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2019-07-14

30日間成都滞在〈彭州へ〉後編

翌日目が覚めて、私たちは農家民宿の老夫婦が振舞ってくれた朝ご飯を食べた。

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美味しかったのは、ジャガイモ炒め。シソに見えた赤い葉は予想外に旨味がした。
おじいさんは私に白酒を一杯そそいでくれて、朝から気持ちは明るくなった。

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リーリーの家に向かうと、彼女たちは彼女たちで朝ご飯を用意していた。
昨日の羊スープの残りを利用した麺で、すでにおなかいっぱいだったのにも関わらずいくらでも食べれそうなおいしさ。

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友達家族は彼らで山に遊びに行き、私たち四人は四人で山にドライブに行くことになった。
先にまた昨日の街まで行き、買ったのはドリアン。

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「日本人の多くはこれが嫌いだけど中国人は好きみたいだね」
中国のピザハットではドリアンピザなんてのも見かける。
私がそう言うと、「中国でも大多数の人が受け入れないよ」
車の中はすでに不穏なにおいが充満している。

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ジャオユーさんは車を走らせ、私たちは長い時間山のドライブを楽しんだ。
やがてあるところで車を降り、私たちは山の中を散策しに進んでみた。

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道端に花を見つけ、虫を見つけ、蜘蛛の巣にはまり。
日本では耳にしない激しい鳥のさえずりに想像を巡らせて。
私のことが眼中にないジャオユーさんに、
「気遣ってあげなよ」と優しい言葉をかけてくれるリーリー。

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再び車に向かい戻る時、ジャオユーさんは刀のように長くて巨大なナイフを振り回し、辺り周辺の雑草を切り倒し始めた。
「ジャオユーさん、怒りだしたの?」
気が狂ったようにナイフを振り回す彼に、最初は怒りを発散させているのかと思った。
「365日のうち、300日は怒っているみたいなんだよ、彼」
私がそう言うと、ジャオユーさんは「その通りだ!」とさらにナイフに勢いをつけた。

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山でのドライブを終えてリーリーの家に向かう時、途中で改修中の小さな小さな学校に立ち寄った。学校というよりは家のような小ささだった。
この工事が終わったら、リーリーはここで先生をやるのだという。
私たちは改修工事の様子を見学し、ここでもまた長い時間を過ごした。
ジャオユーさんは現在リーリーと共同してここで民宿を開く計画を現実的に進めているのだそう。
その下見である。
けれどもここで、だんだんつらくなってきてしまった。
ジャオユーさん、やっぱり私が見えていないみたい?
今日一日、まるで私が見えていないみたいに私に構うことがなかった。
車の中でも、山の中でも、並んでおしゃべりするのはリーリーといとこの男の子だけ。
私も輪に入ろうと話しかけても、めんどくさそうに「うん」ぐらいしか返ってこない。
私、無視されてる?
幸いなことにリーリーといとこの子が反応してくれたり話しかけてくれたりしたからよかったものの、そうでなければ仲間外れなのかと思うところだった。
リーリーが眠れば、車の中は静まり返った。
私が話しかけても、ろくな返事は返ってこない。
「リーリー、こっちにこれがある」
「リーリー、気を付けて」
そんなふうに二人がずっと話に夢中なのを見て、ふと悲しくなってきてしまった。
私は諦めて、一人で離れて山から見下ろし景色を眺めていた。
すると学校の二階から、「あれが、彼の彼女だよ」そう作業員に紹介しながらリーリーが私を呼んだ。
私はうれしくなって手を振り返し、梯子を登り二階へ上った。
けれども下りる時。
最初に下りたのは、ジャオユーさん。次に下りたのは私。
梯子を下りて少しの時間、二人だけになった。
そこにあったのは、私に向けるなんとも冷めたような彼の表情だった。
なに、これ。なんでこんな表情するの?
あとからリーリーたちが下りてくると、彼の表情はまるで別人のように変わり笑顔になった。
僅か1、2分のことだった。

リーリーの家に戻り、四人で竹椅子に座った。
ジャオユーさんが席を外すと、リーリーは「急に元気がなくなってどうしたの?」と話しかけてくれた。
今日一日つもっていた気持ちが、もしかしたら去年の10月末以降つもっていた気持ちが溢れ出してきたみたいに、涙が溢れてきた。
リーリーは自分の部屋に私を連れて行き、二人きりになった。
「なんでも、話して」
そういう彼女はとても優しくて真剣だった。
彼女は不思議な歌を歌い、楽器を弾いた。
「言いたいことはなんでも全部、ここで言えばいい」
私は、ジャオユーさんとは一度別れ今は完全な恋人関係ではないこと、時々ジャオユーさんが怖く、嫌われないように顔色を窺ってしまうこと、本当は好かれてはいないだろうけど彼の優しさや同情心で今があるだろうこと、今日一日無視されているようで悲しかったこと、彼とリーリーが楽しく話す姿を見て出会ったばかりのことを思い出したこと、そんなことを話した。
「なぜ彼があなたのことを愛していないと思うの?」
彼が私たちを誘った時、マーヨーズを連れてくると言った時、あんなに嬉しそうだったんだよ。
好きじゃなかったら、どうしてあんなふうに二人で将来日中融合の民宿を開くなんて話をするの?
リーリーは言った。
涙が止まらなくて、まるで壊れたみたいに泣いてしまった。
彼女は何か信仰を持っているようで、部屋の様子はそれを思わせた。
「神様がかならず支えてくれるから」
そんなことを何度も言っていたように思う。
彼女は私に瞑想の仕方を教えてくれ、そして私の背中をさすりながら、不思議な声を奏でた。
涙に限りはないのかと思う程流れても流れても止まらず、ふと目を開けると、窓の外からジャオユーさんがこちらを無表情で見ているのに気づいた。
「彼ではなく自分が楽しいこと、自分の幸せを大事にして。彼の機嫌がいいとか悪いとか、あなたには関係のない話」
男と女は違う。男の人はときに気持ちが変わるのが早いから、男の人に幸せを委ねてはダメ。自分が幸せになることを大事にしなければダメ。
一番大事なのは自分らしくあること、自分に戻って、そうすれば“聖なる母”は必ず見てくれている。
リーリーは最後にそう言った。

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私たちは戻り、帰ってきた他の家族とともに夕食の準備に取り掛かった。
野菜を切っている私のもとに、リーリーがやってきた。
「今、彼が私に言ったよ。マーヨーズへの気持ちは本物だって、美しい思い出がたくさんあるんだって。だから、安心して」
嬉しかったけれど、先ほど無表情で部屋を覗き込む彼を思い出すと、どこかまだ心は晴れなかった。

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リーリーの家は昔ながらの台所。
鍋は固定されたもので、洗う時とても難しい。
薪を割り、それを窯に放り込んでいく。

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こうしてできあがった夕ご飯。
でもどこか、居心地が悪い。
隣に座るジャオユーさんの急な優しさが、なんだか気持ち悪い。
それは不自然な優しさだったから。

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真っ暗な山中の夜に、明かりはわずかな家のものだけ。
空はどうやら依然曇っているようで、星一つ、ない。
ジャオユーさんと二人、農家民宿に戻り、私がもう一つのベッドに座ると、
「なんだ、そっちで寝るのか。勝手にしろ」
その後ジャオユーさんは私の方を見ようともしなくなった。
外に出て、こっそり持ってきていた白酒を飲んだ。
この一カ月滞在のために二か月休みなしでアルバイトした、あの時の意欲と喜び。思い出すと虚しくて情けなくて、すべて投げ出してしまいたいような無力感に襲われた。


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翌日、リーリーはそのままここに残り、ジャオユーさんといとこの男の子と三人で成都に戻ることになった。
別れ際、リーリーと抱き合い、私は身体が枯れるかと思うほど泣いた。
なんだか自分の身体がおかしかった。
私はこの年齢のくせにもともと異常な涙腺の弱さだけれど、それにしてもおかしかった。

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このあと6時間ほどかけ、都江堰方面を経由して成都市区へ戻ったが、それについて書きたくない。
ジャオユーさんは明らかに私を嫌がっており、助手席の私を完全に無視していた。
「今からどこに行きたい?‟君”を連れて一緒に行ってもいいよ」
「おなか空いた?」「何食べたい?」
「ここの景色ははきれいだから見てごらん」
はっきりと示すようにいとこの男の子とだけ話しをした。まるで私の存在がないかのように。
男の子が、「彼女にも聞いてよ」と言うと、
「おなか空いたのか?」吐き捨てるようにいい、「空いていない」というと返事をせずまた男の子とハイテンションで話し始めた。
ジャオユーさんの話題は、前の奥さんがきれいでよかった話、昔の彼女の話、もてた話、女性の好み、若い女性の方がいいこと、そんなのをずっと聞いているのは気がめいった。何時間も、何時間も。
男の子はそれに合わせるだけなので、ずっとこんな話題。
男の子を都江堰で下ろし、二人成都市区へ向かった。
ジャオユーさんは音楽をかけその音量を上げ、私たちは会話することもなかった。

マンションに戻り、彼は私を避けて椅子に座った。
長い沈黙のあと、「普通の友達だからな、好朋友(仲良し友達)ですらない、普通の友達だからな、マーヨーズは」
友達だから、昨日一昨日の宿泊代として100元もらう。
彼は突然言った。
「え、一度は別れたけど、12月からはまた彼女みたいじゃなかったの?」
そう言うと、「彼女なわけないだろう!ただの普通の友達だ!」
実を言うと、一カ月前まではまだ可能性があった。まだ考えていた。
でもやっぱり友達するって決めたんだよ。
今回、こっちに来られて迷惑だった。好朋友ならともかく普通の友達なのに来られたら迷惑だろう。
彼がそう声を上げ始めたので、
「だって、会いに行ってもいい?って訊いたら‟好呀”って言ったじゃない」
そう言うと、「断りようがないだろう、それにお金はあるのかってきいたよな?彼女だったらそんな風に訊くか?自分でホテルに住むお金があるならいいって意味だったんだよ!」
言っておくけど、一度も「同意」した覚えはない。嫌だったんだから。
それでも二人で遠くに旅行行こうと思って休み申請しようとしたんだ。
でも出発前に訊いてみるとマーヨーズ、自分勝手にすでに自分の甘粛旅行決めていた。
だからそれもなくなったんだ。これじゃどうしようもない。
普通の友達のために時間潰されて、迷惑しかない。
彼はどんどん気持ちを高ぶらせて声を荒げていった。
「12月の再会以降、ずっと恋人みたいだったよね、5月までは。恋人じゃないとないような言動いっぱいあったよね?今回も来てから最初はずっと、恋人扱いだったよね、あれはなんだったの?」
「あれは、慰めてたんだよ。恋人みたいにしないとマーヨーズが悲しむだろう?」
「慰めてたの?」
「そうだ、マーヨーズの為に恋人のふりしてあげただけだ」
友達だって決めたあとも、マーヨーズは気づかない。
だから今回もともと、山から下りてきたらはっきり教えようと思っていたんだ。
そうしたら教える前にリーリーの前で泣いた。
リーリーは元同僚で、好朋友じゃない。要は、そういう人の前でマーヨーズは俺の面子をつぶしたんだよ。
永遠に一緒になることはない、永遠に結婚することはない、今わかったか?
「みんなに彼女として紹介してきたのはなんだったの?」
そう訊くと、「あれは表面上そう言っていただけだ、真実じゃない」
三年後おたがい独身だったら結婚してもいい、というのは今も生きている。
でも今日、「こういう山での生活はどうか?」って訊いたら「生活は街がいい」って言ったよな?民宿は必ず山の中だ、だからマーヨーズは受け入れられないだろう。だから結婚はありえない。
彼は噴火したみたいにまくしたてた。
山で生活できないと私が言ったら、あの時は「なら山と街を行き来する生活をしよう」と言ってくれた、あれもまたリーリーの手前だったのだろう。
私は、めまいがした。
再会以降、この数カ月それなりにうまくいっていると思っていた。
「2月に、結婚しても彼女つくると言ったら泣いたよな?そして今回も泣いた。二回続いたんだ、もうダメだ」
泣いた心の弱さはともかくとして、その原因自体は私に反論の余地はないだろうか。
もうどうしようもないな、と思い知らされていく。
「いいか、マーヨーズは好朋友でもないただの友達なのに、それなのに数日部屋に泊め車に乗せて山まで連れて行ったんだ。あとは放置して無視しても、もう十分友達に対しては尽くしたといえるだろう」
それを聞いて、三日間私とほとんど口をきかなかったのが彼の意思だったことがわかった。
「四川で私が仕事を見つけること、ずっとずっと応援してくれてたよね、あれは嘘じゃないよね?」
「迷惑だよ、四川に来られたら。だって友達なんだから」
どんどん沈んでいく。
実は、現在も四川省で仕事を決めるべく就職活動中だった。
最近二つの就職先を検討する際、彼は「成都に近いことが重要だ、でもまず先にこっちに来ることが大事だから、それを優先しよう」と言ってくれていたのに。
「なら仕事が決まっても会いに来てはくれないの?」
「好朋友ならともかくただの友達のために特別会いに行きたいなんて思わないよ」
訊けば訊くほど、聞けば聞くほど、次々と厳しい言葉が私の胸を刺していく。
「楽しみにしていた一カ月、こんなふうになるとは思っていなかった」
私がそう言うと。
「‟思っていなかった”ではない、もともと初めからこうだったんだ」
上から見下ろすように、鼻で笑いながら彼は言った。
彼は笑っていた。
「この一カ月きっと楽しいものになる。うちにはたくさんお酒があるから日本ではあまり飲むなよ」
出発前夜に彼がくれた音声メッセージ。
もう、私が知っているジャオユーさんじゃない。

〈記 6月16日 成都にて〉

⇒ 30日間成都滞在〈散歩の日々〉 へ続く


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プロフィール

まゆ

Author:まゆ
中国四川省宜賓市にて生活を始めました。
旅行記に絞ったブログ、一つひとつは旅のあしあとです。

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