。
「王にどういう意味があるの?」と訊くと、「虎」と返ってきたがどういう意味だっただろう。
虎の模様?動物の王様のように強くあれということ?

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このあと、この朱は建物の周囲に撒かれ、そのあと水に溶かしたものも撒いた。魔除けみたいなものかな。
それから端午の節句の定番、チマキをみんなで食べた。

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こちらはヨモギと菖蒲の葉。これを掛ける。ジャオユーさんも出発前にマンションの玄関に掛けてきた。

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残ったヨモギと菖蒲の葉は、大鍋で煮詰める。
夜はこれで身体を清めるのだという。日本でもお風呂に菖蒲の葉を浮かせるけれど、浮かせるより煮詰めた方が、確かに魔除けの効果も倍増しそう。
長時間煮詰めた煮汁は、濃い茶色にできあがった。

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やがてリーリーの友達家族が二家族やってきた。小さな子供が二人いて、持ってきていた日本のお菓子をあげると喜んではしゃぎまわった。

リーリーのいとこは経絡を勉強しているのだそう。
ジャオユーさんが治療を受けているので訳を訊くと、ここで初めて彼が通風にかかったのだということがわかった。
ジャオユーさんは5月4日から禁酒を始め、少なくとも一年は一滴もお酒を飲まないのだという。
肉を敬遠している彼だったが、貝類不可、夜は米類も摂らないなどもともと食事の好みが自由でなかったが、ここでさらに不自由になった。
今までは好んで食べていたエビも魚も今後は控えるのだというし、通風に悪いものは一切摂らないのだという。ではもう、野菜しか食べれないのではと思う。
私はいままで彼が通風にかかったことも知らなかった。

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羊を煮込み続け、先に烤羊肉串に取り掛かることになった。
烤羊肉串はジャオユーさんの得意分野で、彼はウイグル族のなまりを真似て呼びかけた。
「新疆アリババ烤羊肉串~!」
ウイグル族が中国語を話すときのなまりは独特で、ウイグル語特有のイントネーションと舌の動きはなかなか抜けない。
ウイグル語のように聞こえる中国語とジャオユーさんの演技にみんな大爆笑。

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全部で12人いるので、12本ずつ羊を焼き、楽しんだ。
羊の串が終わり、やがて羊の煮込みへ。
ほろほろと剥がれ落ちる羊に身体温まるスープを楽しんでいると、日はだんだんと暮れ、やがて真っ暗になった。

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誰もお酒を飲まない場を少しつらく思っていると、ジャオユーさんが持ってきていた白酒を飲んでいいよと、茶杯を持ってきてくれた。
たった一杯の白酒、大事に大事に飲む。

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すでに二家族は部屋に戻っていた。
残ったのはジャオユーさんにいとこの男の子に、もう一人の男性。
三人竹椅子を向かい合わせておしゃべりに盛り上がり、隣の竹椅子に座る私は会話にも入れずまた入ろうにも入る隙間もない。
一時間、二時間、さらに三時間…。
眠くなり、真っ暗な中することもなくなり、白酒も一杯だけの約束だったのでとうになくなり、私は石像のようになった。
ジャオユーさん、私のこと忘れてる?
私たちはみなさんとは違いここではなく下の農家民宿に泊まるようで、一人で部屋に戻るということもできなかった。
もうすぐ日付が変わるという頃、「一人で退屈だろう」そう優しい声をかけてくれたのはいとこの男の子だった。
私は眠気と戦いつかれた目でジャオユーさんを見上げると、
「なんだ、機嫌が悪いのか?」彼は言った。
違う、違うのにどうしていつも彼の第一声はこうなってしまうんだろう。

お開きになりジャオユーさんと二人宿泊する建物に向かう時、リーリーはヨモギと菖蒲を煮詰めた汁をペットボトルで渡してくれた。「シャワー浴びる時に必ず使ってね、二人で」
真っ暗で足元も見えない草の中を下っていく。
山の奥、当然街灯なんてないから灯りがなければ一歩も踏み出せない。
簡易ライトを持ったジャオユーさんは、自分だけ一人ですたすたと行ってしまう。
私はお泊り用に荷物を持っていたが、そんなのもお構いなし。
こんな真っ暗な中でどうしようもなく、私はあわててスマホを取り出しスマホのライトで追いかけた。
宿泊場所を知らないから迷子になってしまったら大変だ。
ここ一二か月感じ続けた違和感が、徐々に確信に変わっていく。
もう、以前のジャオユーさんじゃない。

農家民宿に着き部屋に入ると、彼は先ほどリーリーからもらったペットボトルの汁をたらいに流し、足を浸けた。
え、これって二人で使ってって、リーリーがくれたのに。
端午の節句を体験してねって。
彼は自分が使い終わるとトイレにそれをすべて流した。
「ねぇ、これって二人で使ってってリーリーがくれたものなのに自分だけなの?」
そう言うと、彼は激怒して言った。
「知らない!使ってって言われたから使っただけだ、何が悪い!」
その後、彼はスマホの動画ばかり見て一言も発しなくなった。
泣きたくなった。
でも、ダメだ。ここで言い返したり落ち込んだりすれば、そこで私たちは100%終わってしまう。
昨年10月末に別れてから12月の再会でふたたび距離は縮まった。
けれども、もし一度でもまた不穏なことが起きれば、それが完全な別れになってしまうことはわかっていた。
離れたくなくて離れたくなくて、10月のたくさんのことを後悔した。もうその苦しさから離れたい。
私はジャオユーさんのベッドに飛び乗り彼に向かって、
「笑おうよ!」と笑いかけた。
「笑いたくないならこうするよ」
そう言って、彼の顔をいじり身体をくすぐった。
ジャオユーさんは降参したように、いつもの彼に戻った。
狭いベッドで動物の親子のように背中に抱き着いて眠った。
最初はジャオユーさんが、次は私が、というように交代に抱き着きながら。
最後はどちらが背中の番だっただろう。
きっと、大丈夫。
安心して眠ったのに。

〈記 6月16日 成都にて〉

⇒ 30日間成都滞在〈彭州へ〉後編 へ続く


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まゆ

Author:まゆ
中国四川省宜賓市にて生活を始めました。
旅行記に絞ったブログ、一つひとつは旅のあしあとです。

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